いま海外で起きていること、世界で話題になっていること。ビジネスパーソンとして知っておいた方がいいけれど、なかなか毎日ウォッチすることは難しい…。そんな世界のニュースを、コメディアンやコメンテーターなどマルチに活躍しているパトリック・ハーラン(パックン)さんと、元外交官(現在、三菱総合研究所主席研究員)の中川浩一さんが、「これだけは知っておこう」と厳選して対談形式でわかりやすくお伝えします。

【前編を読む】エネルギーか人権か、アメリカとサウジの外交駆け引きを日本が傍観できない理由

中川 ロシアによるウクライナ侵攻から2カ月以上が経過し、世界では、原油や食料の価格高騰の問題が起きています。

4月20日付の米外交誌「フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)」オンライン版に、ロシアのウクライナ戦争が長期化するだろうという旨の寄稿が載っていました。4月14日には、アメリカのサリバン大統領補佐官も、ロシア・ウクライナの問題解決には最低、数カ月はかかる旨を述べました。

ロシアとウクライナ両方の立場から、戦争を早く終わらせるメリットとデメリットを比較してみましょう。プーチン大統領からすれば、この戦争は勝ち切らないといけないし、ゼレンスキー大統領からすれば、やはり祖国を、民主主義を守らなくちゃいけないという譲れない一線があります。一方で、アメリカも世界も、いつまでウクライナ支援を継続できるのか。日本もそうですが、特に民主主義陣営の国の指導者は、国民に対してその必要性をもっと説得力をもって説明する必要があると思います。

パックン 僕もこの戦争が長期化することはほとんど避けられないと思うんですね。いま停戦したって、どこに国境線を引くのか、お互いに納得できるところは全くないと思うんですよ。そして、プロパガンダのせいでもあるけれど、双方の国民の中にまだ十分な反戦感情が高まっていないと感じます。負けたと思っていないし、思いたくない。どちらもがね。

パックンさん

戦争が長期化すればするほど、ロシアはつらい立場になると思うんですよ。ウクライナ人にとって「負ける」というのは国を失うということです。ということは、戦う動機、戦意がロシアよりもずっと高いはずです。しかも西洋がそろって支持して、「兆」単位の支援金や武器供与を行っているから、専門用語でいうと「エスカレーション・ドーミナンス(Escalation dominance)」になります。

「エスカレーション」とは、戦争の度合いを上げることで、「ドーミナンス」というのは優位性。だから、エスカレーションの優位性はいま西洋側、つまりウクライナ側にあるんですよ。なぜかというと、ロシアという1カ国に比べて、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、日本など、ウクライナ側に並んでいる国々の資金力の方が圧倒的に高いわけですね。そして、どんどんウクライナ側に新しい技術の武器を投入することができる。一方、ロシアは制裁もあって経済が疲弊し始めているし、新しい武器がつくれない。なぜなら、半導体とかチップはアメリカとか、日本のものを使ったりしているんですよ。それをロシアは輸入できないから戦車製造工場が止まっているのではないか、という報道もありました。

ということは戦争が長期化すると、軍事力の面でもどんどんその格差が広がるはずです。これがエスカレーション・ドーミナンスです。

ウクライナの経済はもちろん大変ですよ。飢餓のおそれもあるし、国民が難民になってどんどん国外に出ていくというつらさは間違いなくあります。難民の生活も長引けば長引くほど、ホスト国のストレスも高まり、ホスト国内の反難民感情が高まる恐れもあります。その怖さも危険性もあるけれど、「自分の国を失いたくない」というモチベーションが、ウクライナを乗っ取りたいロシアのモチベーションに比べてはるかに高いはずなんです。

ウクライナのゼレンスキー大統領=2022年4月23日、キーウ、朝日新聞社

今の段階で、ウクライナ国内で戦っているロシア兵とウクライナ兵の数はほぼ同じといわれています。戦車の数もほぼ同じ。これが少しずつウクライナの方が増えれば、ロシアにとっては不利な立場になって、国民の支持も失って、徴兵制度とか、軍隊に入れる年齢制限を少し下げるとか、そういうことをやりだすと、ロシア国民も反発するはずです。

どんどん厳しい状況に置かれて、そこでようやく「今の国境線でもいい、(ウクライナ東部の)ドンバス地方は以前の”独立国”の辺りでいいから停戦しよう」となるんだと思います。長期化すればロシア国民の感情が動くかもしれないけれど、今のところはお互いが「勝てる」と思っているからまだまだ停戦しないと思うんですよね。

ロシアに「ダメ」と言えない中東各国の微妙な立ち位置

中川 前編でも触れましたが、私は4月に中東に出張してきました。私は、アラビア語専門の外交官だったので、現地のアラビア語のテレビ放送、新聞も見てきましたが、日本の報道とはだいぶ違って、ロシアの報道が中心なんです。私の旧知のアメリカの高官も、中東におけるロシア寄りの報道に非常に困っているって言っていました。

ゼレンスキー大統領の話はあまり出てきません。今回のロシア・ウクライナ問題が、中東から見ると、ちょっと厳しい言い方ですが、「なぜウクライナという民主主義国には世界は手厚いんだろう」というのがあるんです。ある意味「あれはもう欧州の内戦だ」というような表現をしている人もいました。

要は、発展した欧州域内の、しかも民主主義国だからアメリカは手厚いし、欧州も手厚い。今この瞬間は、ウクライナの難民・避難民の問題で世界は大騒ぎだけれど、それに対して中東のイラクやパレスチナ、アフガニスタン、シリア、イエメンはどうなんだ、と。

難民問題は、中東にたくさんあるんです。イエメンなんて「史上最大の人道危機」といわれますが、残念ながら日本でほとんど報じられることがありません。昨年8月起きたアフガニスタンでのタリバンによる政権奪取で、人権弾圧はすごいですが、残念ながら、今のウクライナほどの報道はありません。シリアもそうですよね。だから、すごく世界は不公平だという見方が多かったです。それから、中東にはやはりイラク戦争の禍根があります。アメリカのやってきたことや、イギリスの「二枚舌外交」もありました。そのことで、欧米に対するもともとの不信感があります。

中川浩一さん

いま、アメリカが脱中東を果たそうとする中で、中東各国は自分たちで立ち位置を考えないといけないと思うんですよね。これまでは特に軍事面でアメリカに頼ってきたけれど、それがなくなるわけです。ロシアも中東にはけっこう食い込んでいて、ウクライナ侵攻でも中東各国はただちにロシアがダメだとは言えないんです。一方で、アメリカには特に軍事面でまだまだ頼りたいところもある。中東各国もスタンス取りに苦しんでいるなという印象を受けました。

パックン ウクライナに対してヨーロッパ各国がこんなに手厚くなるのは、自分と同じ肌色、自分と同じ文化の国だからだと思います。ヨーロッパが親近感を感じ、アフガニスタン、シリア、イラクなどの時と全く違う反応するという、その悲しい事実、現実があります。中東の皆さんが「ええ!? 対応が違うじゃん」「ずるい」「差別的だ」とか怒って当たり前だと思うんですよ。

でも、だからといって中東各国がロシアのフェイクニュース、プロパガンダをそのまま垂れ流しにするのは大丈夫かな、と心配になります。ゼレンスキー大統領があまり登場しないのは大丈夫なのかなと。ゼレンスキー大統領はたぶん中国のテレビにもあまり登場しないと思うんですが、世界の先進国の仲間入りをしたいんだったら、同じ情報を共有しなきゃいけないんです。

欧米はなぜウクライナに加担しているのかというと、それは僕がさっき言った、「目・肌・髪の色」が一緒だから、だけじゃないんですよ。主権国家が隣の国から侵略されたら、どんな人種であっても、それは反発すべきなんです。その情報が中東の国民に伝わっていないと、この先、先進国の皆さんと話が合わないんです。なぜ放送しないのか。放送すれば、「民主主義」と「独裁主義」「覇権主義」に、世界が二分割にされる可能性があるからです。独裁政権に口出しをしないロシアと付き合った方が、都合が良いからじゃないかな、と推測しますが、ぜひ中川さんのご意見を聞きたいです。

カイロのタハリール広場で、ムバラク大統領の退陣後、軍の装甲車に上がって喜び合う市民たち=2011年2月、エジプト・カイロ、朝日新聞社

中川 そうでしょうね。中東の中でも特にサウジアラビアはじめ湾岸諸国は、11年前の「アラブの春」(アラブの民主化運動)を経験して、指導者は民主化の「脅威」にさらされました。これまで政治的には独裁体制が当たり前だった国々の指導者が、その地位を危うくされ、エジプトとリビア、イエメンなどいくつかの国では実際に指導者が交代しました。しかし、そこからまた、指導者側は盛り返し、今、中東の民主主義は、結局ほぼ潰れました。

エジプトも、「アラブの春」の発端になったチュニジアも、民主主義とは逆行する動きを見せています。そして、今、彼らの理想の国家は中国なんです。中国モデルを見習いたいんですよ。なぜかというと、中国は、習近平体制を維持しながら、経済も発展しているでしょう。湾岸諸国にしてみれば、言論の自由を封じながら経済を発展させ、脱炭素は実現するというモデルなんです。この中国モデルを見習おうとする湾岸諸国を、アメリカは本当に苦々しく思っています。だからといってアメリカが再び中東に関与するのかというジレンマが、いつも難しいんです。

パックン 難しいですよ。日本にとっても難しいですよ。

中川 ではアメリカが中東から中国にシフトして、ロシアのウクライナ侵攻が続く今は欧州に行って、再び原油確保のために中東に戻っていく。ここが、世界の動きの難しいところです。でも日本にとって中東がなぜここまで重要かといえば、やはりエネルギーを、原油を中東にめちゃくちゃ頼っているからです。

中東に頼りすぎはいけないということで日本政府は調達先を多角化してきました。その結果が、3.6%(財務省貿易統計、2021年速報値)という今のロシアからの原油割合です。そのため、日本はロシアのウクライナ侵攻後も、ロシアのサハリン油田の権益を手放そうとはしません。

岸田首相は3月末、サハリン油田からは「撤退しない方針だ」と表明。萩生田光一経済産業相も、「資源のない我が国にとって国民生活や経済を守っていかなきゃならない」と述べました。ちょっと歯切れが悪いじゃないですか。日本人はどこまで、ロシアの3.6%を維持することに納得しているのでしょうか。(5月9日、岸田首相は、ロシア産原油の原則輸入禁止措置をとる旨を表明。ただし時期など詳細は明らかにせず、サハリン油田からは撤退しない方針を改めて示しました)

今回のウクライナ侵攻で、日本人は自分の国がいかに「エネルギー貧国」か、自覚しなければいけません。日本のエネルギー自給率は10%ちょっとです。日本はロシアに経済制裁を行っていますが、エネルギーではそれはできないのです。だからそこ、ここは冷静に考えないといけません。侵略行為をしたロシアがもちろん悪いんですよ。それはそうですが、一方で、じゃあ我々日本人の生活はどうなんだという現実も直視する必要があります。

日本は、エネルギー自給できるアメリカとは違い、全部が100対ゼロにならない。どうしても、歯切れの悪い、グレーゾーンが出てきます。

民主化の圧力をかけるアメリカの狙い

パックン どんな政治理念も、自分が現実的だと思っているんです。だから僕は、リアリズムや現実主義者という言い方がちょっと苦手なんですよ。現実主義的に考えると、実力で自国を守らなきゃいけません。実力の中で軍事力ほど強いものはないんです。その上、場合によってはいわゆる道徳やモラル、人権を二の次にして、自国を守るための軍事同盟や安全保障上の構造、エネルギー確保を優先しなければいけない。その辺は大変難しいです。でも現実主義としては、全部を道徳優先では考えられません。なぜなら、こちらが道徳的に行動すると、非道徳的に考えて動く国には負けてしまう、というのが現実主義の考え方だと思うんです。

でも僕はやっぱり共和制リベラリズムの主張も忘れないでいきたいと思います。文化や価値観が似ている共和制の国家同士、つまり、「民主主義国家同士は戦わない」という歴史に基づく研究結果は、考えてみれば分かるんですよね。国民が戦いたくないから、侵略戦争を起こそうとする指導者を引き下ろすんです。また、選挙という手段をもって政権交代もできる国は戦わないで問題解決することに慣れているんですね。

ですから僕は、中東諸国を含めて他国に民主主義路線を走るように外から圧力をかけるのは、こちらの傲慢な、道徳の教え込みではない、と思うんですよ。押さえつけ、ではないと思うんです。結局、自分の安全保障にもつながると思うんです。

今、サウジアラビアの実権を握るムハンマド皇太子は改革を進めているらしいですが、なるべくサウジが民主主義の方向にも動いてくれた方が、同盟関係も作りやすいし、友好関係も保ちやすい。お互いの安全保障につながると思うんですよね。だからロシアに対して口出ししちゃダメだと思わないです。だってロシアがより民主主義路線を走った方がロシア国民のためにも、こっちのためにもなるということなんです。

個人ID番号の発行を求めて並ぶウクライナからの難民=2022年3月26日、ポーランド南部クラクフ、朝日新聞社

中川 パックン、今の国連の動きを見ると、3月2日の総会決議で、ロシアを非難する国は141カ国に上ったんですが、ウクライナの近郊ブチャでの大虐殺が発覚した後の4月7日の、ロシアの人権理事理事国としての資格停止決議では、賛成国は93カ国に減ってしまいました。今回の中東の動きを見てもそうですが、今後、世界が二極化、あるいはさらに流動的になっていく気がしています。そんな中で、国連の動きは冷静に見る必要があります。ロシア支持、不支持のオセロゲームが、国連は明確じゃないですか。やはり多角的にものを見ないといけないと思うんですね。

日本では、国連決議の採決結果などはあまり大きく報じられていないですしね。日本人として、ロシア悪しで思考をストップするのではなく、もうちょっと情報をたくさん持って、日本人一人一人が判断することが大事だと思います。

それから日本にとって、世界の二極化は、本当は一番避けなくてはいけないことだと思うんです。強力な軍事力を持つアメリカと違い、日本は本来、敵をつくることはもっとも避けなければいけません。このウクライナ侵攻後の世界で、日本はどうやって生きていくのか元外交官として考えると、今こそ平和国家・日本として、「あの国は独裁国だから、向こう側ね」というのではだめだと思うんです。

できるだけ二極化しない努力をしないといけないと思うし、そのためには、日本人がこの機会に、世界は広くて、いろいろな見方があると知った上で、一人一人が自分で考えていくことが大事だと思います。それがメディアを動かすことにもなるし、メディアが動けば政府も動く。そういうことを特に中東に出張中のこの2週間で感じました。パックンはどうですか。

中国がロシア側に立ち続けるとは限らない

パックン なるほど。確かに単純化しすぎるのはアウトだと思うんですね。事実上、専制主義的な国家の方が多くて、地球上の民主主義国家は少数派ですから。民主主義国家の定義は何かといわれたら、アメリカのNGO「フリーダムハウス」の自由度と民主度で考えてもいいかもしれません。でも、僕は価値観の共有は大事だと思いますし、人権を重視した価値観の普及も、日本の大事な仕事かなと思うんです。

日本は、立場的に先進国の仲間入りを最初に果たしたアジアの国です。ですから、ほかの国々から尊敬される立場であって、その架け橋的存在になっていただきたいなと思うんですよ。

僕は別に、民主主義が唯一の制度だとは言い切りたくない。” Benevolent dictator” (ベネボレント・ディクテーター)、つまり「善意的な独裁主義」も、もしかしたら存在はしうるかなと思うんです。シンガポールはその歴史をたどってきたといわれますよね。国民のためになる独裁主義で、少しずつ民主主義にシフトをするっていう選択肢やパターンも考えられると思うんですね。それで、「まだシフトができていないから付き合わない」というのも非現実的で成り立たない。

貿易相手としても、温暖化対策などの国際問題の協力相手としても欠かせない国は、民主主義制度だけじゃなくて、いろんな制度の政権を持っている国もあるわけです。それでも付き合わなきゃいけない。それが「大人の判断」でもある。でもだからといって、その民主主義の方向に導く仕事を忘れてもならないと思うんですよね。

民主主義を超えるものがあればいいですよね。僕は正直言うと、中国の制度が必ずしも悪だと思っていませんでした。習近平政権が、ここまで独裁色が強くなるとアウトだと思いますが。本来は、優秀な人が共産党に入れて、地方政権は地元の皆さんも決められて、中央政権は共産党内からあちこちのポストで優秀な成績を残した人がどんどん勝ち残って、最後に残っている人だけが最高の実力を持つ。その人も任期が決まっていて独裁者にならない。一党独裁制ではあるけれど、独裁者ではなくて、その政党の中で実力主義がちゃんと作用していると10年ぐらい前までは思っていましたよ。

中国の習近平国家主席=2019年12月20日、マカオ、朝日新聞社

この制度は絶対的な悪だと言いきれないんじゃないかなと思ってたんですが、その後にやっぱり新疆ウイグル自治区問題もあり、内政では政敵一掃作戦が成功して一極集中で、今、習近平以外に実力があまり分散されておらず、抑制機能もない。10年前に比べてはるかに独裁色の強い国家になっています。

日本も含めた民主主義国家が中国との向き合い方で失敗したなと思うんですよ。経済的な発展をなし遂げたら、民主主義側に必然的にシフトすると思っていた、その考え方が甘すぎたなと思うんです。

だからといって、付き合わないわけでもないんですが、友好関係を保つんだったら、自分の国民、そして国際社会に対する最低の規範(norm)を守ってほしいということは言い続けてもいいんじゃないかなと思うんですよ。

中川 ウクライナ侵攻が長期化しつつある中で、中国も苦しい立場ですよね。オリンピック開会式では、習主席はプ―チン大統領と首脳会談もしました。パックンは、今、中国の置かれた立場をどう見ていますか。どこまでロシアに寄り添うのか、難しいですね。

パックン 中国も最近、中東のメディアと一緒で、国内ではロシア側の報道しか流さない。ロシアの見解をそのまま繰り返しているらしいですね。だから中国国民もロシア国民同様、それにだまされ続けるなら、ロシア支持は続けられるだろうと思うんです。核兵器を使うなどというレッドライン(一線)を超えない限りは。でも僕は、中国がロシア側にずっと立つかは疑問だと思うんです。

武器供与とかをやりすぎると「反ロ」が「反中」になっちゃうしね。だから微妙な立場を保つんですよ。中国兵を派遣するとか、そういうことは一切ないと思うんです。そんなことをやったら、まさに世界戦争に転じることになってしまいます。でもロシアを突き放すかといったらそうでもないですね。

中国の立場は本当に微妙です。だって考えてみれば、今のロシアが何をやったかというと、ウクライナの地方の独立を認めて、それを守りに入ったんです。中国が一番嫌がるパターンですよ。中国の一部だと主張してきた台湾の「独立」を守りに外国の軍隊が派遣されたら、それは中国にとって最も都合の悪い展開ですよね。だから中国もたぶん、ウクライナ侵攻の長期化は嫌がると思うんです。

インドのモディ首相=2022年3月19日、ニューデリー、朝日新聞社

二極化する世界の鍵はインド?

中川 さきほど指摘した世界の二極化の話で、鍵となる国はインドだと思うんですよね。岸田総理も、3月にインドを訪問しました。日本、米国、豪州、インドの連携枠組み「QUAD(クアッド)」も結成しています。インドは非同盟中立国家のリーダーですが、今のところ、ロシアに相当配慮しています。軍事面でも経済面でもロシアとの関係が深いからです。バイデン政権も、インドの説得にものすごく苦労しているみたいですね。

パックン おっしゃるとおり、インドは鍵を握りますね。インドは、ソ連時代は中立国の立場を貫こうと必死に頑張ったんですよ。今回のウクライナ侵攻後も、たぶん同じように、どっちつかずで、アメリカなどあちこちから「おいしい」オファーを快諾しながら、ロシアからも安い石油を買い続けるんじゃないでしょうか。

インドにとって、QUADはあくまで中国牽制のためのものであって、ロシア牽制のものじゃないんです。NATO(北大西洋条約機構)など西洋側の軍事作戦を応援するためのものではない。だから四つの国の国益が共通しないところは、QUADがあまり動けないと思います。インドは、自分の国益を犠牲にしてまで日本とかイギリス、アメリカのために動きたくないと思うんですよ、でも僕は、インドには、民主主義世界に協調し、歩調を合わせる力を見せてほしいなあと思うんですよ。

中川 5月には、バイデン大統領の訪日や、QUAD首脳会合の開催もあります。このあたりも触れてきたいと思います。読者の皆さま、パックン、これからもよろしくお願いします。

 注)中川浩一さんとパックンの対談は4月28日にオンラインで実施しました。対談時の写真はいずれも上溝恭香撮影。