来春の選抜出場確実、聖隷クリストファー高の上村敏正監督

 静岡県にある聖隷クリストファー高が今秋の東海大会で準優勝し、来春の選抜出場を確実にした。正式に決まれば、1985年の創部以来初の甲子園となる。チームを4年前から率いる上村敏正(うえむら・としまさ)監督は、浜松商と掛川西で春夏合わせて8度、聖地に導いた実績を持つ。指導で重視するのは、選手に向けて発する言葉。「98%の監督が口にしている」という“3つのNGワード”が、パフォーマンスを落としていると指摘する。

 選抜出場が決まれば、昭和、平成、令和の3元号で3校を夢舞台に導くことに。自身も現役時代に浜松商で甲子園に出場した静岡の名将は、どうやって選手の力を引き出しているのか。試合中に選手に対し、監督が言ってはいけないワードがあるという。

「三振するな」「四球を出すな」「エラーをするな」

 多くの指導者が当たり前のように口に出し、ほとんどの選手は言われたことがあるだろう。上村監督は、この3つの言葉こそが選手のプレーに影響を与えていると考える。

「100校中98校の監督が、この3つの言葉を選手に言っているのではないだろうか。そして、四球を出したから負けた、エラーしたから負けたと続けると思う。私は絶対に言わない。選手には『エラーするよ』『四球を出すよ』と伝えている」

コップの水をこぼすなと言われた子どもは…

 上村監督は、水の入ったグラスをお盆に乗せて運ぶ子どもを例に出して説明する。「水をこぼさず持って来いよと言ったら、子どもは緊張や不安から水をこぼしてしまう。投手は四球を出すなよと言われるから、余分な四球を出してしまう。選手は三振したらダメだと思った時点で、三振するのは決まったようなもの」。指導者の言葉によって、選手は本来の力を出せなくなると指摘する。

 大切にするのは、結果ではなく過程。「どうしたら四球を出さないのか」「どうやって三振しないようにするのか」を選手に考えさせる。制球を安定させるために球の回転を意識してリリースポイントに集中させたり、捕手が構えたミットだけを見るように助言したり、個々の投手がコントロールを乱さない確率を上げていく。

「意識できるのは、ひとつのことだけ。コントロールが悪くなる原因の修正に意識を向ければ、不安や緊張で力を発揮できなくなるというのは、ある程度防げる。監督が四球を出すなと選手に言うのは逆効果でしかない。必ずエラーや失敗はすると認識させて、それを防ぐための方法を普段から考えさせるのが重要」

 上村監督は、単純なことでも「どうするのか」「何に集中するのか」を具体的に伝える大切さを説く。攻撃で2死となった場面で、走者には「2アウトだぞ」と声はかけない。握った左の拳と開いた右手をぶつける手振りで、打った瞬間にスタートを切るように伝える。日ごろからジェスチャーの意味をチームに浸透させ、試合で実践している。

 指導者の言葉で、選手が発揮する力も変わってくる。ネガティブな意識を植えつけず、能動的に課題を解決している力を養うことが、チームの強さに繋がる。時代を越えて、3つの高校で結果を残す名将の言葉は、球児の成長を促している。

○上村敏正(うえむら・としまさ)1957年(昭和32年)5月25日生まれ。静岡県浜松市出身。浜松商3年夏に捕手で甲子園出場。1回戦で勝ち越し打を放ち、3回戦まで進出。早大卒業後に御殿場高の監督を経て浜松商で春夏計7回の甲子園出場。2009年に掛川西で選抜出場。2017年に聖隷クリストファーの監督就任。2020年から校長を兼任する。(間淳 / Jun Aida)