愛車が故障したり、交通事故になって動けなくなると、助けにきてくれるのがレッカー車だ。そんなレッカー車の仕組みはどうなっているのだろうか? レッカー車の架装メーカーである横浜のヤマグチレッカーに話を聞いてみた!

●文・写真:鈴木ケンイチ ●写真協力:(株)ヤマグチレッカー

クルマを助けるクルマ、それがレッカー車だ。大きなクルマも軽々と運ぶその仕組みは驚くばかり。バリエーションと歴史もとても興味ぶかいぞ!

日本最大級の75tレッカー『センチュリー1075/ニーブーム』のヒミツ1

全長10300mm
全高3730mm
全幅2490mm
油圧ポンプで発生した力を写真のバルブを使って分配。油圧でブーム類を制御している。
ブームやウインチをリモコン操作することもできる。実車を近くに見ながら操作可能だ。
車体左右に複数の収納スペースが用意される。写真はアンダーリフトのアタッチメントだ。
運転席にはレッカーブームの操作スイッチ(左側)やモニターの切り替えスイッチが設置される。

●センチュリー1075/ニーブーム
主要諸元 寸法:全長10300×全幅2490×全高3730㎜ 車両重量:31100㎏ ※公道を走るための特別な許可を得ている。
レッカー部:75t 360度旋回式油圧レッカーブーム(最大フック吊り上げ高12.67m)、27.2t 油圧ウインチ×2基(レッカーブーム部搭載/22.2㎜ウインチケーブル×76.2m)、15.8t 油圧式ウインチ×1基(ニーブーム型アンダーリフト部搭載/15.9㎜ウインチケーブル×60.9m)、25t 油圧式ニーブーム型アンダーリフト搭載
トラック部:スカニアR500(B8X4NZ) エンジン:13リッター直列6気筒ディーゼル、最高出力:368kW(500馬力)/1900rpm、最大トルク:2550Nm/1000〜1300rpm、トランスミッション:前進12段・後進2段(オートマチック)/スカニアオプティクルーズ/スカニア流体リターダ付き 駆動:フロント2軸ステア/リヤ2軸駆動 フレーム:F957ダブルフレーム(強化フレーム)/アウター9.5mm・インナー7㎜(高張力鋼)

2022年に製作されたばかりの最新&最大&高機能なレッカー

 センチュリー1075/ニーブーム型レッカーを、スカニアのR500に搭載するのが、ヤマグチレッカー社製作の写真の車両だ。この車両は、2022年に製作されたもので、従来の吊り上げ能力70tを超える75tとして日本最大級を誇る。

 最大の特徴は、75tを吊り上げる強力なレッカーブームだ。車両の荷台に設置された巨大なクレーンである。3段階に伸びるレッカーブームの最大の吊り上げ高さは12.67m。また、レッカーブーム自体が360度に旋回するため、作業の自由度が高いのも強みとなる。

 車両後方に備えられるのがアンダーリフトだ。これは、けん引時に他車両の前輪を載せて固定するためのもの。伸び縮みすることで、オーバーハングの大きな大型バスにまで対応する。この車両のアンダーリフトはニーブームと呼ばれる機構を採用している。

 従来品では、アンダーリフトの車体側を軸に後端を高くするには、所定位置までアンダーリフトの設置位置を下げる必要があった。しかし、ニーブーム機能があれば、どの高さであっても、アンダーリフト後端を高くすることができる。

 名前にあるように、肘を曲げるようにアンダーリフトを自由に動かせるというわけだ。自由度が高いだけ、作業効率が高く、故障しにくいのだ。

 こうした巨大な75tレッカー車が生まれたことで、これまで困難であった超巨大車両の救援や、トンネル内での作業が、より容易になっているのだ。

●今回取材でお世話になったのは……40年の歴史を持つレッカー車の架装メーカー「株式会社ヤマグチレッカー」

 横浜市の港湾エリアである金沢区鳥浜町にあるレッカー車の架装メーカーがヤマグチレッカーだ。

 1984年に神奈川近県のレッカー・サービス会社として誕生。車両は自社で製作したため、架装メーカーとしても、ここに始まる。

 アメリカのレッカー・メーカーであるミラー社と強いコネクションを持ち、年間30台ほどのペースでレッカー車を生産する。

 

●株式会社ヤマグチレッカー
神奈川県横浜市金沢区鳥浜町2-69
https://yamaguchi-wrecker.co.jp/



神奈川エリアのレッカー・サービスと、レッカー車の架装の両方を手掛けるのが特徴だ。
日本車のシャシーとぴったりあうサブフレームを設計し、オーダーメイドのように製作。

著者:内外出版/オートメカニック