1994年4月、名古屋空港で乗員乗客264人が死亡した中華航空機墜落事故から30年たった26日、現場近くの愛知県春日井市の慰霊施設「やすらぎの園)で慰霊式典が営まれ、遺族ら100人が参列した。遺族会の山本昇会長(70)=岐阜県土岐市=は「事故を起こしてはなりません。風化させてはなりません」と教訓の継承へ決意を述べた。

 墜落現場を400メートル先に望む「空へ」と刻まれた慰霊碑の前に遺族が参列。遺族会の酒井光男副代表(69)=愛知県岡崎市=は式辞で今年1月の羽田空港の航空機衝突事故に触れ、「(日航機乗客の脱出を知り)画面に向かって涙した。事故を教訓に、その後の事故を防ぐ意味で風化させてはいけない」と呼びかけた。

 中華航空機事故では、県内の乗客47人が犠牲になっている。土岐市から参列した75歳の男性は、兄夫婦を失った。当時、テレビで事故の状況を見て「この炎の中では生きておれんな」と覚悟した。毎年の式典には仕事で来れなかったが、今年は節目とあって参列。墜落現場を眺め、「遺体確認に来た格納庫を思い出した。この場を設けてくれた遺族会に感謝している」と話した。

 土岐市の日東建材工業グループは38人が死亡している。多治見市から訪れた55歳の女性は、関連会社の役員だった父を亡くしている。「お葬式をはしごした」と多数の親族も犠牲になった混乱を振り返った。30年の節目には「みんな年をとってきた。遺族会をどういう形にしていくか、考えていかないと」と活動の継承を課題に挙げた。

 この日、チャイナエアライン(旧中華航空)の名古屋支店長は参列して献花したが、式辞を述べなかった。総会で山本会長は「許されない。本社の意向ということだ」と航空会社としての姿勢を批判した。

 式典は事故の発生時刻の午後8時15分に合わせて夜も営まれる。事故では乗員乗客271人の台北発名古屋空港行きの中華航空機が着陸に失敗して炎上。生存者の7人も重傷を負った。