2024年5月17日、Steamで『ヴァンガードプリンセス(Vanguard Princess)』を販売中のeigoMangaによる、同タイトルの権利者の連絡先に関する情報を募集する広告が著作権情報センターにて掲載されました。

これにより、eigoMangaがこれまで説明してきた販売までの経緯に矛盾が生じる可能性が浮かび上がります。

疑惑深まるeigoManga、別パブリッシャーとはお互いのトレイラーを著作権の申し立てで削除するトラブルも。
『ヴァンガードプリンセス』とは、2009年に無料で公開されたスゲノトモアキ(SUGE9)氏による対戦格闘ゲームです。2012年にeigoMANGAより英語対応のバージョン(以下、「海外版」)がリリースされ、2024年にはexA-Arcadiaよりアーケード用タイトル『ヴァンガードプリンセスR』が発表。しかし、eigoMANGAならびにexA-Arcadiaが、YouTubeにて公開中のお互いのトレイラー動画を「著作権の申し立て」により削除する事態も発生しています。


eigoMANGAが配信する海外版については、様々な疑惑が生じており、Steamコミュニティで同パブリッシャーが“原作者であるスゲノトモアキ氏にも利益が分配されている”旨を説明しているものの、ユーザーからはその証拠が提出されないことを怪しむ声も挙がっていました。また“原作開発に使われたゲーム制作ツール「2D格闘ツクール2nd.」を改造したうえで販売しているが、エンターブレインは許可していないのではないか”との指摘も届いていました。



過去、海外版の翻訳などに携わった人物が“ロイヤリティ及び旅費の支払いを一切しなかった”として、eigoMangaに訴訟を起こしていたことも前者の疑惑を深めていましたが、今回の広告掲示にあたり、同社がスゲノ氏とコンタクトを取れない状況にある可能性が強まりました。“いつからこの状況下にあったのか”、“何故その上でSteamにて販売を続けるのか”、“果たして本当に利益が分配されていたのか”といった点について、Game*Spark編集部はeigoMangaに問い合わせています。

さらに、「2D格闘ツクール2nd.」についてeigoMangaは、海外版は同ツールの『ヴァンガードプリンセス』プロジェクトファイルを使って作られており、アメリカのPCで動作させるためにソースコードを開発し、"エンターブレインから許可を貰った(原文「they were ok with it」)”としているものの、エンターブレインは2013年に株式会社KADOKAWAと合併。『ヴァンガードプリンセスR』を発表したexA-Arcadiaは、KADOKAWAと“独占的ライセンス契約”をした上で、同ツールの移植・改良をしていると説明しているため、eigoMangaが仮に本当にエンターブレインの許可を得ていたとしても、本ライセンスの範囲や遡及的に適用されるか否かで問題になることもありえます。

また、原作ゲーム内の楽曲は著作権フリー音楽ライブラリ「Nash Music Library」や「SOUNDTEXTURES(MEDIAPLANET TOKYO)」のものを使用していますが、前者の利用は「契約者様が完パケ(作品化)した作品については、複製・貸与・転売・譲渡・頒布・ダウンロードできる状態にすることが可能」とされる一方、後者は「ご購入頂いた方に限り”別途著作権管理団体への申請不要・著作権使用料無料(ロイヤリティフリー)”にてご使用頂けます」としており、第三者であるeigoMangaが手を加えた海外版のケースがこれらの利用規約に反するかは不明瞭です(海外版はDLC「Vanguard Princess Online Deluxe」を導入すると楽曲などが原作と違うものに差し替えられる)。

なおexA-Arcadiaも、その販売代理業務をしている株式会社Show Me Holdingsが2023年10月07日に同じく『ヴァンガードプリンセス』の著作権者・著作権継承者を捜索していますが、『ヴァンガードプリンセスR』公式サイトには「令和6年3月28日に著作権法第67条の2第1項の規定に基づく申請を行い、同項の適用を受けて作成された」と記載。「権利者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け,通常の使用料額に相当する補償金を供託することにより,適法に利用することができる」という“裁定制度”の下で開発しているものと見られます。


Game*Spark編集部では、前回記事「『ヴァンガードプリンセス』著作権は誰のもの?海外版と『R』版、2つの販売元が互いの動画に著作権侵害の申し立て―原作者の意思はわからず」が掲載された2024年05月09日よりeigoMANGAならびにexA-Arcadiaに対し、“両者のゲームとスゲノ トモアキ氏の関係性”、“販売許可の有無”、“使用されているゲームエンジン”、“トレイラー削除の件の認知”、“著作権の申し立てが正式なものか”を、「ツクール」シリーズを開発・発売しているGotcha Gotcha Gamesには“GGG製品利用規約が「2D格闘ツクール2nd.」の利用者にも適用されるのか”、“適用される場合は海外版のケースが(仮に同ツールを使用していたら)規約違反に該当するのか”を問い合わせていますが、いずれの企業からも回答は得られていません。

※UPDATE(2024/05/27 06:58):作中で使用されている楽曲に関して、スゲノ氏のブログから情報を確認できたため、記事本文を推測から断定する形に修正しました。