リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が進む岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町で井戸などの水位が低下した問題で、古田肇知事は21日の定例会見で、県内のリニア沿線の7市町と首長会議を近く開催する方針を明らかにした。今回の問題では2月下旬の事案発覚から約2カ月間、県に報告がなかった事態となり、古田知事は「沿線市町との連携を再構築したい」と述べ、情報共有のネットワークをつくる考えを強調した。

 会議に参加するのは、多治見、中津川、瑞浪、恵那、土岐、可児の6市と可児郡御嵩町。沿線市町が抱える問題を共有し、今後もスムーズに情報提供できる体制をつくる。古田知事は「大中小、さまざまな問題はあるが、相互に情報共有することで、近隣住民が安心できる」と説明した。

 地下水源の低下を巡っては、2月20日にJR東海は、瑞浪市大湫町の観測用井戸で覚知し、瑞浪市には伝えていたが、県に対して5月1日まで報告がなかった。古田知事は「住民生活に直結する問題で、速やかな情報共有が不可欠。そういった意味で大変遺憾だ」と語った。

 トンネル工事に伴う残土処分計画の候補地となっている御嵩町が、今回の問題を受け、JRとの協議を一時停止したことについて、古田知事は「残土や水位低下の問題を分けるのではなく、一連の工事の中で起こり得る問題として一体となって情報共有する体制を組みたい」と説明した。

 また、県は今回の水位低下の問題を受け、20日に専門家や瑞浪市、JRを交えた会議を開き、水位低下の因果関係や実態把握調査の方法、今後の対策といった論点を整理した。近く、環境保全の実施状況を審議する「県環境影響評価審査会」の地盤委員会を開き、県としての意見をJRに示す方針。古田知事は「速やかに県の考え方を示し、その後も議論を続けたい」と語った。