就任初年度のリーグV、2016年には日本一 栄光の前半5年間

 日本ハムは16日、栗山英樹監督の今季限りでの退任を発表した。連続での在任10年は“親分”と呼ばれた大沢啓二氏を抜いての球団史上最長、また通算678勝(16日現在)も、大沢氏を超え球団史上最多だ。コーチ経験もないところから、就任初年度の2012年にパ・リーグ優勝を果たし、2016年には10年ぶりの日本一にも輝いた。名将という評価を得るだけの成績を残してきた。

 ただ、日本一の翌年からは5位、3位、5位、5位。今季もすでにクライマックスシリーズ(CS)進出の可能性が消え、目標を失った戦いが続いている。監督生活の晩年は、さまざまな疑問の声が聞こえたことも。この10年間に見せた「功と罪」を振り返っていきたい。

 栗山監督は1990年を限りに現役を引退してから、テレビを始めとしたメディアに活動の場を移していた。コーチ経験もない中で、いきなりの監督就任には不安や疑問の声が上がった。その中で就任初年度の2012年は、エースとして活躍してきたダルビッシュ有投手(現パドレス)の大リーグ移籍1年目。新たな軸が必要だった。開幕投手には、今季限りで引退する斎藤佑樹投手を起用。さらにエースを張ったのは、制球が不安視されていた吉川光夫投手(現西武)だった。

 過去3年間未勝利だった吉川はこの年14勝5敗、防御率1.71でパ・リーグMVPに選ばれる活躍。栗山監督は「今季ダメだったら、俺がユニホームを脱がせる」と言って吉川に背水の陣を迫っていた。また打線の中心に据えた中田翔外野手には「俺が監督をやっている限り4番を打たせる」と公言し続け、中田もその期待に応えた。打率こそ.239ながら24本塁打、77打点と主砲へ脱皮するきっかけをつかみ、のちに打点王を3度獲得した。開幕投手には毎年“手紙”を書き、愛読書を与えたことも。期待を言葉に乗せ、発奮を促した。

 また、2013年に入団してきた大谷翔平投手(現エンゼルス)の“投打二刀流”でのプレーを後押しし、実際に起用するための方法論を確立したのも特筆すべきだろう。大谷の入団時、球団は野手としての成功のほうがより早いと想定していた。実際に1年目の開幕戦には右翼手で先発出場。体ができるまで投手デビューを待った。

 日本ハム時代の大谷は、登板試合の前後に全く試合に出場させない休養日を設けプレーさせていた。「選手のためにチームが犠牲になっているのでは」との外野の声にも、頑なに守り続けた。翌年からはそれでも負担が大きいと判断し、指名打者としての起用になった。大谷を二刀流で起用するための約束事は、後に移籍したエンゼルスにも伝えられた。

後半5年間の苦闘はなぜ? 不可解なこだわりや育成方針のブレ

 物事には功と罪の両面がある。上手く行っている時期には“功”と見られたことも、一度歯車が狂うと“罪”と扱われるようになる。

 栗山采配は、当初は柔軟性に富んでいた印象が強い。たとえば2012年の開幕当初、主力だった稲葉篤紀外野手を2番に置いた。強打者を、より打席の回る2番に置くという現在の流れに近い起用をしていた。ただ上手くいかないとなると数試合でこれを撤回、元のクリーンアップに戻した。新しいことと、現実の折り合いをつけようとしていた。

 ところが、監督生活の後半になると、硬直化したようにも見える。例えば2019年に導入した、先発投手を短いイニングで降板させる「オープナー」だ。起用された投手から戸惑いの声が上がり、数字から勝利に結びついていないことが明らかになってからも、この作戦にこだわり続けた。

 また2018年に入団してきた清宮幸太郎内野手は3年目の昨季、打率.190、7本塁打という成績ながら1年間、一度も2軍に落とさず使い続けた。一方で今季は、1軍の打線が手薄な状況にも関わらず一度も昇格がなかった。今季の2軍成績は打率.199、19本塁打。同期の村上宗隆内野手(ヤクルト)とは大きな差がついた。育成方針のブレとみられても仕方がないだろう。

 そして、変わらないことの“弊害”とも言える部分が見え隠れするようになった。4番に据え続けた中田は、数字の浮き沈みがありながらも主砲として君臨。存在が大きくなりすぎたのか、今年8月には同僚選手への暴力が明らかになり、球団から無期限の謹慎処分を受けた。謝罪もないまま巨人に放出した不可解な過程については、世間から疑問の目が向けられた。

 日本ハムのチーム成績を見ると、ここ2年は失策がリーグ最多。かつて堅守を売りにして勝利を重ねたチームの面影は、どこにもなくなっている。さらに2019年以降はチーム本塁打が最低と、打力でカバーすることもできなくなっていた。戦力構成上の問題があるにせよ、指揮官として苦境を打開する手を繰り出せなかった現実は残る。様々な試みで世間を驚かせた“新しすぎる”指揮官は、後世にどのように評価されるのだろうか。(Full-Count編集部)