熾烈な本塁打王争いも「次の打席で2ボールになったら歩かせてくるだろうね」

 エンゼルスの大谷翔平投手は25日(日本時間26日)、本拠地のマリナーズ戦に「2番・指名打者」で先発出場し、先制の右翼線適時三塁打を含む3打数2安打3打点の大暴れを見せた。2四球も選び、4試合13四球は史上4人目のメジャー最多タイ記録。歴史的な四球攻めにあっているが、その一方で大谷からは精神的な余裕を感じさせる。仲良しバットボーイや同僚の証言から紐解いた。【小谷真弥】

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 張り詰めた空気はない。どこか和やかな雰囲気が伝わってきた。11-1で迎えた5回無死一塁。大谷は左腕シェフィールドからストレートで四球を選ぶと、駆け寄ってきたバットボーイの頭を茶目っ気たっぷりに叩いた。そして優しい笑顔。大谷からは全くフラストレーションなど全く感じさせない。NPB時代からお馴染みのクソガキぶりだった。

 大谷を笑顔に変えたのはバットボーイを務めるスティーブ・パルドさん。地元アナハイム出身の21歳学生で2019年からクラブハウスで働いている。「ショウヘイも僕もアニメが好きだから小さな話題でも仲良くなれる。彼の周りにいるのが好きなんだ」という仲の良さで、大谷が本塁打を放った後には「相棒」と言われたイグレシアス(現レッドソックス)よりも早くハイタッチする場面もあった。1試合4四球となった24日(同25日)の試合では、こんなやり取りがあったという。

 2点を追う7回無死一塁、大谷は四球で歩かされた。その後、パルドさんへ「次の打席で2ボールになったら歩かせてくるだろうね」と告げたという。予言は的中する。1点を追う9回1死。走者なしにも関わらず、2ボールとなったところで申告敬遠となった。

申告敬遠は予言の通り!? バットボーイに「ほら、言ったでしょ?」

「ショウヘイは僕のところに来て『ほら、言ったでしょ?』と。だから僕たちは笑い出してしまったんだ」。この四球で3戦11四球のリーグ新記録。本塁打王争いをする中での四球攻めはフラストレーションが溜まってもおかしくないが、いまの大谷には敵軍の戦略を予想、俯瞰する精神的な余裕もある。タイトル争いへタフなゲームが続く中で、この余裕は決して無駄にならないはずだ。

 投打の二刀流をこなすだけの能力はもちろんだが、大谷には水原通訳が「鬼のメンタル」と例える精神力の強さがある。新人マーシュも大谷について「調子が良くなくても落ち着いている。メンタルでも多くの選手たちを凌駕している」と語っていた。この日の押し出し四球を含む2四球はボール球を確実に見逃していた。マドン監督は「非常に素晴らしかった。ショウヘイが(ボール球に手を出さず)四球を受け入れていることが、私は良いことだと思う」と称えた。

 本塁打王争いでは、両リーグトップ46本のブルージェイズ・ゲレーロJr.、ロイヤルズ・ペレスと1本差のままだ。今季98打点で日本人選手では2007年松井秀喜(ヤンキース)以来14年ぶりの大台到達は目前。2008年イチロー(マリナーズ)以来の100得点もあと「1」だ。

「アメージングな人だね。とても謙虚で話好き。ベリークールな人だよ。素晴らしいプレーヤーで、彼のような選手はおそらく生涯見られないと思う」とパルドさんは期待を込めた。まずは26日(同27日、試合開始5時7分)。両リーグでは1918年ベーブ・ルース以来103年ぶりの偉業達成を期待したい。(小谷真弥 / Masaya Kotani)