ギャラクシー賞月間賞:歴史探偵
「戦争とエンターテインメント」

7月14日放送
22:30〜23:15
日本放送協会

 佐藤二朗扮する探偵所長とNHKアナウンサー「探偵」が歴史の謎を調査する「歴史探偵」は、今年3月に始まった。歴史番組のテーマといえば幕末以前の「人気の時代」に集中しがちだが、近代史、しかも日中戦争から第二次世界大戦の時代に焦点を当て、戦争とエンターテインメントの関係性に謎を設定した着眼がまず光る。戦時中は厳しい検閲で娯楽も封殺されたイメージが強いが、レコード喫茶ではハワイアン音楽なども親しまれていたという。「敵性音楽のはずなのになぜ?」という疑問から始まった戦時エンタメの実態調査は、プロパガンダの本質に迫る展開をみせた。

 戦時中、国の政策を写真や漫画でわかりやすく知ることができると人気だった政府広報誌『写真週報』。この雑誌の記事タイトルで使われていた言葉を探偵が3年間175冊分数えあげてみると、「戦う」「衛る」などを抑えて最も多かったのは「明るく」という形容詞。「明るく戦おう」という使い方が頻発した背景に『写真週報』のプロパガンダ機能が浮かび上がる。

 国民の戦意を揚げ戦争協力に誘うための人々の明るい笑顔の写真、鬼畜米英を浸透させる漫画、「南洋音楽」と呼び変えられたハワイアン。今日の笑いの定型「しゃべくり漫才」も戦場慰問から生まれていた。その生みの親、秋田實の漫才を現在の漫才師「ミキ」が再演してみると、検閲をすり抜け「庶民の本音」を漫才に織り込もうとした苦心がしのばれる。戦況悪化に伴って次々に娯楽劇場が閉鎖された背景には、「愚劣な娯楽の放置は許せない」などという市民の新聞投書が世論圧力となっていたことも見えてきた。

 権力者が民意誘導のために娯楽を利用する例は歴史の中に数多あるが、そのことを自分の国の歴史として、バラエティ番組で知ることの意味はとても大きい。戦時中のエンターテインメントの功罪は、それを運んだメディアの功罪とも表裏一体だった。コロナという有事に直面する今、これは過去のことなのか?とも考えさせられた。今日に繋がる歴史からの視点、今後さらに開拓していってもらいたい。(古川柳子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。