◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 最終日(19日)◇バルハラGC(ケンタッキー州)◇7609yd(パー71)

最終18番ホール、1.8mのバーディパットを決めた瞬間、ザンダー・シャウフェレは天を仰いだ――。外せば、先に上がったブライソン・デシャンボーとのプレーオフ。カップ際で切れそうになった球はカップの縁でコロリと回り、内側に吸い込まれていった。長く手にすることのできなかった悲願のメジャータイトル。伸ばし合いの展開の中、最終日に7バーディ1ボギーの「65」を出して追いすがる選手たちを振り切った。

前週の「ウェルズファーゴ選手権」、ロリー・マキロイ(北アイルランド)との最終日最終組の一騎打ちで、シャウフェレは敗れていた。マキロイのプレーも良かったが、それ以上にシャウフェレのパットが入らず、自滅の感も強かった。今週、バルハラGCに移動してくると、シャウフェレはすぐにパターを調整した。パッティングコーチのデレク・ウエダ氏も含めたチームで話をし、ヘッド重量を重くしてストロークをスムーズに動かせるように調整していた。鉛を貼ることも考えたが、最終的にはエースパターの重りを変え、前週よりヘッドを12g近く重くしていた。

この日、シャウフェレが優勝のキーポイントに挙げたのは6番ホール(パー4)のパーパット。2組前のデシャンボーやビクトル・ホブラン(ノルウェイ)が伸ばしているのを知り、一つも落とせない中での重要な一打だった。「グリーンが少し跳ねやすくなっていたので、しっかりストロークすることを心がけた。ボールはうまく転がってくれた」(シャウフェレ)。ピンチをしのいだことが直後の7番のバーディにつながった。今週に入ってのパターの重量アップがストロークに貢献したかどうかは定かではないが、ストロークゲインド・パッティング(パットのスコア貢献度)は4.704(13位)と、前週の0.932(25位)から大きく改善していたのはとどめておきたい。

この4日間はショットの安定感も光った。ストロークゲインドはオフ・ザ・ティ(パー4、パー5のティショットのスコア貢献度)が5.227(3位)、アプローチ・ザ・グリーン(グリーンを狙うショットの貢献度)が7.811(2位)で、パーオン率も1位。現地ではシャウフェレの飛距離も話題となり、ジャスティン・トーマスもその変化に驚いていたという(今週は平均310.1ydでフィールド全体の15位)。

昨年からトレーニングをして体を強化し、さらにコーチにクリス・コモ氏をつけたことで、飛距離が伸びたのはもちろん、スイングが安定した。「スイングは大きく変えてないんだ。クリスが僕に落とし込んでくれたのは、ほんのちょっとオンプレーンにしたことと、肩を縦に動かすこと。悪くなると肩もフラットになりやすくて、レイドオフがきつくなるからね」。ここ数年は優勝争いの大事な場面で、ドライバーで球を曲げてスコアを落とすシーンも多かった。この日は最後まで球が荒れることはなく、優勝争いの緊張感がある中でもフェアウェイをキープしていた。「きょうもいくつか難しいティショットがあったけど、しっかりといい球を打つことができた。今週はそれがずっとできていた」とシャウフェレは振り返った。

いつもいいところにいるけど、なかなか勝てない。一時は“万年2位”の烙印を押されたこともある。「ただのノイズ、僕はそう考えるようにしていました。外野の声を気にせず自分の仕事をする。今週はそれを実行できたと思います」

これで世界ランキングは自己最高の2位に浮上。熱望しているパリ五輪出場権獲得へかなり前進したことになる(6月17日付の世界ランキングに基づく五輪ランキングで決まる)。「米国は強い選手が多いので、出場権を得るのも非常にタフ。でも今回の勝利で、安全圏に入ったと思う」。18番ホールのグリーン上で優勝者に贈られるワナメーカー・トロフィを掲げたシャウフェレは、その喜びをかみ締めていた。(ケンタッキー州ルイビル/服部謙二郎)