医療や保育の専門知識を持つメンバーらでつくる岐阜県大垣市の団体が、出産後の母親を支える「産後ケア」に取り組んでいる。市民団体「産前産後ケアあっぷる」は、元保健体育教諭や理学療法士らが運営し、スタッフ自身も母親として産後の育児で苦しんだ経験を持つ。心身のトラブルが多くなる母親らの心強い味方になっている。

 出産を経験した女性らがバランスボールに乗って体を動かす。5日に大垣市綾野の市綾里地区センターで開かれた、産後2カ月以降の母親を対象にした講座「おおがき産後ケアの日」には9人が参加。バランスボールを使い、赤ちゃんと一緒にできる心と体のセルフケアをインストラクターのスタッフから学んだ。

 泣いたりぐずったりする赤ちゃんには、子育て経験が豊富なスタッフらが会場後方で託児し、交代で対応。産後指導士で代表の田邉麻紗子さん(41)は「子どもは大事。家族は大事。でもまずはママである自分自身を大事にして」と参加者に呼びかけた。

 生後2カ月の長女と参加した女性(26)は「ワンオペ育児で思った以上に相談できる人がおらず、八方ふさがり状態だった。1人で子どもと家にいると気がめいることも多いので、気分転換になる」とリラックスできた様子。生後3カ月の次女と参加した女性(34)は「県外から結婚で移住してきて、不安も大きかった。他のママと交流が持ててうれしい」と晴れやかな表情を見せた。

 あっぷるは2019年に設立。妊娠前から出産後の女性の心身を健康に保つための講座やエクササイズを提供している。「おおがき産後ケアの日」などの講座は、市の市民提案事業に採択され、市の事業をあっぷるが企画、運営する。

 産後うつは10人に1人がなるとされる。孤独な子育て環境が一因ともいわれ、自殺や子どもの虐待リスクになるとの指摘もある。田邉さんは「産後うつによる入院での予約キャンセルや、参加者から深刻な相談を受けることも少なくない。自分の産後を振り返っても紙一重だった」と語り、今後も母親の不安の軽減や解消のケアに力を入れる考えを示した。