兄弟で取材を受けるのは初めてという味和昌選手と季依典選手。最初は緊張も見られましたが、話すうちに兄弟トークがさく裂! 他チームにいる3番目の兄の話やラグビーを始めたきっかけ、そして家族の絆の話まで、5人兄弟のうち3人がトップラガーマンになった呉家の背景をたくさん教えてくれました!

―チームの“癒し系”と“元気印”と性格は正反対!?の兄弟
味和昌:僕のキャラは……一言で言うと、癒やし系ですかね(笑)。「見た目と違って、意外と優しい性格だな」とチームの先輩や業務で一緒の人たちから言われたことがあります。
季依典:僕は「何でも一番がいい」と思う負けず嫌いの性格です。「Hondaの元気キャラ」って言っておこうかな。
味和昌:弟は、練習やトレーニングのときは、大声を出しながらやっているので、いつ見てもパワーがあふれている感じです。僕も負けず嫌いなところはありますよ。
季依典:兄貴はあまりしゃべるほうではないですね。マスコットキャラクターではないですけど、癒やし系だと思います。今はひげも生えててるので、見た目と性格のギャップはかなりあると思います(笑)。
味和昌:初対面の人は僕と話しづらそうにしている人が多いので、わりと自分から声を掛けに行きます。話をすると、ホッとされます(笑)。

―スポーツをすることが必然だった幼少期
味和昌:僕ら5人兄弟で、下3人がトップリーグでラグビーをしてるんです。
季依典:僕は僕が末の弟で、兄貴が下から2番目。サントリーに下から3番目(森川由起乙選手)がいます。で、さらに上に2人います。
味和昌:スポーツ一家なんですよね。上3人のお兄ちゃんたちは小さい頃から野球をやってたのに、僕は小学校に入る時何もスポーツをしていなかったので、お父さんから「おまえも何かスポーツしろ」って言われたんです。当時、140cmで50kgくらいあったので、相撲を勧められたんですけど、お尻を出すのが子どもながらに恥ずかしいなと感じてやりませんでした(笑)。他にやりたいスポーツもなくて、何もしないまま小学2年に上がる時期になって、お父さんから「何もスポーツせえへんかったら、家を出ていけ!」と言われました。「家でごはん食うな!」って(笑)。だから、たまたま小学校の先生がラグビースクールのコーチもやってたので見学に行ったんです。でもヘッドキャップをかぶってる子たちを見て「こんなダサいのかぶりたくない!」って僕はダダをこねて泣いてました(笑)。何かを理由にして、スクールに入るのをやめたかったんだと思います。
季依典:僕もちょうどそのときに兄貴と一緒に見学に行って、ラグビーというかボールを持ったかけっこみたいな体験をしたんですけど、僕は体を動かすことが好きだったので「これやりたい!」って言いました。
味和昌:それで、僕も「季依典がやるならオレもやる……」ってしぶしぶ始めたんです(笑)。
季依典:僕が兄貴を道連れにした感じです(笑)。

―兄の大食い伝説「ウインナー100本」!
味和昌: 男5人がスポーツをしていると、食事の量も半端ない(笑)。1カ月のお米の消費量が110kgのときがあったんですよ。普通だったらお米10kgくらいの袋をスーパーで買うと思うんですけど、僕らはお母さんがお米の販売店と直接やり取りして、レストランとかが仕入れているような30kgの茶色い袋をいくつか玄関先に置いてもらってました(笑)。
季依典:それと、みんなお肉が好きなんです。お母さんが出した料理にお肉がないと兄弟全員で口をそろえて「今日のおかずはこれだけ?肉ないやん!」と文句を言っていました(笑)。そういえば、兄貴は、焼き肉食べ放題に行ったときに、「ウインナーを100本ください」って言ったこともあるよな!
味和昌:大学生の頃やったっけな。いや〜、あれはオレがウインナーを焼いてたら、お父さんが横取りして……。「なんで取るん?」ってイラついたら、「なら、もっと頼まんかい!」と言われて100本を注文したんです。それまでもまあまあ食べていたんで、店員さんも“本当に食べられるの!?”みたいな顔をして「残したら……」みたいなことを言ってきたんですけど、それでもお父さんがオレを指差して「この体見てわかるやろ。食べるやろ!」って(笑)。オレも腹が立って、意地で100本食べました!
季依典:ホンマに1人で食ってました。オレの知ってる伝説です(笑)。

味和昌:あとはお母さんの作る豚キムチが、季依典以外はみんな好きで。帰省するとリクエストしています。
季依典:僕は辛いのがダメで……。卵が好きなので、豚キムチがおかずに出てくるときは卵かけご飯を食べてます。たまに玉子焼きとか。卵なら何個でも食べられます!
味和昌:ただ社会人になってからは食事の質を気にするようになったので、お米は極力控えるようにしてます。
季依典:僕はやせやすいので、逆に栄養のことを考えながらたくさん食べるように意識しています。

―同じグラウンドに立ってると、より気合いが入る!
季依典:兄弟で一緒のスポーツをやっていて一緒の高校や大学まで行っていたら、やっぱりどこにいっても比べられるんですよね。それがしんどいなって思うことはありました。由起乙も兄貴も高校代表に選ばれたりしていたので、僕は勝手にプレッシャーを感じてましたね。
味和昌:僕もプレッシャーを感じることはありますけど、中学校の頃「だれかが兄貴とおまえを比べたとしても、おまえはおまえなんやから、おまえらしくプレーをしたらええんちゃうか」って、お父さんにずっと言われてたので、それをずっと心に留めておいて「自分は自分」と思ってプレーしてました。兄貴のほうがいろんな経験を積んでるから、目標である兄貴を超えたいなという思いもずっと持ってました。
季依典:僕は兄貴たちの記録を目標のようにして、それに向かってただただそのときにやるべきことを一生懸命頑張ってました。

味和昌:ライバルでもあるけど身近にいる理解者でもあって、やっぱり兄弟なだけによく見ていてくれるんで、アドバイスもし合ったりできるんです。「本当によく見てるな〜」と思う細かいところを指摘してくるんですよね。僕も季依典に気付いたことはどんどん言います。同級生やチームメイトだと言いにくいことでも兄弟なら遠慮なしに言えるので、そういう意味では他の人が持っていない、いい環境だと思います。
季依典:僕も、兄貴のことで気付いたことは言います。ただ、身近に兄貴といういい教科書があったので、私生活においても、ラグビーにおいても自分的には得したなってほうが多かったです。試合のときも、僕が出ていようが出てなかろうが兄貴たちが出ていると特別な感情を持って見てますね。僕だけが試合に出てるときも「兄貴も近くにいる」っていう思いはあります。もちろん同じグラウンドに立ったときは、いつもよりひそかに興奮してます(笑)。

味和昌:「2人で何かしたろ!」って思うよな(笑)。あと、僕がスタートから出てて後半の最後らへんでスタミナが切れてへばってたりするときに、季依典が交代で出てくるとまたエンジンがかかったりもします(笑)。やっぱり季依典は“元気印”なんでね。へばってるオレに「今からやろっ!」と声を掛けてくれたりするんです。
季依典:自分の力以上のパワーが出る感じです。
味和昌:僕らのポジションはプロップとフッカーなのでお互い理解している分、スクラムを組むときのやりやすさもありますね。顔を見ただけでどう思っているかわかります。
季依典:クセもわかってるしな(笑)。
味和昌:一緒にずっと暮らしてるからな。季依典はうまくいかんことがあったら「わぁ〜」って混乱してるときがあるからわかりやすいっていうのもあるんですけど、そういうときに声をかけて落ち着かせるのも僕の役割かなって思ってます。

―両親は厳しいけれど、一番の味方
季依典:どっちかが苦しんでるときは、あまり踏み込まないでそっと見守るほうが多いかな。ちょっとした悩みは「自分で何とかせえ!」っていう感じ。さすがにちょっと悩みすぎてると、僕はわかりやすいんで兄貴が察知してくれて助けてくれます。僕も兄貴が「ちょっとしんどそうやな……」って思ったら「大丈夫?」と声を掛けたりしてます。
味和昌:「ここは考えさせたほうがいいな」「ここは助けてやらんとな」というのは表情を見て判断してます。
季依典:察知してくれる人が身近にいるから、深く悩まずに済んでるのかも。

味和昌:あとは深刻になればなるほど、うちは親に聞いてもらうことが多いかもな。お母さん、お父さんが一番僕らのことをわかってくれてるんで。まあ、お父さんはわりとスパルタというか……、僕らが普通と思ってることが他の家庭では「そんなことないよ!」と言われることが多かったんです。例えば小学生の時、家で宿題をしていたら「おい、何しとんねん。宿題やる時間があったら走ってこんかい!」って言われて(笑)。家の近くに11階建ての団地があったんですけど、そこの階段を走って上り下りしてました。次の日、学校で先生に「何で宿題してけえへんの?」って怒られたので「お父さんに宿題よりトレーニングしろって言われた」と正直に言ったら、先生から家に連絡があったみたいで、「そんなこと先生に言うことちゃうやろ!」ってまた僕が怒られました(笑)。でも、お父さんが全力で僕らのことを考えてくれてるってことはわかります。

季依典:僕も中学校に上がる頃だったかな。「おまえは勉強でいくんかスポーツでいくんか、何で勝負するか選べ。スポーツで勝負するんだったら、先生の話を聞いて提出物だけ出しおけばいいから。ラグビーに全部かけろ」ってお父さんに言われて。僕は勉強が苦手だったんで「スポーツで頑張らせてもらいます」って言いました(笑)。

味和昌:お母さんは相談すると親身に聞いてくれるんですけど、最終的には「あんたの人生やから、好きにしなさい。あんたが決めたことに対しては応援するから頑張りなさい」って言ってくれるんです。特に大学卒業後の進路でめちゃめちゃ悩んでたときにそれを言われて、涙出ましたね。うちは実家がたこ焼き屋をやってるので「ダメだったら、たこ焼き屋やればいいよ」って言われました(笑)。ただ、お母さんは怖い存在でもあります。うちは小さい頃からずっと兄弟みんな同じ部屋で育っていて、めちゃめちゃけんかもしてたんです。けんかのたびに家の何かがいつも壊れるんですけど、そんなときはお母さんが「おまえら、いい加減にせえ!」と怒って、けんかしているやつはお尻をたたかれて泣かされるってことがよくありました(笑)。

―兄弟対決もひそかに楽しんでほしい!
味和昌:ラグビーは一度生で観戦してもらうと「また来たい」と必ず思ってもらえるスポーツだと自信を持って言えるので、ルールがわからない人でもまずは一度見に来てもらいたいです!
季依典:生だとより迫力あるプレーで魅力を伝えられると思います。あと、僕ら呉兄弟の闘志あふれるプレーに注目してほしいです(笑)。
味和昌:サントリーにいる、兄の森川由起乙にも注目してほしいです!Hondaとサントリーが試合のときは、僕と季依典、由起乙がスクラムを組むシーンがもしかしたら観られるかも。普段、僕らは由起乙には兄弟げんかとか1対1では勝てないんです。でも兄弟対決で2対1の状況になったときは、季依典と力を合わせて倒そうぜって思ってます(笑)。
季依典:ラグビー通な人は、森川由起乙が僕らと兄弟だと知っていて楽しんでいます。皆さんも兄弟対決をぜひ楽しんでください!

呉 味和昌(ご・みわすけ)選手 1994年4月12日生まれ、兵庫県出身。ポジション:PR(プロップ)、181cm/118kg。7歳でラグビースクールに通い始める。京都成章高校を経て、帝京大学に進学。卒業後の2017年、Honda HEATに所属。高校日本代表候補に選出経験あり。
呉 季依典(ご・きねのり)選手 1996年10月23日生まれ、兵庫県出身。ポジション:HO(フッカー)、177cm/102kg。4歳でラグビースクールに通い始める。兄と同じく京都成章高校を経て帝京大学に進学。卒業後の2019年、Honda HEATに所属。U17日本代表、関東学生代表に選出経験あり。