去年10月、北海道釧路市の病院の玄関前で、4歳の女の子と母親を乗用車ではね、死傷させた罪に問われている78歳の男…初公判は即日結審し、禁錮1年8か月を求刑されましたが、事故の前、危険な“前兆”が何度も見られていたことが明らかにされました。

 起訴状などによりますと、根室市の無職、熊谷勉被告78歳は去年10月17日、市立釧路総合病院の駐車場で、ブレーキと間違えてアクセルを踏み込み、玄関から出てきた4歳の女の子と40歳の母親を乗用車ではねるなどし、女の子を死亡、母親に全身打撲を負わせた過失運転致死傷の罪に問われています。

 27日午後、釧路地裁で開かれた初公判で、起訴内容について「間違いないか?」と問われた熊谷被告は「いえ、特にないと思います」と認めました。

 冒頭陳述や被告人質問などでは、当時の状況、さらに事故の前、危険な“前兆”があったことなどが下記のように明らかにされました。

■事故の状況

・根室市⇒釧路市の運転は妻
・トイレに向かった妻と駐車場で運転交代直後に事故
・現場は病院の玄関付近
・歩行者の往来が想定され、とりわけ注意を払わなければいけない場所
・見通しが良く、2人に気付くのは容易

・2人に気付いた際、ブレーキを踏むべきだったのに間違えてアクセルを踏み込む
・女の子と母親を轢いた後、前方の介護タクシーに衝突
・まわりを確認することなくバックし、女の子を再度、轢く
・頭が真っ白、パニックになって「覚えていない」
・「大丈夫?」と一言だけ声をかけたようだが、それも「覚えていない」

■危険な“前兆”

・事故の2年前の2021年くらいから、車庫入れの際、車をぶつける
・バックで駐車の際、1回では入れられない
・思うように真っ直ぐ進めない
・バックの際、両側のドアミラーを上手く活かせない
・2022年秋ごろから自主返納を意識
・死亡事故は10月だったが、冬になる11月には自主返納のつもり
・ただ、ブレーキとアクセルの踏み間違いは、事故前、一度もなし

 検察は、こうした危険な“前兆”があったのに「自らの運転が不自由になっていることを感じていながら『移動に便利』という身勝手な理由で運転を続けたことに酌むべき事情はなく、4歳の幼い命が奪われた結果は取り返しがつかない」などとして、熊谷被告に禁錮1年8か月を求刑。

 これに対し、弁護側は「熊谷被告が事件後に車両を処分した上、免許取り消しの行政処分を受けていて、今後、運転することがない。反省し、被害者らに謝罪もしている」として、執行猶予付きの判決を求めました。

 一方、遺族は事故直後、被告は「大丈夫?」と一言だけだったと憤り「最愛の娘の命と未来、家族の幸せな時間を一瞬にして壊され、法律で与えられる最大限の刑罰を与えていただきたい」と述べました。

 最後に熊谷被告は「本当にとんでもないことをしてしましました。申し訳ない気持ちでいっぱいでございます。どうか、どうか、私の犯した罪をお許しいただきたいと思います」と述べ、裁判は即日結審しました。

 北海道では、今週も判明しているだけで銀行の外壁、クリーニング店の灯油タンク、コンビニエンスストアの外壁、ガソリンスタンドの給油機、自動車販売店となり住宅などに高齢ドライバーの車が突っ込む事故が相次いでいます。
 


 これが外壁やタンクではなく、幼い子どもだったら…判決は、4月10日に言い渡されます。