ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第47回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、神奈川県葉山町で作られるアイスクリームの探求ラボ〈BEAT ICE〉代表・山口冴希さんに話を伺いました。

取材当日はまさに秋晴れで雲ひとつなく、乾いた空気が気持ちのいい日でした。収穫前の稲穂は黄金色に輝き、まるでスズランのようにたわわ!この日は山口さんご夫妻が揃って、棚田を案内してくれました。飾らず希望に満ち溢れた夫と、夫を支えるしっかり者の妻。それはとても微笑ましく、遠足のようなひとときでした。

棚田米を使ったアイスクリーム「葉山アイス」ができるまで

〈BEAT ICE〉代表取締役の山口冴希さん。

ーー「葉山アイス」を作るきっかけとなった棚田との出会いについて聞かせてください。

「夫婦ともに出身は横浜の方で、普通の都会暮らしをしていました。あるとき、夫が葉山で見た富士山の景色に感銘を受け、1ヶ月後には移住を決意。3人の子育てをする中で、当時長男が通っていた幼稚園のパパ友に誘われて来たのがここの棚田だったんです」。

ーー葉山は確かにいいところですが、すごい決断力と勇気ですね。

「棚田があることは知っていましたが、まさかここで作業ができるなんて思ってもいなかったので…。誘われてお手伝いに行ったら、夫がこの空間の気持ち良さに見事にハマってしまいました(笑)」。

ーーどういったところに魅力を感じたのでしょうか。

「それまでやっていた音楽活動とは違う世代の人と関わり、同じゴールをもって作業する経験がなかったことや、先人がこういう風にしてお米を作ってきたんだなって知ったときに、お米のありがたさが変わるという豊かな気づきを発見したこと。棚田から活力をもらい、みるみる元気になっていったんです」。

神奈川県葉山町の上山口の棚田。
「日本の里100選」にも選ばれている。

ーー新鮮な体験だったんですね。大変と思うより楽しめるなんて!

「そうですね。作業を一緒にさせていただくようになると、地元の方から“棚田というのは、生産効率の悪さから衰退の一途をたどっている”という話を徐々に聞くようになって。私たちにとっては楽しい、素敵な場所だったので、いまの時代なりに棚田が持っている価値というものを再興したいと、漠然とですが夫婦で考え始めるようになりました」。

ーー価値や存続のためのアイディアを考え出したんですね。

「棚田があることで楽しみ、喜び、笑顔になる人が増えていけば、それはその笑顔とともに自然と棚田が続いていくのではないかと思い、最初は棚田の宿を作ろうという話から始りましたが、パパッと決められる話でもなく地元の方々に色々聞きました。そしたらみなさん温かくて、応援してくれる。宿は難しかったけど、朝食屋さんを週2で始めてみることになり、出店先として海岸沿いでエアストリームというシルバーの牽引車を紹介していただいたんです」。

ーー海の葉山ですね。

「お味噌汁屋さんをやらないかというお話をいただいたのですが『海の目の前で、これから夏という季節ならアイスやかき氷だよね』となり、ちょうどお米で何ができるのかを考えていたので、甘酒にしたらアイスにできるかもって。葉山といえばやはり海に遊びに来るお客さんが多いので、海に来た人がアイスを食べて山の魅力を知ってもらえればいいなという想いで、アイスにたどり着きました」。

ーーなるほど、そうだったんですね。私も先にいただきましたが、“甘酒はクセがある”という先入観はなくなり、食べてみたらココナッツの風味とのバランスがよくて甘みがしつこくなく、いい意味でクセになりました。

「ありがとうございます!乳製品や添加物は使わないとはじめから決めていたのは、自分たちが好きなお店に置きたいという望みや、葉山に住む人たちの優しさをアイスで出せたらいいなという理由からです。アイス作りは手探りで始めましたが、イメージはパティシエが作ったアイスではなく“お母さんが作ったアイス”だったので、素朴なところもありつつやさしい味になっています」。

山口さんご夫妻の新たな挑戦

〈三河みりん〉と〈DEN+EN ICE CREAM〉のコラボレーション。

ーー実際にお会いしてみて、ご夫婦ともに30代とお若いので、クラウドファンディングを使いこなしているのも腑に落ちました。

「積極的にやっているかもしれませんが、決してデジタルネイティブというわけではありません。仲間に恵まれてるというか、色々手伝ってくれている方々とのご縁が大きいですね」。

ーー初めはキャンプファイヤーで工房を立ち上げ、現在は〈Makuake〉で「DEN+EN ICE CREAM プロジェクト」(10/12で終了)をリリースされていますが、どういった経緯でプロジェクトを立ち上げたのでしょうか?

「夫が常に新しいことをやっていきたいという想いがあり、アイスを1個しか作っていないのに『世界に行こう!』とイタリアの世界ジェラート大会に挑戦したんですよね。ある意味、無謀だったかもしれませんが、ロック魂で(笑)。大企業や世界中のパティシエが参加する大会なので、そんなに甘い世界ではないのですが、日本の田園風景の魅力をアイスで届けたかったんです。その間、同じようにヨーロッパ市場の販路開拓のため、食の展示会に出展されていた〈三河みりん〉さんと出会いました」。

ーー料理好きや食通の間で話題の〈三河みりん〉さんですね。

「フランスでは、みりんは“ライスワイン”とよばれ、試飲をしたときにお米と関わり始めていたことから可能性をさらに強く感じたんです。〈三河みりん〉さんは環境宣言を掲げ、田園を守る取り組みをされているのでお互いに共鳴し、コラボレーションをさせていただけることになったんです」。

ーーまさにご縁ですね。

「“今度は世界に届けたい”という想いもあり、『葉山アイス』の素朴さとは違うなめらかな食感を出したくて。これは乳製品・添加物不使用が故にとても難しく、2年の時間がかかりました」。

ーー味はもちろんのこと、『葉山アイス』とは違うパッケージのデザインも印象的ですね。かっこいいです。

「デザインも紆余曲折ありまして。世界的デザイナーの高橋理子さんに食べていただく機会があり、とても気に入っていただけて、デザインをお願いすることができました。試作している間、どんなにかっこいいことを言ってもアイスがおいしくなかったらダメだと、試行錯誤を重ねた甲斐がありました」。

ーーそして、晴れて〈Makuake〉でアイスクリーム部門歴代購入金額1位を獲得。おめでとうございます!

〈BEAT ICE〉と棚田と私たちの嬉しいつながり。

稲架掛け(はざかけ)作業。これも日本の稲作の原風景の一つ。

ーーアイスを通じて、クラファンのようなツールを使いつつ棚田の魅力を発信するのは、移住する人や継ぐ人を増やしたいという想いもあるんですか?

「みんながみんなコアな関わりはせず、棚田に来て鍬を振る必要はないと思っています。アイス1個あたり10円が棚田の保全活動費に還元されるのですが、ある人はこれが棚田の応援にも繋がると捉えてくださったり、実際にアイスの広まりとともに町の人や私たちも棚田を続けていく活力につながっています」。

ーーアイスをおいしく食べて、間接的にこの棚田の風景を守っていけるんですね。

「“おいしい!”という笑顔の循環とともに、棚田と人とのつながりを広げていきたいと思っています」。

ーー最後に棚田発のアイス〈BEAT ICE〉を通じて、お届けしたいメッセージをどうぞ!

「日本には棚田という素敵な文化があるということを、アイスを通して知ってもらえたらうれしいです。すでにある素敵なもの、足元にある日本の文化の素晴らしさに気づいてもらえたら…そう思ってお届けしています」。

ーー大切なことですね。楽しいお時間をありがとうございました。

〈BEAT ICE〉

https://www.beatice.jp