書評家・卯月鮎が選りすぐった最近刊行の新書をナビゲート。「こんな世界があったとは!?」「これを知って世界が広がった!」。そんな知的好奇心が満たされ、心が弾む1冊を紹介します。

 

ワイン・ジャーナリストが丁寧にガイド!

こんにちは、書評家の卯月鮎です。私がワインにハマったきっかけはグラス。子どものころ、丸みを帯びたワイングラスがどこかなまめかしく、そして高貴なものに思えて、普段から意味もなく使っていました。ぶどうジュースを注いでは悦に入ってちびちびと飲んだり、麦茶や水も貴族になったつもりで味わったり(笑)。

 

今では本物の赤ワインにもハマっていますが、ワインって最初はどれを飲んでいいのか、銘柄も多くて全然わからないですよね。そういうときのガイドとして心強いのが今回の一冊。

『絶対はずさないおうち飲みワイン』(山本昭彦・著/朝日新聞出版・刊)は、おうち飲みワインの流儀を最短距離で身につけられる新書。超初心者でもワインの味わい方や料理との組み合わせを知り、ステップアップして上級者へと成長できる構成になっています。

 

著者はワイン・ジャーナリストの山本昭彦さん。購読制ワインサイト「ワインレポート」の設立者で、世界中の産地からニュースをレポートしています。著書は『おうち飲みワイン100本勝負』『ブルゴーニュと日本をつないだサムライ』など。山本さんがワインと出会ったのは40年近く前で、大学時代のフランス貧乏旅行のとき。日本円で150円ほどの安酒を買って、焼きたてのバゲットとハムを食べたら、いくらでも飲めてしまったとか。本場での幸せな出会いが人生を決めたということなんでしょうね。

 

ワインコラムも読み応えあり!

山本さんによれば、ワインは語るものではなく、喜びをわかちあう飲み物! 小難しい飲み物ではないと明言されていて、そのスタンスがワイン入門へのハードルをぐっと下げてくれます。

 

1章から5章まで5つのステップがあり、各ステップの最後には6〜16本の具体的な銘柄も紹介されています。ボルドーで収穫人が回し飲む初心者向けの「レ・ヴァンタンジュ セレクテッド・バイ・クリスチャン・ムエックス」、美しいサーモンピンクがインスタ映え確実な「ステュディオ・ロゼ・バイ・ミラヴァル」、日本で多くのVIPに振る舞われた、引き締まった味わいの甲州産「アルガブランカ クラレーザ」。モノクロですがボトルの写真も載っています。2000円台のワインが多く気軽に手が出せそうです。

 

ワインの銘柄紹介だけだとカタログっぽくなってしまいますが、コラムや読み物も充実。特にコラムで驚いたのが、「実はヤフオクやメルカリで偽造ワインが売られている」という話。空き瓶に安ワインを詰め替える旧来のパターンはもちろん、ゼロからそっくりな瓶とラベルを製造するなど、デジタル技術が進み、手口も巧妙になっているとか。安いワインで騙されてしまうのも悔しいですが、体に入るものなので食品としての不安もありますね。

 

もうひとつ、「ワインの色は何色ある?」というコラムも新発見でした。おおよそ赤、白、ロゼの3色だろうと思っていたら、なんと果皮と種を漬け込んで醸す世界的に流行のオレンジ、完熟前のブドウから造るグリーン、白ワインを樽に入れたまま放置してできるイエローもあるとのこと! オレンジワイン、気になります。

 

晩酌でただ強いアルコールを摂取して酔っぱらうだけ……というのでは少々寂しいもの。趣味として、奥の深いワイン道に一歩踏み込んではいかがでしょうか。

 

【書籍紹介】

絶対はずさないおうち飲みワイン

著者:山本昭彦
発行:朝日新聞出版

ソムリエは絶対教えてくれない「お家飲みワイン」の極意。ワインは飲み残しの2日目が美味、きんぴらごぼうには赤、グラスは1つで十分、ワインを買って来たらまず冷蔵庫……などの実践的超常識を紹介。お安く手軽に飲むところから始まり、自分の言葉でワインが語れ、ワイン会を主宰できるまでの5つのステップ。これを読めばワイン通になれる。ステップごとのお勧めワインを計50本紹介。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。