4歳も終わるのに、デビューしたいと思っていたあれこれを自粛生活で始めるチャンスに恵まれない日々。キャンプもスキーもみんな我慢。小さなことで言えば、キッザニアもそのひとつ。

3歳で類似のKando! に誘われ楽しんで以来「いつかはキッザニア!」と思ううちに時は流れ続けました。そんなある日、仲良しのお友達から「園児限定の日があるんだって、一緒に行かない?」とお誘いを受けた。本人に確認すると「あのお仕事のやつ? いく!」と前向き回答、喜び勇んでチケット購入。当日は早めにお迎えすると「おれ、お仕事行ってくる!」とクラスメイトに告げるノリノリ前のめり。何をやろうかと話しつつ、タクシーを飛ばして会場へ向かった。すでに友人たちは場内で人気のアトラクションに並んでいる様子。

母は甘かった。そう、息子は繊細くん。早くお迎えするために残った仕事の処理に追われ、開場ギリギリの時間に焦る空気を醸し出してしまったうえ、万全の事前準備も怠った。やってはいけない「無言の圧」と「伝えたつもり」のW使いをやってしまった。

通路に見つけた17アイスの前で足止めされる息子を引きずり、ちびっこだらけの場内へ。お友達を探しつつ、「このお仕事やる? こっちは?」と確認するも、小声で「帰りたい」が始まった。人気のお菓子作りに並ぶ友人を見つけ「一緒にやろうよ!」と手を引かれるも、その場に座り込み断固拒否。「まみいひとり行ってきなよ」と言う始末。

ようやく車の運転シュミレーションに興味を示すも、あえなく身長制限でNG。

しょんぼり場内に散らばる友人たちのお仕事を見学し、誘われては「帰りたい」と逃げるの繰り返し。

「チケット代+タクシー代! 仕事も終わってないのに、無駄骨か!!」

頭の中でぐるぐる巡るクレームを「いや、それはすべて母の勝手な事情。ここで嫌な対応をしたら、彼は一生根にもつレベルでお仕事嫌いになる」と、葛藤。場内の熱気と脳内調整で酸欠になりかけ、ひとまず2人で冷たいドリンクを買って、空いているテーブルについた。

さすが園児限定、座って放心状態で場内をながめていると、何組もお友達親子に遭遇。みんな「一つでもたくさんやりたい!」と秒を惜しんで走り回り、誇らしげに仕事の成果を見せてくれる。その姿と私のお尻の下、椅子の下に隠れる息子のコントラスト。虚しさが込み上げる。

「どうした? 来たい、やりたいって言うからチケットを買って来たんだよ」

椅子の下を覗き込んで、話しかけてみた。

事前に「この前行ったのと同じようなお仕事やりに行く?」と何度か確認したものの、写真や画像を一つずつ見せなかったのが痛恨のミス。「この前の壁登るのがやりたかったのに」「やりたいのがない」と文句がはじまった。彼は正しい。消防士や警察官、医者、運転手などのメジャー職業に興味がなく、好みはニッチなもの。となると、確かに同じ職業はひとつもない。

「じゃあ、もう帰ろ。いいよ、マミイも疲れた」。そう告げた時、背後に誰か立っていた。

会場案内のお兄さん(2周目)。さっきは話しかけられるのも嫌で逃げ出したものの、今度は「もう帰れる」安心感からか、話を聞く気になったらしい。

宇宙人さながら、両側から手を取られ場内を3周半。すでに入場から2時間が経過、受付終了したアトラクションも多数。お兄さんがまだ入れる仕事をおススメするも、首を横に振り自分の足元しか見ないぴぴ。

お兄さんが、笑顔とともに最後の切り札を切った。

「ぴぴくん、じゃあ、ママと一緒にアルバイトはどうかな? ママも横にいられるし、時間も短いけど大切なお仕事。お金をもらえるよ」

ようやく顔を上げ、小さく頷きアルバイト紹介所へ足を踏み入れた。

ぴぴの記念すべきキッザニアデビューは

「交 通 整 理」

そう、首からカウンターとストップウォッチを下げて、通行人をひたすらカウント。

地味……地味すぎない? 楽しいのか?

不安は母の杞憂、さすがプロ。母の横で誰の目にも触れぬ路肩にちょこんとすわり、アルバイトをやり切った後は、少し元気と自信を取り戻していた。

そうか、そうだったよね。

人混みも苦手だし、会場の熱気、大きな音とピカピカ光るの、私でさえ息苦しかったよ。良かれと思って大人の、いや私の価値観を押し付けちゃったんだな。ごめんよ、ぴぴ。

頭を冷やした母。大人のいろんな事情と期待はすべて一旦終了。

アルバイトで手に入れたお金を銀行に預けた後は、さっきまでとは別人のように誇らしげな姿で現れた。

切り替えて残りの2時間を楽しめるよう、空いていて、ぴぴが好きそうな細かい(地味な)仕事をピックアップ。その中から選んだ証券会社は、なんとお仲間ゼロ。たったひとりで場内リサーチに出かけ、投資レポートを書くらしい。大丈夫かなあ……。

不安な母をよそに、ぶかぶかのジャケットを着て用意万全のぴぴが近づいてきた。

「マミイ、疲れたでしょ。僕はお仕事行ってくるから、そこで座ってドリンク飲んでていいよ。僕のドリンク、守っといて」

と言い残し、颯爽と闇に消えて行った。そう言われても気になるのが親心。なにせ、ついさっきまでお尻の下でベソをかいていたわけで。迷った末にサングラスで変装し、少し間を置いて後を追った。

いた、いたいた。

ハンバーガーを作る人気アトラクション内で、シェフコートの子たちに混じって、ぶかぶかジャケット! 何やら真剣にメモを取っている。そして、手元見たさにちょこっと身を乗り出した瞬間、バチッと目が合ってしまった。

仕方なくthumbs upしその場を立ち去り、ドリンクを守る仕事に終始した。

閉館まで残り45分、証券外交員をやり切ったら、ようやくエンジンがかかってきた。

最後は満を辞して、大好きなゲームのお仕事。誰よりも元気よく、ノリノリで周りの子とも協力体制。

蛍の光が流れ、それぞれ10近くのお仕事を終えた友人2人が集まって来た。友人が見守る中、嬉しそうにゲームソフトのケースを抱えて現れたぴぴ、とってもいい顔してた。5時間ほど滞在して、たった2つ+バイト。ママ友には驚かれたけど、いいじゃない。

お友達とお買い物を共に楽しみ、彼らはパパがお迎えに来ていたので、出口でバイバイ。

ふたり手をつなぎ駅に向かう道は、いつものマシンガントークで仕事のディテールを話しつつ、元気な足取り。抱っことも言わず、家まで歩いた。

「食べ物系をやれば、食事の時間ロスしなくていい」とか「これ人気だから先やっちゃお」とか、全部ぜんぶ大人の事情。自分で決めて失敗したら、次回反省してプランしたらいい。手も、口も、出しちゃダメだ。信じて任せて、待つしかない。

母とは生きる時代も違えば、人格も性格も一緒じゃない。母にできるのは環境を整え、準備万端にし、盛り上げるだけ。

自分の意思で選んでやり切った後には、こんなに清々しく、ちょっぴり頼りになる笑顔が待ってる。自分で選ぶからこそ成長だし、気づきがあるよね。

「ジャケットを着てパパみたいな仕事をした」ことが誇らしげな息子とともに

「母の仕事」をひとつやり切れた私も成長できた、お仕事体験の一幕でした。