北海道の食を深掘りして、その価値を多くの人に届けるHBCの新プロジェクト「いっちゃんおいしいHBC」です。
今回紹介するのは、北海道を代表する農産物“ジャガイモ”です。でも、ただのジャガイモではありません。
おそらく…国内で“いっちゃん甘〜い”メークイン。世界が注目する美味しさには、もちろんヒミツがあるんです。

北海道帯広市のレストラン「マリヨンヌ」。

フランスのレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」や、ミシュランの「ビブグルマン」にも掲載されている注目の店です。

マリヨンヌ 小久保康生シェフ
「十勝の食材を使わせてもらいながら、フランス料理の技法をベースに作る料理」

この日、シェフのもとに、待ちに待った食材が届きました。

「こんにちは!ありがとうございます。“2年熟成”ですよね」

地元の農家、井上慎也さんが直接持って来たのはメークイン。お馴染みのジャガイモですが、切ってみると…。

マリヨンヌ 小久保康生シェフ
「わかります?蜜になっている。普通のジャガイモではあり得ないこと」

切り口は、まるで果物のようにジューシー…蜜で満ちていました。その料理の味は…。

大内孝哉カメラマン
「口の中で甘みが広がり、シェフの味付けも加わり、とても美味しいです」

井上さんによると糖度は12度から13度。

普通のジャガイモが、糖度が4度から5度と言われるなか、井上さんのジャガイモは、そのおよそ3倍。サツマイモ並みの数値です。

なぜ、こんなに糖度が高いのか…。井上さんの農場を訪ねました。

とかち井上農場 井上慎也さん(47)
「ここが『雪蔵』。雪を約100トン蓄えているが、雪の冷気を使って中を冷やして、ジャガイモを熟成させている」

雪蔵の中は、1年を通して1℃近くにキープされ、井上さんが収穫したメークインが眠っています。

とかち井上農場 井上慎也さん(47)
「令和3(2021)年に収穫して、年が明けましたので、足かけ3年目」

ジャガイモは、寒い場所に置くと水分が凍って、組織が壊れてしまうのを防ぐために、自ら蓄えていたデンプンを、凍りにくい糖に変えて身を守る性質があります。

井上さんは、これを応用して、収穫後2年以上、貯蔵することで甘みを“増し増し”にしたメークインを「二冬越」(ふたふゆごし)と名付けて、独自にブランド化しました。

とかち井上農場 井上慎也さん(47)
「もともと秋に収穫して、出荷が春に終わると、夏場に遊ばせてしまう部屋になってしまうのがもったいないので…」

地元の料理店に売り込むと、想像を超えた甘さが観光客に大好評。評判が口コミで広がり、帯広市のふるさと納税の返礼品にも採用されました。

さらに2023年、野菜の全国品評会「野菜ソムリエサミット」で金賞を受賞。全国の飲食店から注文が絶えません。

種まきが始まりました。今年は10ヘクタール作付けします。

井上さんは今年、「二冬越」の販売先を、全国のスーパーなどにも広げるとともに、雪で貯蔵する技術も北海道内の生産者に伝えたいと意気込みます。

とかち井上農場 井上慎也さん(47)
「雪を使った“付加価値のジャガイモ”は、(雪が降らない地域の人は)知らないでしょうから、そのような地域の人にも広く食べてもらえるようになればいい」

農家のアイデアと雪の恵みが、北海道の食を進化させています。

“3年越し”も試してみようと考えているようですが、甘さが抜けてしまうのか、さらに甘さが増すのか、そこはまだわからないということです。