メジャー無冠最強と呼ばれ続けたザンダー・シャウフェレが全米プロゴルフ選手権で遂に戴冠。初日からトップを走り最終日はブライソン・デシャンボーの猛烈な追い上げをかわし18番のバーディで1打差の勝利をもぎ取った。これまでメジャーで3度準優勝、トップ10入り12回の男が通算21アンダーのメジャー新記録で特大のワナメーカートロフィーを掲げた。

プロなら誰もが夢見る最終ホールバーディで優勝を決めるシーン。シャウフェレは2メートル強を沈め夢に見たシーンを具現化。先にホールアウトしていたデシャンボーを1ストロークの僅差で下しメジャー初優勝を達成した。

「(ウィニングパットを)沈めた瞬間は少し感情的になってしまった」と緊張が解け一気に笑顔が弾けたシャウフェレ。これまで何度も苦い思いをしてきたメジャーで重圧に耐えた彼は清々しい表情を見せた。

ギャラリーの大歓声に包まれ18番グリーンからアテスト場に向かう途中、妻と抱き合い、兄弟と抱き合い、プレーオフに備え練習場で体を温めていたデシャンボーと抱き合い、地元ケンタッキーでもっとも声援を集めたジャスティン・トーマスと抱き合った。

そのシーンはいかに多くの人がシャウフェレのメジャー勝利を待っていたかを物語るようだった。

「父は今ハワイにいて電話をしましたが“泣いちゃうから切る”といってすぐに電話を切っちゃいました(笑)」

シャウフェレにとってゴルフの師匠である父ステンファンさんは、陸上の10種競技の五輪候補だったが直前のアクシデントで出場は叶わなかった。

その代り息子が東京オリンピックで金メダルを獲得した。そのときも涙が止まらなかった泣き虫パパに普段そっけない息子もやはりメジャーVの報告は一番にしたかったようだ。

2年ぶりツアー通算8勝目は待ちに待ったメジャータイトル。しかも通算21アンダーはメジャー新記録。プロに「賞金王とメジャー優勝、どちらが欲しい?」と聞くと皆「メジャー」と口を揃える。

30歳の誕生日前日(昨年の10月24日)「まだ30代になりたくない」という彼に東京で彼にインタビューしたときも「とにかくメジャーに勝ちたい」と固い決意を口にしていた

幾度となく挑み勝利の壁に跳ね返されてきただけに重圧に耐え掴んだ栄冠は格別だ。

東京五輪では最終ホールで残り98ヤードを寄せ1パットで金メダルを手繰り寄せた。今回も18番で2オンを逃し3打目を寄せてバーディを獲らなければ勝てない場面で2メートル強に乗せ1パットで勝ち切った。

性格が優しすぎるから勝てないのでは? といわれていた彼の勝利は素直に人々の心に響いたはずだ。