甲子園出場2回の古豪・我孫子。復活のカギは自ら殻を破ること
千葉県立我孫子高校。
1970年に創設と、千葉県内では比較的新しい公立校だが、なんと1978年に武藤信二投手(元ロッテ)を擁し、初の甲子園出場。1991年には荒井 修光投手(北海道日本ハム 球団職員)を擁しベスト16と我孫子市が誇る実力校へ成長していった。なんと同校には専用グラウンド、トレーニングルーム、細々としながらも食堂があり、県立高としては恵まれた環境の中で日々練習をしている。
そんな我孫子高校のグラウンドに行くと、学校のスローガンである「”生徒のために”」という思いが表現されていた。
全体練習は18時前後で終了。選手が練習メニューを考案する理由
ノッカーも選手が務めるなど、選手主体の練習が我孫子流
我孫子市のシンボルとされる手賀沼近くに所在する高校から少し離れたところにグラウンドがある。野球部員は練習前にミーティングを行っている。柴田遼太郎監督は一歩引いたところで選手たちを見守っている。
そう、オフ期間は選手たちが練習メニュー、練習時間を設定しているのだ。実際に取材日では16時に練習が始まり、18時前には全体練習が完了した。その後は課題練習という名の自主練習に入り、それぞれがメニューをこなす。
こういう流れになった経緯を柴田監督はこう語る。
「私がメニューを組んでこうやるぞとやったら、ある程度は強くなると思うんです。しかし“ある程度”なんですよね。ベスト16とかベスト8とかそれぐらいだと思うんです。でも彼らはもうちょっと上手くなりたいとか強くなりたいと言っているので、だとすれば一番は、自分自身が考えて“よし、これだ!”って強くなっていけば、殻が破れると思うんです。
今はやっぱり、指導者が与えたメニューで殻が破れるのはそんなにいないと思うので、そうなると結局は自分の器の中でしか野球ができないので、大きくならないかなと。できれば彼らが自分の器を大きくして殻を破った方が、野球以上に得られるものがあるのかなと思います。練習を見ていると、は言いたいこと、指摘したいことはたくさんあるんですけどね」
柴田監督は2013年に監督に就任。2013年秋には千葉英和、東海大市原望洋を破ってベスト16入り、その後は強豪校に接戦と毎年、好チームを作り上げている。
だからこそ見えてくるものはある。しかしそこは選手の成長のため。ぐっと我慢をしている。だからこそ柴田監督は選手同士が指摘し合うことを望んでいる。
すると練習日に行われたノックの様子を見ていくと、選手同士が守備の動き、連携の乱れがあれば指摘しあっている。柴田監督は「最近になり、指摘する声が多くなり、良くなってきました」と目を細める。
柴田監督が選手に自主性を求めるのは殻を破るだけではなく、県立校ならではの事情がある。
「私も我孫子に赴任して5年が経ちました。いつ転任が決まるか、分かりません。監督の色が強すぎたり、監督主導でやったりすると、何もできない。生徒たち自身が考えて動けるようだと、いざ新任の先生になった時に、色に染まりやすいだろうし、自主的に動けることは大きい」
目先の事ではなく、先を通してみている。柴田監督の方針はもちろん選手たちは理解している。渡辺柊介主将は
「自分たちは自立しなければいけないと思うので、監督に頼らず、大会でも自分たちになると思うので、自分たちでやるようにしています」
このように全体練習の時間が短いと帰る選手はほとんどいない。この日は、ノックで多くの内野手が捕球ミス。その反省をして内野手自らノックを志願。選手がノックを打ち、捕球を重ねる。そしてティーバッティング、トレーニングとやることは様々で、自主練習が終わるのは20時、21時まで及ぶ。
主将の渡辺はバットが下がる癖を課題としており、「上から低いライナーを打つイメージでやっています」と打撃練習から工夫しており、さらに投手陣から信頼を得られるよう、古田敦也氏の現役時代の動画を見てキャッチングを学んでいる。
エース・綾部がノックを打ち、強化中!
ノックをしているのはエース・綾部郁海
そんな我孫子の課題は取材日の全体練習でもノックをやって終わったように、守備だ。昨秋は夏休みからでも打撃をメインテーマに取り組み、夏場でも1日1000本とめいっぱい振り込み、守備練習は1週間に1度あるかないかぐらいの割合で打撃に打ち込んだ。その結果、敗者復活戦では小金の好投手・由良 一翔を攻略し、県大会出場を決めた。そして敗れた市立柏戦でも先発全員安打を記録したが、あと1本が出なかった。攻撃面の課題はもちろんあるが、選手たちにとっては守り切れなかったという思いの方が強い。
他校の守備練習と違うのは、全体練習でノックを打つのは柴田監督ではなく、最速138キロ右腕のエース・綾部 郁海なのだ。なぜエース・綾部がノックを打つようになったのか。その背景を説明すると、もともとは打撃専門の選手がノックをやっていたが、その選手が「守備も磨いていきたい」と柴田監督に直訴し、ノックはだれがやるかという話になり、綾部が打つ流れとなった。
その綾部だが、打つ気は満々。「打撃は好き」と語るように、ノックはどうすれば打てるのか、シーズン中にノックをしていた柴田監督のノックを見ながら研究し、今では柴田監督も「なかなか上手い」という腕前となった。綾部は捕球できるか、できないかの打球を絶妙に打ち分け、多くの選手が捕りづらそうにしていた。綾部は「正面に打っても意味が無いと思うので。実際に試合ではギリギリのゴロも捕らなければいけないので、練習が実戦に生きればいいなと思って」
投げる側にとっては内外野の守備力はアウトを取る確率に直結する。打ち取った打球を当たり前にさばいてほしい。その思いで綾部は心を鬼にして、ノックバットを振っているのだ。
内野手もその綾部の意図を感じ、自分自身の捕球に納得がいかなければ自主練習ではノックを受けて守備を磨いているのだ。

グラウンドに挨拶をする我孫子高校の選手たち
1月は基礎練習期間だったが、2月、3月と実戦練習に入っていく。今年、我孫子が目標とするのは地区予選・県大会を含めて、5試合以上は経験すること。ちなみに5試合以上、戦えば、夏のシードは確定となる。柴田監督は「できるだけ春の公式戦を多く戦って経験を積んで、夏に生かしていきたい」と勝利を目指している。
ただ県大会に進めるのは容易なことではない。我孫子は第5ブロックに属するが、このブロックには県大会のシード入りした中央学院、千葉敬愛を除き、八千代松陰、佐倉、四街道と実力校が多数ある。柴田監督は「はっきりいって、地区予選を勝ち上がるのも厳しいブロック。それでも勝てる実力をつけるのがこの冬の目的です」と語る。
今年は昨夏から鍛え、公式戦でも力量を発揮した打力に加え、最速145キロを狙う綾部の投手としての素質は県内の指導者から高く評価されている。綾部が順調に成長を示し、課題とする守備力に磨きがかかれば、今年の我孫子は県内の強豪校を脅かす存在として見逃せないチームになるはずだ。
(文・河嶋 宗一)
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