2015「Le petit terezes」五線譜にコピック、コラージュ、アクリル絵の具/36.6cm×36.6cm

毎回、編集の大池明日香さんがアーティストと会って作品のことなど四方山話をします。本誌連載『アートの円卓』よりお届け。

本日のアーティスト…小林紗織(こばやし・さおり)

1988年神奈川県生まれ。音楽を聴いて浮かんだ情景を五線譜に描く「score drawing」を中心に制作。「小指」名義での漫画に『旅の本』『夢の本』など。

2015「Le petit terezes」五線譜にコピック、コラージュ、アクリル絵の具/36.6cm×36.6cm

大池:絵は大学時代からですか?

小林:美大に入ったんですが、それまで勝手に幻想を抱きすぎて「思ってたのと違う!」となってしまって。お手伝いをしていたバンドのメンバーが抜けるからと誘われ、大学4年間はずっと音楽をしていました。気づいた頃には就職活動のタイミングも逃し、フリーターをやりながらバンドを続けていたんですが、お金がなくて生活するのもギリギリで……。当時働いていなかった彼氏と2人分の生活費を稼ぐため、朝はコンビニ、昼はデータ入力のアルバイト、夜は飲み屋で働き、休みの日にバンドの練習をして、という日々でした。

大池:めちゃくちゃ大変ですね。

小林:子供の頃から漠然と、絵で生活できるかなと思っていたんですけど、このままだと一生バイトのまま死んでいく可能性が高いな、と絶望していました。近所の喫茶店で、仕事の合間にひたすらボーッと音楽を聴きながら現実逃避する毎日が続いて。でも、そうした中で心を無にして音楽に没入していたら頭の中に色や形といったイメージが浮かんで、こんな綺麗なものが見えているのに誰にも言わないのはもったいないな。あ、これを描けばいいのかと思って、それから頭の中を流れるイメージを、タイムラインのようなかたちで五線譜に描くようになりました。

大池:最初に描いた作品が「scoredrawing」だったんですね。

小林:そうなんです。普段は気が散りやすいんですが、頭の中にあるものを描き取るのは、今も写経のように心を無にできる作業です。好きな音楽ができれば描けるので、スランプもなくて。いつも絵にする音を聴きながら描いています。

大池:小指さん名義で、漫画や文章も発表されていますね。

小林:恋人がアルコール依存症で大変だった頃のことや、絵では発散しづらい気持ちをガス抜きするように描いてます(笑)。あまりに絵画の方と作風のテンションが違うので同一人物かと驚かれます。

大池:今回は二人での展示になるんですね。楽しみです!

「Penthouse on the building」五線譜にコピック、コラージュ、アクリル絵の具/59.8cm×42cm
「子供達の声」五線譜にコピック、コラージュ、ボールペン/29.7cm×21cm
「讃美歌1(映画「うたのはじまり」絵字幕)」画用紙にコピック、コラージュ/10cm×218cm(部分)

小林紗織 × 小林亮平 二人展『お腹まで2時間35分』

恵比寿のNADiff本店〈NADiff Window Gallery〉にて、5月20日から6月27日まで開催。
東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F
03-3446-4977
13:00〜19:00 月火水休

Navigator…大池明日香(おおち・あすか)

編集・執筆・展示など。東京の東と、酒が好き。編集を担当したタナカカツキ著『新・水草水槽のせかい』が発売中。

(Hanako1196号掲載/text : Asuka Ochi edit : Mariko Uramoto)