シャビに憧れた男の挑戦…セリエAの新たなサプライズ、ファビアンはスペインを担う存在へ

シャビに憧れた男の挑戦…セリエAの新たなサプライズ、ファビアンはスペインを担う存在へ

ナポリのアウレリオ・デ・ラウレンティス会長によれば、前主将のマレク・ハムシクが2月に大連一方に移籍したのは決して金銭だけの問題ではなく、ファビアン・ルイスの存在が大いに関係していたとのことだ。デ・ラウレンティスは、昨夏ハムシクの中国行きを阻んだ過去がある。

映画プロデューサーでもあるデ・ラウレンティスは、「カルロ・アンチェロッティがクラブにやってきた時、私はすべての選手を監督に見て欲しいと思ったのさ」と説明する。「そして、ファビアン・ルイスがやってきたんだ……」

「賢いハムシクであれば、2つのポジションに4人の選手がいること、その1人がファビアン・ルイスであることを考慮すれば、『退団して、中国で多額の年金を手にするとクラブに切り出せる』と考えるだろうね」

公正な見方をするために付け加えると、ナポリもスタディオ・サン・パオロで素晴らしいシーズンを過ごすファビアンの存在によって、余剰戦力となったハムシクの売却で1300万ユーロ(約16億円)の利益を手にしている。

■シャビに憧れた少年

Xavi Barcelona Real Madrid 2010

実際のところ、ベティスのアカデミーが生み出したファビアンは2018-19シーズンのセリエAで起きたサプライズの1つだ。とはいえ、アンチェロッティはファビアンの優れたプレーに決して驚いてはいない。彼が素晴らしい選手であることは、息子のダヴィデ・アンチェロッティを通じてよく知っていたからだ。

セビージャ出身の婚約者がいるダヴィデは、彼女の元を訪れたときにベティスの試合を観戦する機会を得た。ファビアンは、「そのときにダヴィデが僕のプレーを見たんだ」と説明する。「婚約者に会った時にはありがとうと伝えたよ!」ナポリは今、転機となったこの偶然の出来事に感謝していることだろう。

中盤であればどこでもプレー可能な彼はとてつもないテクニックと戦術的インテリジェンスの高さを兼ね備え、これまで一貫して強い印象を残している。だが、シャビ・エルナンデスへ憧れ、手本としてきた23歳にすれば当然のことなのかもしれない。

「シャビのおかげでフットボールに恋したよ。バルセロナとスペイン代表の大黒柱として何年もプレーした彼の後に続くのが、僕の夢さ」

確かに、ファビアンはラ・ロハ(スペイン代表の愛称)でレギュラーを掴むだけの才能を備えている。本当であれば3月に行なわれたノルウェーとマルタとの代表戦で国際デビューを果たすはずだったが、豚インフルエンザに罹患し、やむなく代表への合流を見合わせた。代表離脱にひどく落ち込んだことは想像に難くないが、将来の代表招集が約束されている事実に自身への慰めを見出すことはできる。

実際、スペイン代表を率いるルイス・エンリケはファビアンの崇拝者の1人である。「恐ろしいほどのパンチ力があるね。セリエAのような厳しいリーグに立ち向かう度胸は以前から備えていたけど、ナポリでも素晴らしい成長を遂げている」

確かにベティスを退団することはファビアンにとって簡単なことではなかった。彼にとって本当の家族のような存在だったのだ。セビージャから約30kmの距離にあるロス・パラシオス・イ・ビジャフランカで生まれたファビアンは、まだ少年だった頃にベティスへ入団した。

しかし当時の状況は厳しく、両親は毎日練習のために送り迎えをし続けるのは経済的に大きな負担であることをクラブに伝えた。するとセビージャがこの若者の獲得に関心を示した。だが、ベティスのユースチームの責任者であったマヌエル・カスターニョはファビアンが最も将来が約束された若手選手の1人であるという確信を持っていた。カスターニョは母親のチャリ・ペーニャに清掃員としての仕事を与える算段をつけ、結果的にその仕事は昨夏に息子がナポリに移籍するまで続くことになった。

また、ファビアンは親しい友人たちに退団直前まで移籍の件を伝えられなかったことにバツの悪い思いを感じていたようだ。しかし、そこまで気を揉む必要はないだろう。優れたパフォーマンスに多くのクラブが魅了されたことでベティスの退団が避けられないことがもはや誰の目にも明らかになった時、彼はクラブと新契約を結び、違約金を3000万ユーロ(約38億円)にまで引き上げた。ファビアンはベニト・ビジャマリンで喝采を浴びる存在なのだ。

ベティスのサポーターが、レアル・マドリーへの移籍を望んだダニ・セバージョスが2017年に同様の手続きを拒んだことを未だに引きずっていることを考えれば、彼の行為はクラブへの最後の貢献としてパーフェクトなものである。

もちろん、移籍金を支払ったナポリ側もその金額に満足しているだろう。シーズン序盤こそ負傷によってスロースタートを切ったとはいえ、イタリアの地ですぐに本領を発揮した。ラウール・アルビオルとホセ・カジェホンが、彼がいち早くチームに溶け込めるように手助けし、今や“兄弟”と呼ぶ仲のドリース・メルテンスともすぐに友情を築いた。

■熱狂のサン・パオロへ

2019-04-15-napoli

少年時代のアイドルであるシャビのように、ファビアンは素晴らしいテクニックがある。今季のセリエAでのパス成功率は「89.26%」だ。だが、彼はこのバルセロナとスペインのレジェンドとは大きく異なる特徴を持つ。ファビアンはセンターでのプレーを好むものの、このところ配置される機会の多い左サイドでも同じ様に快適にプレーができるのだ。とりわけ、素早い脚さばきと優れたドリブルスキルがそれを可能にしているといえる。

フィニッシュの精度が課題であることを認識しているが、それでも今シーズンは3得点2アシストを記録しており、49回のチャンスメイクは今シーズンのセリエAのMFで10位に位置する記録である。これは、1億ユーロ(約127億円)の値がつくラツィオのスター、セルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチよりもひとつ多い記録であり、さらに出場試合数はこのセルビア人より7つも少ない。

だが彼の最大の長所は、フットボールの才能ではなく、最大限の力でプレーに取り組もうとするその姿勢にある。2016-17シーズンの後半にエルチェへローンで出された時も決して腐ることなく、リーガ2部で18試合に出場して向上に努め続けた。

その結果、まるで別人のような成長を見せてベティスに復帰。キケ・セティエン監督から信頼を得るに至ったのである。セティエンは当初ファビアンが時折集中力を欠くことにフラストレーションを感じていたが、秘められた大きなポテンシャルを疑うことはなく、それを解き放つことが自身の使命だと感じていた。

『Amazon』が制作した「シックス・ドリームス」というドキュメンタリーの中で、セティエンはこの若者に向かって「お前はとても良い選手だが、ボールコントロールでミスを犯してはいけない。ベティスがもしそのミスのせいで私をクビにするようなことになったら、お前を殺してやる!」と言い放っている。「しかしだ、私はお前がトップのクラブでプレーする姿を何年もの間TVで観ることになるだろうが、もし同じ様なミスをするのを見たら、今度は私が自分自身を許すことができないだろう」

セティエンの心配には及ばない。23歳になったファビアンは今でもおかしなミスをすることはあるが、その回数は極めて少なくなった。もうセティエンがファビアンを脅迫することもないだろう。それだけ完成された選手へと近づいている。

セリエA制覇が絶望的になった今、ナポリに残されたタイトルはヨーロッパリーグのみだ。だが、それも準々決勝ファーストレグは0-2でアーセナルに完敗。厳しい状況に追い込まれた。

だが、次の舞台はスタディオ・サン・パオロ。イタリアでも屈指の熱さを誇る要塞だ。老朽化の進むスタンドから声援を送るサポーターの熱量は凄まじい。それに呼応するように、今季のナポリはホーム戦21試合で15勝5分1敗。あのリヴァプールをも1-0で撃破している。

ノースロンドンの雄を迎えるセカンドレグ。サン・パオロは凄まじい熱狂に包まれるはずだ。そしてピッチの中心には、進化を続けるファビアンの姿があることは間違いない。

文=マーク・ドイル/Mark Doyle

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