勝利投手の権利まであとアウト1つで降板…直後に手術を受けた理由は?

 昨年10月に腰のヘルニア手術を受け、復活を目指している巨人の高卒3年目、直江大輔投手。現在はファームで順調に調整を重ね、1軍復帰を視界に捉えている。昨年8月にプロ初登板すると、9月21日の広島戦(東京ドーム)ではあとアウト1つで初勝利というところで、2失点で降板。その直後に手術へ踏み切った。決断の背景と描く未来に迫った。【楢崎豊】

 表情が明るいのは降り注ぐ光のせいだけではない。直江大輔投手は巨人3軍-関西独立リーグ選抜戦(ジャイアンツ球場)に登板し、4回3安打無失点、17日にはルートインBCリーグ交流戦・茨城との試合に先発し、5回1失点の好投を見せるなど、着実に1軍のマウンドが見えてきた。

 もう腰の痛みに悩まされなくてもいい――。

 直江は10月のヘルニア手術後、リハビリを重ね、3月24日に実戦復帰。武蔵大相手に2回2失点も自責は0。「(内容は)良くなかったですが、手術を受けて半年ぶりのピッチングだったので、投げられたことが素直に嬉しかったですし、周りの人への感謝の気持ちがいっぱいでした」と振り返った。

 最速148キロの力のある直球、制球もいい。そのポテンシャルの高さに将来を嘱望された昨年のデビューだった。しかし、裏では痛みと戦っていた。

「月に1回くらいのペースで注射を打っていました。なので、やれる範囲でやっていたという感じです。腰を痛めたのはプロに入ってからで、いきなり痛みがきました」

 投げられる範囲の全力。それでも力の片鱗は見せた。だが、プロはそうは甘くない。球団は早い決断を下し、2021年シーズン中に万全になるように昨季の最終登板から時間をかけずに手術に踏み切った。

 今季1軍未登板ながら、周囲から“新人王候補”という声も聞こえる。だが、本人は苦悩と戦いながらのリハビリだった。

「手術をした直後はここまで投げられる姿が鮮明に見えてこなかったんです」

 例えば、風邪をひいて、数日間、動かなかっただけでも体がすごく変わってしまうように感じた。下に落ちているものを、腰を曲げて取ることができなかった。どんな時も膝を曲げて、腰を下し、ものを拾った。パンツやズボンもスムーズに履くことができない。風呂に入る姿勢も制限された。

「いろいろ細かいんですけど、気をつかって動かなくてはいけなかったりするのは大変でした。それでもリハビリを頑張れたのは、周りの方のサポートがあったからだと思っています」

巨人の未来を担える男の本心「昨年以上のものを出せる」

 今春の宮崎キャンプはリハビリ期間となった。球団のトレーナーから体の使い方を学んだ。

「腰への負担がかかっていたところについて振り返る時間になりましたし、今もそういうこと(復習と反省)ができています。昨年より、体が良くなっている気がします。リハビリは昨年よりも成長というか、良くなった状態で登板できることを目指していました」

 昨年の最速は148キロだったが、すでに最初の復帰登板で147キロまで計測。まだまだ球のスピードが乗ってきそうな手応えもある。

 インタビューの最後の言葉を聞いて、安心した。20歳ながら強い志を持っている直江ならば、巨人の未来を担える男になれるのではないだろうか。

「いろいろと考え方があるんと思うのですが、僕は自分に起きたことは、良いことでも、悪いことでも、全て前向きにとらえています。マイナスの部分もあるんですけど、これはプラスに捉えるべき点はどこにあるのだろう、と。今回もそういう風にやっています」

 見方を変えれば、ピンチはチャンス。下り坂も振り返れば、上り坂にも見える。プロ初勝利目前、4回2/3で降板した広島戦の一戦も悔しかったが、プラスに変えている自分がいる。

「昨年は1軍で投げさせていただきました。あの(広島との)試合もそうですが、勝てる試合があったのに、そこで勝てなかったというのは、何かが足りない。じゃあ、そこで先発投手として勝つためには何が必要なのか、考えています。腰だって痛みを持ちながら、あそこまで投げられたのだから、万全になったら、昨年以上のものが出せるんじゃないかという気持ちです」

 背番号の054が示す通り、現在は育成契約選手。支配下登録は時間の問題だろう。東京ドームの光に照らされて、初勝利の笑顔を見せることが、直江にとっての「復活」となる。

○直江大輔(なおえ・だいすけ)2000年6月20日生まれ。20歳。中学では長野・中野シニアに所属。松商学園(長野)では1年秋からベンチ入りし、2年夏には甲子園出場。2018年ドラフト3位で巨人に入団。昨シーズンは3登板して0勝0敗、防御率3.00。184センチ、82キロ。右投右打。好きな投手は「父と同世代ですごい方と聞いていた」という桑田真澄(巨人投手チーフコーチ補佐)。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)