日本ハムのドラ5・畔柳を中学時代に指導した元中日左腕

 プロ野球選手になる夢を叶えるため、日々の練習に励む子どもたちは多い。秘めた個性を花開かせる選手もいれば、秘めたままで自らに限界を感じてやめるケースもある。出会う指導者や身を置く環境など多くの要素が複雑に絡み合う一方、教え子をプロに送り出した元プロは育成期に身につけるべき“選手の素養”があると見る。

「才能は誰にでもあると思います。もちろんプロを目指せそうな子もいる。でも半数以上は、素材が良くても、楽しみのままで終わることが多いですね」

 そう語るのは、元中日左腕の水谷啓昭氏。1983年限りで現役を引退した後、コーチやスカウトを歴任してきた。現在は、球団が支援する「ドラゴンズベースボールアカデミー」で小中学生の指導に携わる。今秋のドラフトでは、教え子である畔柳亨丞投手(中京大中京)が日本ハムから5位指名を受け、同アカデミー出身者初のプロが誕生した。

 体を動かす習慣をつけたい、少しでも上手くなりたい……。通ってくる子どもたちの動機は様々。それぞれの性格やレベルに応じた指導を心がける。中には“プロ志向”を掲げる受講者も少なくないが、意識と行動の乖離が成長の妨げになっているのではと考える。

怒る必要性も…必ずフォロー「理由を説明して分かってもらわないと」

「練習にしても、言われたことに対してやるだけになってしまう。なぜやるのか、やったらどうなるのかを理解しないまま、やったらそれっきりという子はもったいないですね」

 対照的に畔柳は自らで咀嚼し、整理がつくまで質問を続けたという。理解しようとする力こそが、さらなる成長につながる足がかりではないか。「楽な方、楽な方にいくのではなく、自分が何をすべきかを早いうちから考えられるようになることが大切」と語気を強める。

 もちろん選手任せばかりにはしない。何度言ってもやらない、同じことを注意され続ける選手には、時には怒ることも必要だと思っている。「少しは違うところを見せてみな」。ただ、頭ごなしの言いっ放しはNG。「必ずフォローします。なぜ怒ったかを説明して、理由を分かってもらわないと意味がない」。最終目的は、子どもの納得にある。

“自分には才能がなかったから……”と嘆いて夢を諦める子たちは少なくない。身体的、技術的な能力に目を向けるだけでなく、自らを客観視する力を身につけてほしい。日々、可能性を秘めた子どもたちと接しながら、水谷氏は願っている。(小西亮 / Ryo Konishi)