“球爺”たちの青春はいつまでも続く 「おじいちゃん甲子園」が誕生した訳

“球爺”たちの青春はいつまでも続く 「おじいちゃん甲子園」が誕生した訳

気温5℃の中、会長自ら出場。はつらつとプレーする“球爺”たち

 昨今の野球界といえば、小学校及び中学校の急激な競技人口減少という不安になるような暗いニュースが頻繁に目につく。少子高齢化が叫ばれる中“おじいちゃん球児”が聖地で躍動する姿が見られる。

「おじいちゃんの甲子園大会」が2018年11月27日より、開幕する。昨年度はオリックス・バファローズの準本拠地でもある「ほっともっと神戸」のみの開催であったが、今年は当初からの目標であった「阪神甲子園球場」での開催が実現した。

 悠々と打席に向かうその男こそが日本生涯還暦野球協会代表・寺岡稔氏であった。協会事務局長には、宇陀市商工観光課長の小野雅司氏が名を連ねる。神戸開催にもかかわらず、なぜ、奈良県の宇陀市観光課長か。小野氏はこう答える。

「奈良県宇陀市は還暦野球のまちを宣言している。野球という幅広い年代の競技をスポーツだけでなく、観光との事業の一環でスポーツを取り込んでいる。施策として『野球の試合+移動ツール+ホテル+観光』といった1つのパッケージとして提供している。スポーツと観光という観点で高齢者たちを元気にしたい」

 大会発起人である寺岡氏は、マスターズ大会スキー競技で、日本一に輝いたこともあり、野球を始めたのは60歳を過ぎてからと異色の経歴である。おじいちゃん甲子園を発案した理由を「おじいちゃんになってわかったけどね、暇(時間がある)、動ける、お金がある。このおじいちゃん3原則が、おじいちゃん甲子園誕生のキーワードだったよ」と語る。

 さらに、おじいちゃん甲子園誕生秘話には「スキーをしていたこともあり、日本より高齢国としての歴史が長いヨーロッパを参考にしている。仕事を辞め年金暮らしの中、お金の使いどころを行政とツーリズムを絡めたことがしたいと考え、そこから野球との可能性を探り始めた」。

 参加料は1万8000円、参加チーム料は1チーム6万円である。確かに若者では、財布の口が開き難いかもしれない。しかし、出場した選手に話を聞くと「平日は暇、かといって野球をやる場所もないしね。だから、場所を確保してくれて、余暇を楽しむサービスをお金で買えるのであれば、満足のいく料金設定だよ」と69歳の球児は笑いながら答えてくれた。

増加する競技人口、実現した甲子園球場での開催

 寺岡氏は還暦野球を始めようと、全国各地の還暦野球を巡る中、日本人高齢者の元球児にとって1番の憧れは甲子園であると現場の声を汲み、おじいちゃん甲子園大会設立に踏み切った。今では、400近いチームが参加し、全日本還暦軟式野球連盟(別組織)と合わせると競技人口は約25万人と近年上昇傾向である。

 今後については「人口としても今後20年は増え続け、各連盟と手を取り合い全国に展開できればと願っている」と、全国規模の大会として認知されることを目標に掲げている。一般社団法人日本生涯還暦野球協会のFacebookも寺岡氏自身が動かす。更新も高く、事細かに情報を提供してくれる。

 ルールに関しても、おじいちゃん選手が全力でプレーできるよう設定されている。使用するボールは軟式野球ボール、バットは金属、塁間や投球距離など少年野球と同じルールを採用している。寺岡氏は「打つことはできても走れない人だっている。それでも誰もが楽しめるのが野球のあるべき姿ではないか」と力を込める。

 グラウンド整備など大会スタッフには、関西学生軟式野球連盟の“若者スタッフ”が縁の下で支える仕組みになっている。宇陀市の協力もあり、試合後に移動するバスも準備されるなど、目一杯野球を楽しむ環境を整える。日本で、幼い頃から野球をしていれば、“甲子園”は憧れでもあり、特別な存在であろう。あの頃の青春が還暦を超えて帰ってくる。還暦野球最高峰の大会を目指し、おじいちゃんたちはまだまだ走り続けている。(大森雄貴 / Yuki Omori)


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