日本全国にはエリアごとに独自の発展を遂げた喫茶文化があります。その地ならではの特性と、一度は訪れたい喫茶店と代表メニューをライターで喫茶写真家の川口葉子さんに教えてもらいました。
Navigator 川口葉子 ライター・喫茶写真家
かわぐち・ようこ/雑誌、web等で喫茶店、コーヒー特集の企画監修、執筆を行う。著書に『金沢 古民家カフェ日和』(世界文化社)、『喫茶人かく語りき』(実業之日本社)など。Instagram:@yohko_kawaguchi
京都|〈 イノダコーヒ本店 〉
観光都市らしい巧みな「おもてなし」が光る喫茶の町。
京都が繊維産業で繁栄を誇った時代に、人々の日常に喫茶店が定着したといわれています。京都らしさを感じるのは、おもてなしのスマートさ。勝手が分からない観光客には親切に質問に答え、常連客には何も言われなくてもいつものメニューをすっと運ぶ。名店といわれる京都の歴史ある喫茶店に共通する魅力です。〈イノダコーヒ〉で大好きなのが「ハムトースト」。具はシンプルにハムとキュウリのみで、甘くないおやつの位置づけです。
〈 イノダコーヒ本店 〉
住所:京都府京都市中京区堺町通三条下ル道祐町140
TEL:075-221-0507
営業時間:7:00〜17:30LO
定休日:無休
席数:211席
公式サイト:https://www.inoda-coffee.co.jp/
大阪|〈 ニューアストリア 〉
食べやすさ、お得感。真のサービス精神が喫茶にも根付く。
大阪の昔ながらの喫茶店のコーヒーは濃い。その理由は、「薄いとコーヒー豆をケチっとると思われるからや」と、ある喫茶店でうかがいました。おいしさにプラスして、ささやかな心づかいが厳しい大阪人を満足させてきたのです。そのひとつが“食べやすさ”。〈ニューアストリア〉の「カツサンド A 野菜入」は厚みがあり、ひとくち大にカットするのは難しいと思うのです。それをスパッときれいに切って出してくれる。これぞ職人技!
〈 ニューアストリア 〉
住所:大阪府豊中市新千里東町1-3-8 せんちゅうパルB1
TEL:06-6831-2537
営業時間:8:00〜15:30LO
定休日:木、第4水休
席数:20席
神戸|〈 エビアンコーヒー 〉
明治時代から西洋文化の入口として栄え、外国人居留地ができた神戸は、“舶来”の食文化がいち早く開花。昭和時代には、日本を代表するコーヒー企業も誕生しました。関西で初めてサイフォンコーヒーを出した〈エビアンコーヒー〉は、シフォンケーキなどスイーツも人気。
〈 エビアンコーヒー 〉
住所:兵庫県神戸市中央区元町通1-7-2
TEL:078-331-3265
営業時間:8:30〜18:30、日祝9:00〜18:00
定休日:水休(祝の場合は営業)
席数:45席
公式サイト:https://www.evian-coffee.com/
神戸|〈 フロインドリーブ 〉
また、創業100年になる〈フロインドリーブ〉は、ドイツ人である創業者がドイツパンの魅力を広めたとして有名。オープンサンドウィッチはヘルシーで彩りも楽しい一皿です。
〈 フロインドリーブ 〉
住所:兵庫県神戸市中央区生田町4-6-15 2F
TEL:078-231-6051
営業時間:10:00〜17:30(17:00LO)
定休日:水休(祝の場合は翌休)
席数:70席
公式サイト:http://h-freundlieb.com/wp1/
愛媛|〈 島のモノ 喫茶 田中戸 〉
土地の誇る柑橘を使ったスペシャルグルメに出合える街。
土愛が強い愛媛の人々は、みかんやいよかんをはじめとする愛媛産の種類豊富な柑橘類が大好き。喫茶店でも地元産の柑橘類を使ったスイーツやしぼりたてのジュースなどに出合えます。〈島のモノ 喫茶 田中戸〉では、県産フルーツにこだわった氷菓子(かき氷)が人気。オーナーの実家で栽培した柑橘を使ったシロップは、いきいきとした果実感があり、キュッとした酸っぱさと舌に残るほろ苦さが、こたえられないおいしさ。自然の恵みの豊かさに目をみはります。
〈 島のモノ 喫茶 田中戸 〉
住所:愛媛県松山市住吉2-8-1
TEL:090-6280-3750
営業時間:11:00〜18:00頃
定休日:水休
席数:16席
Instagram:@tanaka_do
福岡|〈 珈琲美美 〉
伝統的コーヒー店と最新ショップが並ぶ魅惑のコーヒータウン。
福岡はコーヒーが熱い町。歴史あるコーヒー店もあれば、サードウェーブ前後にオープンして人気を集める若いロースター&カフェも多数あり、層の厚さを感じます。濃くて苦いコーヒーは飲めない…そんな人におすすめしたいのが、〈珈琲美美〉の「冷たい美美風マザグラン」。ワイングラス入りの、生クリームを浮かべたアイスコーヒーです。温かいコーヒーをシェーカーに注ぎ、桶に入れた巨大な氷の上で、素早く手で回転させて冷やしたもの。かき混ぜずにどうぞ。
〈 珈琲美美 (コーヒーびみ)〉
住所:福岡県福岡市中央区赤坂2-6-27
TEL:092-713-6024
営業時間:12:00〜17:00
定休日:月、第1火休(他の火曜は豆の販売のみ)
席数:20席
公式サイト:https://cafebimi.com/
沖縄|〈 喫茶六曜舎 〉
チャンプルー精神が息づく独自の喫茶店文化が発展。
沖縄ではさまざまな要素をチャンプルー(混ぜること)して、独自の食文化が生まれてきました。米軍基地由来のアメリカの食文化の影響も色濃く残っています。古くからある喫茶店では、ナポリタンを注文すると自動的にトーストが付いてくることが多い。コザにある1979年創業の〈喫茶六曜舎〉の「六曜舎ナポリタン」は、一皿の上にナポリタン、ト―スト、サラダ、目玉焼き(昼のみ)、鶏のからあげを盛り合わせた欲張りなメニュー。あとをひくおいしさです。
〈 喫茶六曜舎 (きっさ ろくようしゃ)〉
住所:沖縄県沖縄市照屋1-13-7
TEL:098-938-2944
営業時間:12:15〜15:15、18:00〜21:00
定休日:日休ほか不定休あり
席数:24席
全面喫煙化
illustration : Yui Watanabe text : Yumiko Ikeda
No. 1220
喫茶店に恋して。/道枝駿佑 (なにわ男子) 2023年04月27日 発売号
一日一杯のコーヒーを素敵な喫茶店でゆっくりと飲めたら。今号では、喫茶のスピリットを受け継ぐ新店、本や音楽、器選びに空間づくり…店主の哲学が隅々までいきわたる「学び」のある喫茶店などを徹底ガイド。全国の心地いい空間とおいしいコーヒーで、あなたのオアシスになる一軒を見つけてみませんか。コーヒー好きも魅了する、新たな日本のお茶の世界を覗く第二特集も必見です。
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