映画「ジュラシック・パーク」はどうやって巨大な恐竜を迫力のあるスケールで描いているのか?


スティーヴン・スピルバーグ監督作品「ジュラシック・パーク」は、現代に復活した恐竜が孤島の研究施設で人間たちに襲いかかるというパニックムービーです。スピルバーグ監督作品の中でも最大のヒット作といわれる「ジュラシック・パーク」は続編も多く作られ、2018年には「ジュラシック・ワールド/炎の王国」が公開されました。映画解説などのムービーをアップするYouTubeチャンネル「Films&Stuff」が、「第1作の『ジュラシック・パーク』はその後のシリーズ作よりも迫力あるスケールで描かれている」とムービーで解説しています。

Why Jurassic Park Looks Better Than Its Sequels - YouTube

「ジュラシック・パーク」で迫力を生んでいる要素の1つが画面のフレームです。

一般的な映画では、画面アスペクト比に「シネマスコープ」という規格である2.35:1が採用されています。

「ジュラシック・ワールド/炎の王国」も、シネマスコープが採用されています。2:1よりもさらに横長な画面は、映画館のスクリーンに映した時に大迫力を発揮します。

一方、「ジュラシック・パーク」の画面アスペクト比は、「アメリカンビスタ」と呼ばれる1.85:1が採用されています。

横幅をそろえて比べてみると、アメリカンビスタの方がシネマスコープよりも画面が縦方向に24%増える計算となります。この24%の差が映画の迫力を生む秘密となっているとFilms&Stuffは説明しています。

例えば「ジュラシック・ワールド/炎の王国」では、恐竜の登場シーンは恐竜を見上げる人間の上半身だけを映したミディアムショットから始まります。


次に、恐竜の全体像が映るとこんな感じ。奥にある地形や建物によって恐竜の大きさを表現します。

そして、実際に人間が見上げる映像に切り替わります。しかし、画面が横長になってしまうため、恐竜を見上げるショットは少し斜めからのものとなり、やや不安定な構図となります。

さらに、恐竜の全体像はカメラを引かなければスクリーンに映らないため、以下のような場面では恐竜よりも左手前にある装甲車や人間たちが画面の大部分を覆ってしまっています。

一方、「ジュラシック・パーク」では、ミディアムショットは基本的に登場人物の会話や表情を映したい時にしか使いません。

科学者たちが車で到着した場面で、奥に恐竜が映っています。

この場面では、まずカメラは右側にパンしながら恐竜に近寄ろうと歩く人間の全身を映します。

そのまま、カットを切り替えることなくスムーズにカメラは上にパンをして、恐竜の全身を写し出します。

そのため、最初に恐竜の下に到着してから恐竜の全身が映るまでがノーカットとなります。また、見上げるシーンも画面の下半分に人間、上半分に恐竜という安定した構図に。

恐竜との出会いに興奮するアラン博士(演:サム・ニール)とエリー博士(演:ローラ・ダーン)、そして木の葉を食べる恐竜が一緒に映るカットも、人間が映っているのはあくまでも画面の下半分のみ。他に余計なものが映り込んでいないので、恐竜の大きさがしっかりと観客に伝わります。

アメリカンビスタを採用したことで、小さな人間と一緒に巨大な恐竜の全身をフレームに収めることができます。

もし横長のシネマスコープを採用すると、恐竜の全身を収めるのは難しくなってしまうだけではなく、足元にいる人間も画面から消えてしまいます。

アメリカンビスタによって撮影されていることで、画面内の情報を上下に動かし、さまざまな演出が可能になっています。例えば以下の場面は、ジュラシック・パーク内に進む時に天井の窓とフロントガラスからジュラシックパークの巨大な門を見上げるショット。

また、土砂降りと暗闇の中からティラノサウルスが車に襲いかかる場面では、車という閉鎖空間の中にいながら、恐竜が迫り来る恐怖を描いています。

Films&Stuffは「ジュラシック・パーク」では、閉じ込められた環境に恐竜が襲いかかるという閉所への恐怖がカギとなっていると主張しています。

劇中で恐竜によって襲われるのは、コンピュータールームや車、キッチンといった閉鎖された環境にいる時です。


同じスピルバーグ監督の「レイダース/失われた聖櫃(アーク)」だと、インディ・ジョーンズは四方を壁に囲まれた不利な状況でもムチやパンチで敵を倒していきますが……

パニックホラー映画である「ジュラシック・パーク」の場合、相手は巨大な恐竜なので、戦うことはほぼ不可能。常に恐竜から逃げたり隠れたりしなければなりません。

そんな恐竜から逃げるために重要なのが「恐竜は動きに反応する」という点。

大きな物音を立てないようにしながら、息を潜めてじっと隠れ、恐竜の襲撃をやり過ごさなければならないという戦略が、劇中の緊迫感を大きなものにします。


そうした緊迫した閉鎖環境の中で、恐竜を描くために行われているのが「フレーム内フレームに恐竜を描く」というもの。

例えば、キッチンに逃げ込んだ子どもたちを追い詰めるヴェロキラプトルのシーン。ヴェロキラプトルの全身ではなく、キッチンの入り口にある丸い窓からのぞく顔と、鼻息で曇る様子を映します。

さらに、キッチンにある台の下の隙間から、鋭いかぎ爪のついた足が映ります。

また、天井のダクトから逃げるシーンで、ヴェロキラプトルの全身はダクトの枠内に映ります。

つまり、画面のフレーム内に直接恐竜を映すよりも、画面の中の窓や隙間などから恐竜を間接的に映すことで、恐竜の巨大さや迫り来る恐怖を描いているというわけです。

さらに、フレーム内フレームは、撮影技術としても重要な意味合いを持ちます。「ジュラシック・パーク」では恐竜の多くがアニマトロニクスを用いて撮影されています。以下の場面では、車の天井に映っているティラノサウルスはアニマトロニクスを使って撮影されています。

しかし、フロントグラスを通して映るティラノサウルスはCGで作られたもの。アニマトロニクスとCGをスムーズにつなげることで、恐竜の存在感をよりリアルなものとしています。

「脅威となる恐竜を直接描写しない」という方法は、他にも壁に恐竜の影を投影して存在を強調したり……

ティラノサウルスが近づく様子を水の振動だけで表現するといった方法も使われています。

また、「動き」が「ジュラシック・パーク」の中で重要な演出要素として採用されている例として、Films&Stuffは人間たちの上下の動きをあげています。例えば人間たちが高いところから下降する時は「これから危険なことが起こる」ことを暗示していて……

逆に高いところに登っていく時は「安全な場所に向かう」ことをイメージしているそうです。

Films&Stuffは、「ジュラシック・ワールド」や「ジュラシック・ワールド/炎の王国」では、恐竜が人間に襲いかかる場面が、群衆が逃げ惑ったり恐竜が猛スピードで人間に襲いかかったりするなど、非常に激しい動きのあるシーンとして描写されていると指摘。


しかし、「ジュラシック・パーク」では、動きと閉鎖環境を軸にした演出によって、動かないことで緊迫した場面を見事に描いています。「ジュラシック・パーク」は見事な演出効果と素晴らしい演技、そして驚くほどシャープな脚本によってすばらしい作品となっているとFilms&Stuffは主張しました。

Photo by Will Fisher


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