発足5年目を迎えた朝日大(岐阜県瑞穂市)の新体操部が、県内のみならず日本の男子新体操界に新たな風を吹き込んでいる。男子大学生が競技に打ち込む県内唯一の組織として選手を受け入れ、今春は団体種目で初めて公式戦に出場した。競技関係者は「岐阜の新体操の将来を担う組織になれば」と期待を寄せる。

 4月下旬、安八郡安八町のOKB体操アリーナで開催された体操の東海北信越学生選手権。男子新体操の部の大トリで、そろいの華やかな衣装をまとった朝日大の団体メンバー5人が県勢として初めてマットに立った。緊張感がにじむ表情から一転、音楽が流れ始めると息の合った動きで情感豊かに演技。男子個人総合では、全種目1位の村地廉人が3連覇を果たした。

 そもそも、県内の新体操界はジュニア世代の育成が盛んだ。全国高校総体といった主要大会では、済美高などの県勢が上位常連。安八町に拠点を置くNPO総合体操クラブが育成の中核を担っている。パリ五輪出場は逃したが、女子では日本代表「フェアリージャパン」の主将で東京五輪代表の鈴木歩佳(ミキハウス、大垣日大高出)らオリンピアンも輩出してきた。

 一方、高校卒業後は県内で競技を続ける環境がなく、有望選手は県外に送り出すしかなかった。そこで2020年、最初は所属1人の同好会として新体操部が発足。選手時代は全日本男子社会人選手権の個人総合で4連覇を成し遂げるなど、男子新体操界のレジェンド・臼井優華さん(済美高出)が監督を務め、活動がスタートした。

 発足2年目には村地が済美高から入学。「強豪の他大学からも誘いがあったけど、地元で競技を続けられる。伝統がなく、一から部を築いていくことに楽しみもあった」と振り返る。同好会は村地らを中心に個人種目で実績を重ね、昨年度から競技力の高い「体育会」の部活動に昇格した。

 朝日大の団体種目での公式戦出場は、大学の競技界にも一石を投じている。全国で各種大会の男子団体に出場している大学は5チームのみ。国内最高峰の全日本選手権の大学出場枠は同じく5で、予選を兼ねる全日本学生選手権に出場すれば、得点によらず自動的に参加資格が得られていた。臼井監督は「そこに朝日大が加わると1チームが出られなくなる。おのずと日本全体に緊張感が生まれ、選手たちの成長にもつながる」と期待する。

 五輪種目に採用されている女子と比べ男子の競技人口は少ないが、バック宙などのダイナミックな演技は男子ならでは。NPO総合体操クラブの臼井俊範理事長は「まずは全日本選手権の出場を果たし、競技の魅力が一人でも多くの人に伝われば」、臼井監督は「岐阜から新体操をもっと盛り上げたい」と語る。