学童野球チーム「ひびきのスターズ」竹治賢二監督が重視する「地域とのつながり」

 福岡県に「地域密着」を掲げて急成長している、新進気鋭の少年軟式野球チームがある。北九州市若松区に拠点を置く「ひびきのスターズ」は、2019年の創部からわずか5年で部員数は57人(男子48人、女子9人)にまで増え、今年は初めて県大会に出場するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで力をつけている。Full-Countでは、全国で話題の学童野球チームを取材。練習や指導法から子どもたちの成長を促す“ヒント”を探っていく。

 ひびきのスターズは、アジアの中核的学術拠点を目指す「北九州学術研究都市」の中にある「北九州市立ひびきの小学校」の生徒を中心に構成されている。ひびきの小は、北九州市における15年ぶりの新設校として、2017年に開校。その後、近隣に住まいを構える竹治賢二さんが監督となり、2019年に野球チームを立ち上げた。

「ひびきの小の周りは新興住宅街で、当時は野球だけではなく、スポーツをする環境がありませんでした。野球を何人かやりたいという子がいて、その子たちに野球をさせてあげたいというところから、思い切ってチームを作りました。最初は17、18人で始めた感じですね」

 新たに産声を上げた“おらがチーム”を、地域も応援した。情報通信会社、整骨院、飲食店がスポンサー企業、スポーツ用品店が協賛企業としてバックアップ。マイクロバスでのスポット送迎や、選手の治療、試合時の弁当配達、野球道具の安価購入などを可能にした。保護者にとっても、送り迎えや金銭面の負担が軽減されるのはありがたい限りだ。

「地域の方に応援してもらえるチーム作りをするために、うちが野球以外にもう1つ力を入れているのは、地域とのつながりです。子どもを中心にいろんなお手伝いをさせていただいていて、そういう活動をしていく中で『ぜひ応援したい』ということで、サポートいただいています」

練習を切り上げて清掃も…地道な活動でグラウンドも利用可能に

 地域活動は花壇の草抜きや苗植え、ゴミ拾い、祭りなどの行事手伝いなど、多岐に渡る。さらに月に一度、自宅前やアパート、マンションを回り、200〜300ほどの古紙を回収。そこで得た金銭は、地域のまちづくり協議会を通して子どもたちに還元している。

 創部当初はグラウンド探しに奔走していたこともあったが、こういった活動が地域の評判を呼び、今ではひびきの小運動場、北九州市立大ひびきのキャンパスグラウンド、二島西公園グラウンドを利用することが可能に。平日、休日で使い分け、学年ごとに場所を変えて練習ができるため、効率も上がった。

「今までは野球だけやっていて、なかなかそういった地域活動に力を入れられないところがあったと思うんですけど、うちは大会に出て、昼から時間があれば、花壇の草抜きをしたり、練習を早めに切り上げて清掃に行ったりと、地域の活動をする時間を毎月意識してつくっています」

 地域を愛し、そして愛されるチームとして、力強く歩みを進めるひびきのスターズは、6月3日から5夜連続で行われる「少年野球フェスティバル」にも登場予定。今後、チームの立ち上げを考えている指導者にとっても、学びの多い内容になりそうだ。(内田勝治 / Katsuharu Uchida)