最近、なんだか体がほてる……。もしかして更年期と思ったら、セルフチェックリスト21項目を確認してみてください。症状や治療法など知っておくべき更年期の基本知識をお伝えします。また、更年期後に気を付けるべき不調と病気についても解説します。

閉経年齢とは、どのタイミングを指す?

更年期はいつからいつまで?

月経が完全に停止することで、目安としては1年間月経がないことを確認して、最後の月経があった年齢を閉経年齢とみなします。
血液検査の結果で診断する場合の目安は、FSH(卵胞刺激ホルモン:「エストロゲンを分泌せよ」という脳からの指令を送るホルモン)値40mlU/mL以上、かつE2(エストラジオール:卵胞ホルモン・エストロゲンのこと)値20pg/mL以下で、閉経と診断されます。
 

女性のE2(エストロゲン)値の目安

  • 卵胞期 28.8~196.8
  • 排卵期 36.4~525.9
  • 黄体期 44.1~491.9
  • 閉経後 47.0以下
  • 妊娠初期 208.5〜4289
  • 妊娠中期 2808~28700
  • 妊娠後期 9875~31800

    男性 14.6~48.8(pg/mL)

【出典】
松崎利也,他:医学と薬学72(5): 931~941,2015
 

女性ホルモン・エストロゲンの役割とは?

更年期の仕組み

エストロゲンは女性の体のさまざまな臓器や機能に働きかけ、多くの役割を担っています。女性は小児期から思春期になると、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌が高まって初経(初潮)を迎えます。

さらに20代から40代前半頃まで、妊娠や出産に適した性成熟期になります。その後、50歳前後で月経が完全になくなる閉経を迎える頃には、エストロゲンの分泌は不安定になりながら急激に低下します。

エストロゲンは妊娠・出産のためだけでなく、女性の体のさまざまな臓器に働きかけて、健康を維持するために役立っています。閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた、約10年の期間を「更年期」といいます。更年期にはエストロゲンの分泌量が減り、心と体の不調が更年期障害として現れます。

特に閉経前には、脳からの「エストロゲンを分泌せよ」という指令のホルモンFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌されても、卵巣が十分なエストロゲンを分泌できないことで、自律神経のバランスを崩しやすく、月経異常、ホットフラッシュ(顔のほてり、のぼせ)、異常発汗、めまいなどの更年期症状を感じ始めます。
 
 

更年期にはどんな症状がある?

更年期の女性


更年期にはどんな症状があるのでしょうか?このデータは、更年期外来を受診した女性の主な症状です。更年期外来を受診した40歳~59歳の日本人女性345名が訴えた主な症状(週1回〜ほぼ毎日という回答が多い順) 

1  顔や上半身がほてる(熱くなる)
2  汗をかきやすい
3 夜なかなか寝付かれない
4 夜眠っても目をさましやすい
5 興奮しやすく、イライラすることが多い
6 いつも不安感がある
7 ささいなことが気になる
8 くよくよし、憂うつなことが多い
9 無気力で、疲れやすい
10 眼が疲れる
11 ものごとが覚えにくい、物忘れが多い
12 めまいがある
13 胸がどきどきする
14 胸がしめつけられる
15 頭が重かったり、頭痛がよくする
16 肩や首がこる
17 背中や腰が痛む
18 手足の節々(関節)の痛みがある
19 腰や手足が冷える
20 手足(指)がしびれる
21 最近音に敏感である

【出典】
TerauchiM.etal:EvidBasedComplementAlternatMed.2014,ArticleID593560,1-8,2014
 

更年期障害のセルフチェックリスト

更年期による不調を感じたら

 更年期による症状によって、日常生活に支障をきたすようになった状態が「更年期障害」です。更年期障害の診断や、治療の効果はどのように判定されるかご存じですか?

下記が、更年期外来などの医療機関で使用される「更年期症状評価表」です。「もしかして私も更年期障害ではないかしら?」と思ったら、ぜひチェックして、更年期外来で相談しましょう。
 

※21項目それぞれの症状の程度を、「強」「弱」「なし」のチェックをつけてください
 

日本人女性の更年期症状評価表

  •  顔や上半身がほてる(熱くなる)
  •  汗をかきやすい
  • 夜なかなか寝付かれない
  • 夜眠っても目をさましやすい
  • 興奮しやすくイライラすることが多い
  • ささいなことが気になる
  • 無気力で、疲れやすい
  • 眼が疲れる
  • 無気力で、疲れやすい
  • 目が疲れる
  • ものごとが覚えにくい、物忘れが多い
  • めまいがある
  • 胸がどきどきする
  • 胸がしめつけられる
  • 頭が重かったり、頭痛がよくする
  • 肩や首がこる
  • 背中や腰が痛む
  • 手足の節々(関節)の痛みがある
  • 腰や手足が冷える
  • 手足(指)がしびれる
  • 最近音に敏感である

 
【出典】
日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会:日産婦誌、53(5)、883-888、2001
 
また、上記のほかにも、一般的に以下の症状を感じる場合もあります。

  • 動機や息切れ
  • 気分の落ち込み
  • 生理周期の乱れ

更年期障害の治療法は?

更年期障害の治療方法は?

更年期では、女性ホルモンの分泌が急激に減少します。その変化に体がうまく反応できず、さまざまな不調の症状が現れます。のぼせやほてりなどのホットフラッシュ、頭痛、めまい、耳鳴り、うつ気分、イライラなど、更年期の症状はさまざまですが、この症状が生活に支障をきたすほどになることを「更年期障害」といいます。
症状自体は8〜9割の人が感じますが、そのうち更年期障害とされるのは3割ほどの人。
では、更年期障害はどのように治療すればいいのでしょうか。
 

  • HRT(ホルモン補充療法)
    エストロゲンを薬で補う治療法です。
     
  • 漢方療法
    更年期障害のさまざまな症状に合わせて、その症状を緩和する目的で漢方を処方します。
     
  • 女性ホルモン以外の薬物療法
    更年期障害の症状に合わせて治療薬を処方する方法で、おもに抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、鎮痛薬などが用いられます。
     
  • 食事療法
    日頃の食生活を見直してバランスの取れた、ビタミンやミネラル、食物繊維などがたっぷり含まれた食事を摂るように、医師や管理栄養士から指導を受けます。
     
  • 運動療法
    日頃の運動習慣をチェックして、運動不足にならないように、医師や運動療法士などからアドバイスを受けながら実施します。
     
  • カウンセリング・心理療法
    更年期障害の悩みや、仕事や家庭の悩み、将来への不安などについて、医師や臨床心理士などが調べて、カウンセリングや心理療法、薬物療法などの治療を行います。

 
一つ一つの更年期の症状に個別に対処することもできますが、女性ホルモンの分泌量の急激な低下という根本的な原因にアプローチできる治療法が、HRTと略される「ホルモン補充療法(HormoneReplacementTherapy:HRT)」です。その名の通り、減少した女性ホルモンを外から補いコントロールすることで、パニックを起こしている自律神経や情動の暴走を抑えることで、不調を改善します。
 

更年期後に気を付けるべき不調と病気とは?

更年期以降で気を付けるべき病気

完全に閉経すると、エストロゲンの量が急激に低下して、不眠、倦怠感、憂うつ、記憶力の低下、皮膚の乾燥、性器のかゆみや炎症、性交障害、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、骨粗しょう症などを訴える人が増えます。

このようにエストロゲンは、生殖機能以外にも、脳機能、自律神経、皮膚代謝、脂質代謝、骨代謝、心臓や血管の機能などに作用しているために、閉経でエストロゲンが欠乏すると、さまざまな不調を感じるようになるのです。

※この記事は2020年8月の記事を再編集して掲載しています。