野生のコーヒー種の60%が絶滅の危機に瀕している

野生のコーヒー種の60%が絶滅の危機に瀕している


病害・気候変動・森林伐採という3つの猛威により、地球上の野生のコーヒー種のうち約60%が絶滅の危機に瀕していることがScience Advancesで公表された研究結果から明らかになっています。

High extinction risk for wild coffee species and implications for coffee sector sustainability | Science Advances
http://advances.sciencemag.org/content/5/1/eaav3473

60% of the planet's wild coffee species face extinction, study says
https://mashable.com/article/coffee-extinction-climate-change/

イギリスの王立植物園であるキューガーデンの植物学者たちが、世界的に使用されている国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト基準に基づき分類したところ、野生のコーヒー種・124種のうち75種(約60%)が絶滅の危機にあることが明らかになりました。植物学者によると、健康で活力に満ちた風味豊かなコーヒーを安定して供給するには「野生種が大きなカギを握る」と語っており、おいしいコーヒーを飲む人々にとって、今回の研究結果は懸念すべきものだとしています。

キューガーデンの植物資源部門でシニアリサーチリーダーを務めているアーロン・デイビス氏は、「野生のコーヒー種が絶滅の危機に瀕している」と指摘する今回の研究論文の第一著者でもある人物。同氏は、「我々が飲むコーヒーは、野生種が利用できるからこそ飲めるものです」と、野生のコーヒー種の危機は現代人の飲むコーヒー種の遺伝的多様性を脅かすと主張しています。


コーヒー豆の品種は「ロブスタ種」と「アラビカ種」の2種類に分類することができるのですが、ロブスタコーヒーノキから取れるロブスタ種のコーヒー豆は、1900年代の初頭まではほとんどその存在を知られていませんでした。

デイビス氏はロブスタ種について、「ほとんど知られていなかった状態から、世界の主要商品にまで成長したことは驚くべきことだ」と語っています。


コーヒーは他のほとんどの食料品と同じように、現代では農場で栽培されています。しかし、これらの前身であるエチオピアやスーダンといった特定の地域に存在する野生のコーヒー種は絶滅の危機に瀕しています。

デイビス氏ら調査チームは2012年に南スーダンの「世界のコーヒーの60〜70%を占めるアラビカが、エチオピア以外の土地で唯一生息する地域」を訪問したそうです。70年前に同地域を訪れたコーヒー収集家たちは、口を揃えて「野生のコーヒー種で溢れている」と語ったそうですが、現在ではこの土地も大きく様変わりしてしまっているとのこと。

「(南スーダンのかつてはコーヒーノキで溢れていた地域は)骨のように乾燥しており、景観は70年で完全に変わってしまった」と語るのは、コーヒーに関する先端農業科学を世界的規模の協力体制の下で活用している世界で唯一の機関World Coffee Researchでコミュニケーションディレクターとして働くハンナ・ニュシュワンダー氏。

もはやこの土地には古いコーヒーノキやコーヒーノキの幼苗がほとんど見つからなかったそうで、「森林破壊がさらに10年間続けば何も残らないだろう」とデイビス氏は語っています。

これまでの100年間では起こらなかったことですが、野生のコーヒー種を失ったとすれば、地球温暖化や気候変動と共に広まる病害からコーヒーの品種を守るための品種改良などができなくなる可能性があります。

南スーダンで野生のコーヒー種を調査するデイビス氏

ニュシュワンダー氏は、「コーヒー業界は我々が認識している課題、そしてまだわからない可能性のある課題に常に直面しています。絶滅の危機に瀕している野生のコーヒー種を保護しなければ、おそらく将来的に起こる問題に取り組むだけの能力が不足してしまいます。なぜならツールキット遺伝子を持たないからです」と語り、将来コーヒーの品種が病害に苦しめられるようなケースが起きる可能性を考えると、野生のコーヒー種を保護する必要性は高いとしています。

現在世界中で栽培されているコーヒーの品種は、「地球温暖化」と「干ばつ」という2つの気候変動に特に脆弱だそうです。食料安全保障について研究しているカリフォルニア大学アーバイン校の地球システム科学科の助教授であるネイサン・ミューラー氏は、「温室効果ガスの増加は地球を温暖化させ、極端な熱や干ばつのパターンを変化させている」と語っています。さらに、気候変動により変化する害虫被害などに耐性のあるコーヒー豆の品種を新しく生み出すためにも、野生のコーヒー種を保護して遺伝的多様性を保つことは重要であるとのこと。

ロブスタコーヒーノキとアラビカコーヒーノキを合わせると世界で流通しているコーヒーの約99%を占めることができると言われています。しかし、過去の研究では野生のアラビカは約60年で絶滅すると推定されています。

「これらの研究結果は長期的にみた場合に脅威となるものですが、一部の人々が想像するよりも短期的なものである可能性もあります。遠い未来のことのように聞こえますが、それ(絶滅)は我々の一生の間に起こる可能性があります」とニュシュワンダー氏は語っています。


こういった問題の解決策として、野生のコーヒー種をシードバンクに保存することが挙げられます。研究者たちによると、野生のコーヒー種の約55%がシードバンクに保存されているそうですが、だからといって安心していいわけではありません。なぜなら、単純にシードバンクのうちいくつかは、十分な資金を確保できておらず信頼の置けないものであるからです。ニュシュワンダー氏によると、シードバンクの中の一部は保存している種子を手書きのメモで管理しているだけの施設もあるとのこと。

なお、コーヒー業界は野生のコーヒー種を保存するための取り組みを行っていますが、それには2000万ドル(約22億円)以上の費用がかかる可能性が指摘されており、「コーヒー業界の成功は植物の健康状態に左右されるという認識が高まっています」とニュシュワンダー氏は語っています。

Photo by Nathan Dumlao


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