「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は、62歳女性の「老後は子どもの世話にならずに生活したい!今からできる備えについて教えて」という相談に、FPの畠中雅子さんが回答。

62歳女性の「一人で生活するための老後の準備」についての相談

現在、家賃5万円の1Kアパートで、一人暮らしをしています。年収は約200万円、貯蓄は1000万円、共済保険の掛金を月3000円程支払っています。

あと約3年で定年になりますが、その後もパートなどでゆっくり仕事を続けたいと考えています。

私には独立した子どもが二人いますが、老後は子どもたちの世話にならずに暮らしていきたいと思っています。そのために、今から準備を進めていきたいと思っているのですが、何から始めればいいかわかりません。

具体的なアドバイスなどをもらえるとうれしいです。

(62歳女性・ちかぽんさん)

畠中さんの回答:まずは年金暮らしの最優先課題「家賃」を下げる!

畠中さんの回答:まずは年金暮らしの最優先課題「家賃」を下げる!

ご相談内容だけでは公的年金の受給額がわかりませんが、仕事を辞めた後も月に5万円のアパート代がかかり続けると、毎月、赤字が出てしまうことが想像できます。

そこで年金暮らしに備えて、市営住宅の申し込み方法を調べてみてはいかがでしょうか。女性一人の年金で月に5万円の家賃は、少し負担が重いと思うからです。

市営住宅の家賃額や抽選倍率は、地域によってまちまちです。働いている間は、職場から離れすぎていると通勤が大変だと思いますが、パートで緩く働くときは、住み替えた先で仕事を探す方法もあります。

場所を限定せずに、たくさんの抽選に応募できた方が、入居可能性は高まるはずですので、年金暮らしに入った際に家賃負担を下げられる努力をされてはいかがでしょうか。

介護が必要になることを考えて「混合型のケアハウス」を探しておく

「混合型のケアハウス」を探しておくと、介護状態でも最期まで暮らる

次に、介護にかかるお金です。一人暮らしの方に介護が必要になると、介護保険を目いっぱい使っても、サポートが不足がちになります。在宅での介護は難しいからと、特別養護老人ホーム(特養)に住み替えて介護を受けようと考えても、特養は要介護3以上でないと、申し込みすらできません。

また申し込みができて入居に進めたとしても、ちかぽんさんの場合、資産基準にひっかかるため「補足給付」という名の減額措置が受けられません。

特養で介護を受ける場合、1か月14〜16万円程度の負担(個室の場合)になってしまうわけです。

単身者の方の資産基準は、所得に応じて650万円以上、550万円以上、500万円以上の3段階あり、所得が多いほど、低い金額が適用される仕組みになっています。ただし、資産が規定額を下回るようになると、補足給付の対象者となり、特養に支払う費用は減額されます。

「混合型のケアハウス」を探しておくと、介護状態でも最期まで暮らる

介護が重くなった場合、最後は特養を頼るとしても、特養に入れるまでの介護生活をどのように乗り切るかという課題があります。

特養だけを住み替え先の候補にするのであれば、要介護2まで自宅で過ごすしかありませんが、エレベーターのない賃貸住宅に住めば、在宅介護が成り立たないかもしれません。

そこでもう一つの方法として、「混合型のケアハウス」を探す考え方があります。混合型のケアハウスは、自立した方が入居される一般型のケアハウスと、介護が必要な方が入居される介護型のケアハウスが、同じ建物内に併設されているケアハウスを指します。

混合型のケアハウスであれば、自立したときから入居ができて、介護が必要になった場合も住み替えをせずに(部屋の移動は必要なケースもあります)、特養と同じように、要介護5などの重介護にまで対応してもらえます。

しかも、費用負担が安いというメリットがあります。

具体的には、自立しているときの費用は、家賃や食費、事務費などを含めて、1か月7〜9万円程度のところもあります。介護が必要になった場合には、介護費用が上乗せになりますが、それでも補足給付が受けられない特養よりも安くすむ可能性があります。

入居時に支払う費用はケアハウスによりますが、30〜50万円程度のところも多くなっています。

問題なのは、混合型のケアハウスは、数が非常に少ないこと。広告宣伝費を使う施設はほとんどないため、自力で探すしかなく、実際に探すのはかなり困難な現実があります。

とはいえ、「子どもに迷惑をかけたくない」と考えるちかぽんさんには、そのくらいの苦労は受け入れていただくしかないでしょう。

「混合型のケアハウス」を探しておくと、介護状態でも最期まで暮らる

ところで、一般型ケアハウスは60歳から申し込めますが、60代での住み替えは早すぎると思います。一般型のケアハウスを見学していると、60代の入居者はほとんどいないか、いても1〜2名程度のことが多く、60代での入居は若すぎると感じるからです。

そこで60代のうちは施設探しに注力をして、70代以降に住み替えるのがよさそうです。

住み替えたいと思える混合型のケアハウスを見つけられれば、人生の最期まで、生活費を抑えながら暮らせると思います。そのため今は、家賃を下げるために市営住宅を探したり、パートでの暮らしになったら混合型のケアハウスを探す努力をされてはいかがでしょうか。

回答者プロフィール:畠中雅子さん

畠中先生

はたなか・まさこ 1963(昭和38)年生まれ。ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)。『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店刊)他、著書は70冊以上。また「ミニチュアワールドと観光列車」に造詣が深くブログを開設している。