3Dプリンターで「人工サンゴ」を作り出してサンゴ礁を保全する試みが進行中

3Dプリンターで「人工サンゴ」を作り出してサンゴ礁を保全する試みが進行中

サンゴは海中にサンゴ礁を形成して、さまざまな生物のすみかとなったりダイビングスポットになったりしていますが、近年ではサンゴ礁の世界的な減少が大きな問題になっています。そんなサンゴ礁が作り出す環境を保全するために、「3Dプリンターで人工サンゴを作り出して、海中に人工のサンゴ礁を作る」という試みが行われています。

A new dimension to marine restoration: 3D printing coral reefs
https://news.mongabay.com/wildtech/2018/08/a-new-dimension-to-marine-restoration-3d-printing-coral-reefs/

海水温の上昇や塩分濃度の変化などによるサンゴ礁の白化現象は世界中で観測されており、サンゴ礁の減少速度は「これまで以上」「危機的なペース」だといわれています。このままサンゴ礁の減少が進行してしまうと、自然がサンゴ礁を回復する速度を上回って、やがてサンゴ礁は消滅してしまうのではないかとも懸念されているとのこと。

サンゴ礁の白化現象が世界中の海でまん延、「もう元には戻せない」という専門家も

そんな中で2018年8月、きれいなサンゴ礁で有名なインド洋に浮かぶ島国であるモルディブのリゾート地であるサマー・アイランド・モルディブの海中に、3Dプリンターで作られたセラミックス製の人工サンゴが設置されました。人工サンゴを設置したのはオーストラリアの非営利企業であるリーフ・デザイン・ラボという会社で、モーターボートにのせられた人工サンゴのブロックはダイバーによって海底へと運ばれ、海底で手作業によって組み立てられたとのこと。

リーフ・デザイン・ラボの創業者であるアレックス・ゴード氏は、さまざまな形の物体を簡単に作り出せる3Dプリンターの可能性に着目し、サンゴ礁を保全するために3Dプリンターを活用することを考えました。「私はリーフ・デザイン・ラボを海洋研究をサポートするために立ち上げました。セラミックはサンゴ養殖の土台としても最適な素材であり、非常に注目しています」とゴード氏は語っています。

実際にリーフ・デザイン・ラボがサマー・アイランド・モルディブの海中に3Dプリンター製の人工サンゴを設置した様子は、以下のムービーで確認できます。

World's Largest 3-D printed Reef installed at Summer Island Maldives

サマー・アイランド・モルディブは非常にきれいな海を持っているリゾート地です。

砂浜に寄せた小さなモーターボートに、リーフ・デザイン・ラボが作った人工サンゴのブロックを手作業で積み込んでいきます。

信じられないほど青い海を、人工サンゴを積んだモーターボードが進み……

沖合の海底7m地点に人工サンゴを投下していきます。

まずはダイバーたちが素潜りで次々と人工サンゴのパーツを沈めていき……

全部で220個ものパーツを海中に沈めた後、酸素ボンベを背負ったダイバーが人工サンゴを組み立てていきました。

リーフ・デザイン・ラボの人工サンゴを組み立てるために特殊な機械は必要なく、手作業で組み立てることが可能。

次第にサンゴ礁らしきものができあがっていき……

およそ2時間ほどの作業で、人工のサンゴ礁が完成しました。

その後、生きたサンゴを人工サンゴに固定し、人工サンゴを養殖の土台として利用。

設置後すぐに人工サンゴの周囲には魚などの生物が集まってきたそうです。

リーフ・デザイン・ラボがモルディブ沖に設置した人工サンゴは高さ約2.5mで、4m四方の大きさを持っているとのこと。3Dプリンターで中空のセラミック製パーツを作りだし、安定性を高めるために中空の内部にコンクリートが流し込まれています。

モルディブでの設置以前にも、リーフ・デザイン・ラボは人工サンゴを海中に設置する試みを行ってきました。その時に設置した人工サンゴには設置後わずか数カ月で海藻が繁殖し、多くの生物が人工サンゴをすみかや隠れ家として利用し始めたそうです。

人工サンゴの設置は今すぐにサンゴ礁の減少を食い止めたり、減少したサンゴを復活させるための強力な手段にはなりません。しかし、海流が弱くほかの生物にも見つかりにくい隠れ家を提供することができ、サンゴ礁がなくなって困る生物たちがシェルターとして利用することができます。

ゴード氏は3Dプリンターで人工サンゴを作るにあたり、生物にとって悪影響が出る素材を使わないようにしたり、構造それ自体が海の環境に悪影響を与えないようにしたり気を配っています。「3Dプリンター製の人工サンゴが、サンゴ礁の減少を食い止める画期的な手段のように考える人々もいます。しかし、実際には人工サンゴがサンゴ礁の減少を食い止めるのは難しく、せいぜい小規模なサンゴの養殖場として利用できる程度です」と、ゴード氏は述べました。

人工サンゴ礁は、サンゴ礁の保全に取り組む研究者らが、サンゴの養殖法を研究するために利用可能だとゴード氏は考えています。3Dプリンターでさまざまな形状の人工サンゴを作ることで、どのような形状がもっともサンゴ養殖の土台に適しているのかといった研究が可能。

世界中のサンゴ礁は危機的な状況にありますが、ゴード氏は「私はサンゴの研究がどれだけ進んでいるのか、という点に注目しています。研究者の中にはサンゴの養殖法を研究する人のほか、海中の温度が高くなっても耐えられるサンゴについて調査し、どの遺伝子が耐熱性を有するのかについて特定しようとしている人もいます」として、「多くの人々が協力すればサンゴ礁を復活させられるという希望を持っている」と語りました。


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