Screenshot: Google I/O

5月15日に、Googleは開発者向け発表会「Google I/O」にて、新たな生成AIによるクリエイティブツールを発表しました。

今回発表されたのは、画像生成AI「Imagen 3」、音楽生成AI「Music AI Sandbox」、そして動画生成AI「Veo」の3つです。今回の発表会は、“開発者向け”であり、さらにほとんどがGoogleのGemini AIに関連するテクノロジーだったこともあり、少し難しい印象もありました。

そのなかで、これらのクリエイティブツールの発表は、クリエイターに対するリスペクトを感じられるようなものになっていたのが印象的でした。

クリエイターへのインタビュー

たとえば、動画生成AI「Veo」のデモ映像であるこちらの動画。映像作家のドナルド・グローヴァーが実際にVeoに触れて、そしてどうだったかをインタビューというかたちで見ることができます。

こうした発表会では、そのテクノロジーがいかに新しく、どれほど強化されたか、といった軸でアピールするのは当然ですし、今回もそうした側面はありました。ですが、デモではそれ以上に、実際に活躍するクリエイターが触れて、その様子をクリエイターの声で伝えられています。

“そのテクノロジーがどれだけすごいか”をスペックなどの軸ではなく、そのテクノロジーがクリエイターのためのツールであり、どのようにサポートできるかという点に重きを置いているように感じられる点が興味深く思えましたね。こうした姿勢には、Googleのクリエイターに対するリスペクトも感じられます。

クリエイターになりたい人へ向けたツールでもある

音楽生成AI「Music AI Sandbox」もクリエイターへのインタビュー動画がデモとして披露されました。

こちらは、ワイクリフ・ジョン、ジャスティン・トランター、マーク・ラヴィエの3人の異なるクリエイターへのインタビューでした。注目すべきは、3人がそれぞれ対照的なクリエイターである点です。

ワイクリフ・ジョンは非常に名の知れた、かつベテランといえるミュージシャン。ジャスティン・トランターは数々のポップソングを生み出した中堅のプロデューサーといえます。そしてマーク・ラヴィエは、YouTube動画をきっかけとして有名になった若いトラックメイカーです。

ジャンルやキャリアも違う対照的なクリエイター3人の声として共通していたのは、自らの頭のなかにある音を具現化するサポートとして、あるいはそこに違うアイデアを生み出すサポートとしてこのツールが有用であるという点でした。それぞれが持つ創造性をかたちにするものとしてこのツールを捉えている、ということですね。

こうした異なるジャンルやキャリアを持ったクリエイターたちの声は、さまざまなバックグラウンドを持った人たちの声として届きます。

それは、このテクノロジーがクリエイターへ向けたツールである、と同時に、これからクリエイターになろうとしている人へ向けたツールでもあるように感じられるものでした。クリエイターになりたいと願う人の頭のなかで生まれたイメージや世界観をかたちにするツールになる、そんな風にも捉えられるというわけです。

クリエイターの創造性を守るというアプローチも

最後に、クリエイターを守るテクノロジーとして電子ウォーターマーク(透かし)「SynthID」の強化もGoogleは強調していました。ウォーターマークといっても画像だけでなく、音楽、動画にもこれらを付与できることを発表しています。

こうしたテクノロジーも積極的に強化していくことで、Googleがこれまで以上にクリエイターの創造性を守るだけでなく、それらに対してのリスペクトを示しているともいえます。

たとえば、iPadのCM動画でAppleが公式に謝罪する事態にまでなったことも記憶に新しいですが、そうした状況のなかで、Googleが新たな生成AIによるクリエイティブツールを発表する際に、クリエイターに寄り添い、リスペクトを感じさせるようなスタンスを示したのは、シンプルに好感を持てました。そして、これらがこの先、アートや音楽、映像作品にどんな影響を与えるか興味をもたせるには十分だと感じました。

Source: Google I/O, YouTube