文●九島辰也 写真●MINI

 BMW MINIがフルモデルチェンジした。2002年の初代から4世代目となるモデルだ。ブランド名はMINIだが、モデル名にワンが無くなりすべてMINIクーパーとなる。そもそも日本ではMINIのことをMINIクーパーと呼ぶ人が多いからこれで辻褄が合ったような気がする。ジョン・クーパーさんも草葉の陰で喜んでいることだろう。

新しいMINIはガソリン車と電気自動車が存在

MINI クーパーSE

 今回リリースされた3ドアのグレードは4つある。1.5リッター直3ターボの「クーパーC」、2リッター直4ターボの「クーパーS」、それとBEVの「クーパーE」とそのハイパワーバージョンとなる「クーパーSE」だ。と、ここでお気づきになられた方はいらっしゃるだろうが、新型にはディーゼルエンジンがない。不正データ事件以来、ヨーロッパでディーゼルはNGとなったからだ。日本では人気なだけにちょっと寂しい気もする。

 それじゃMINIの歴史の中でのBEVはというと、最初のMINI eは2008年。日本でも一部リース販売されたので記憶している方もいるかもしれない。主な取引先は官公庁であった。そして2020年に3世代目ベースでMINI eが発売されたが、日本未輸入。その意味では今回の4世代目が本格的な市場導入といえる。
 といった背景のもと、新型MINIクーパーSEの国際試乗会に参加した。場所はスペインのバルセロナ。暑すぎないいい時期のヨーロッパだ。

 ステアリングを握ったのはBEVの「クーパーSE」。ガソリンエンジン車はなく、それ一択でのテストドライブとなった。きっとそれだけ仕上がりに自信があるということなのだろう。それとともにその重要性を世界にアピールしたい思惑も感じる。報道の通りヨーロッパでBEVは逆風が吹きつつあるが、コンパクトサイズに特化すれば優位性は高いこととなる。

MINI クーパーSE

 ではその概要だが、驚くことにプラットフォームはこのクルマのために専用開発している。カントリーマンはBMW X1&X2と共有するが、このクルマにはそれがない。いずれ5ドアがリリースされるであろうが、MINI専用のBEV用プラットフォームとなる。もちろん、ボリュームからしたら相当見込めるので、そこで開発費は回収できる算段だろう。パワーソースはリチウムイオン電池でフロントのモーターを動かす方式。最大パワーとトルクは218ps/330Nm。「クーパーE」が184ps/290Nmとなるからその差は明らか。ただ最高速度は時速170キロと時速160キロだからあまり変わらない。

伝統を受け継いだエクステリアと革新的なインテリア

MINI クーパーSE

 デザインはデザインチームによると「クリーンさ」をもとに行ったそうだ。リアのシグネチャーライトがアピールポイントで、新しさを強調する。とはいえ、全体的なフォルムやヘッドライトの形状、グリルとの位置関係などは大きく変わらない。もはやアイコンとなるMINIデザインは不変だ。遠くからでもそれとわかるスタイリングは秀逸である。

 その代わりと言ってはなんだが、インテリアはけっこう印象が異なる。センターの丸型の巨大なメーターを配置するのはこれまでと同じだが、それがフルデジタルとなりMINIの世界観を新しくする。ディスプレイに映し出されるデザインやカラーの遊び心がキモだ。この手法はおもしろい。
 ディスプレイはその下方にある”EXPERIENCES(エクスペリエンス)“スイッチによって7種類が楽しめる。GO-KART(ゴーカート)、CORE(コア)、GREEN(グリーン)、VIVID(ヴィヴィッド)、TIMELESS(タイムレス)、PERSONAL(パーソナル)、BALANCE(バランス)と言ったモードだ。で、この中のいくつかはドライブモードと連動したり、オーディオと連動したりする。例えばGO-KARTではパワステが重くってアクセルレスポンスが良くなるといったように。それぞれ好みで遊ぶ感覚だ。まさにMINIっぽい演出である。

MINI クーパーSE

電気自動車も走りだせばMINIそのもの

MINI クーパーSE

 そんなMINI クーパーSEを走らせると、これがしっかりMINIっぽく走る。ステアリングに対する反応や加速は期待通り。床下に電池を積みながら軽快さがうまく再現されていて楽しい。BEV特有のバネ下の重さがないのが美点である。これならガソリンエンジン車から乗り換えても違和感は少なさそうだ。パワーがありすぎるのでアクセルをグイッと踏み込むと急加速するところがBEVっぽいが、それ以外は自然なフィーリングでまとまっている。まぁ、急加速もFF特有のトルクステアと考えればいいのかもしれないが。
 そのほかの気になるポイントは、試乗車は18インチだったのでスタビリティは高かったが多少硬さが気になったところ。普段乗りメインであれば17インチで乗り心地を優先にした方がいいかもしれない。その方がもう少しピッチングが抑えられ穏やかな乗り心地になることだろう。

 そんなMINI クーパーSEの日本での価格は531万円。BEV狙いの方は要チェックだ。個人的にはMINI クーパーCが気になるけどね。ガソリンエンジンのそちらは396万円となる。

著者:九島辰也(くしま たつや)