ドラフトといえば、ドラフト1位を中心に指名選手が脚光を浴びるが、指名漏れで大きくニュースになった選手がいる。

 それが現在、さわかみ関西独立リーグ・兵庫ブルーサンダースに所属する落合 秀市投手(和歌山東出身)だ。

ドラフト後から周りの引き留めもあり、野球を継続

落合秀市(和歌山東出身)

 和歌山東時代、最速149キロの速球だけではなく、多彩な変化球を投げ込む大型右腕として大きく注目を浴びていた。しかし2019年のドラフトは指名漏れを味わう結果に。注目選手が指名漏れになるケースは毎年訪れるが、落合が指名漏れでも野球ファンを騒がせるほどの選手にもなったのは次の発言だ。

 「野球を辞めて、就職する」

 このニュースが出た瞬間、世間は大きな騒ぎとなった。当の本人はこの時の状況をこう振り返る。

 「ずっと(プロ)いけるやろと思っていて。でも蓋を開けてみたら、いけなかったので、どうしようと思って、じゃあ就職でいいか。と軽い気持ちでしたね」

 だが、周りは慌てて引き止めた。指導者、そしてチームメイトからも落合に野球を続けてほしいと懇願された。

 「いろいろと声をいただき、改めて野球をやるか、やらないかを改めて考えるきっかけとなりました。」

 その後、誘いがあった関西独立リーグの兵庫ブルーサンダーズに入団し、選手として野球を継続することとなった。入団が決まったあと、落合は兵庫県三田市で一人暮らしを始めた。生活費を稼ぐために週3,4回は飲食店のアルバイトを行った。今までは家事は親に任せていた落合。最初はしんどい日々だったが、徐々に慣れてきた。

 キャンプにも合流し、実戦登板をしていく落合。橋本大祐監督は「やはり指がかかったときは素晴らしいボールを投げますし、右打者のアウトコースには、凄い良い球を投げられる。スライダーとストレートと一緒のフォームで投げられるので、能力は高いものがあります」と投手としての才能を高く評価する。

 入団後、課題として取り組んだことは、2つある。それが「最速150キロ」と「伸びのあるストレート」を投げることだ。インタビュー中、飄々とした表情で語っていた落合だが、投球について語り始めると真顔になる。

 「まずキャッチボールでは、シュートしないこと、スライダー回転しないよう、真っ直ぐな軌道で投げられるよう、心がけて投げています」

 そうしてキャッチボールを見てみると、だいぶ遠い位置でもライナー性で投げ込んでいく。軽く投げているのにすっと伸びていくのだ。やはり素質は非凡なものがあることが伺えた。

 高校時代と大きく変わったのは年齢が大きく違う選手と接することができること。高校時代まで基本的に同世代で大人と接するのは指導者のみ。だが、独立リーグに入れば、大きく年が離れた先輩もいる。「やはりいろいろなことが学べます」と語るように、投手陣の先輩からは色々なアドバイスを受けながら、自身の調子を確かめてきた。

高校時代と比べれば自分で考えて練習するようになった

落合秀市(和歌山東出身)

 落合はここまで6試合に登板。本人としては満足いく投球はできていない。それでも、高いレベルの野球に触れ、結果は簡単には出せない状況下で練習はより身に入るようにいなった。

 そして兵庫ブルーサンダーズの練習は元プロの橋本監督の方針により、基本的に自主性を重んじる。高校野球のように、指導者が追い込むスタイルではない。日々の練習メニューの中では、妥協して、手を抜くこともできる。

 橋本監督は「高校生みたいに、指導者がやらせてというわけにはいきませんし、また授業が終われば当たり前のように学校のグラウンドで練習ができることはありません。今回のように球場で練習ができるのは、1週間でもそれほどありません。もっと場所も狭くて、時間も少ない。高校時代と比べれば、空いている時間が長いので、空いている時間の中で野球について考えてやれるか。独立リーグは自分の意識はどこにあるのか。そこに向けて合わせるかだと思います」

 落合に質問した。高校時代の自分に戻って、今の環境になったら、練習はしっかりできるかと。落合は即答で

 「間違いなくやっていないですね。甘えが出てやっていないと思います。せっかく兵庫にきて野球をやっているので、プロになるために練習を頑張りたいと想います。サボろうとは思っていないですね」

 橋本監督からは「高校時代、全く投げ込みはしていなかったようですが、プロにきてだいぶ投げるようになってきましたし、練習量も増えてきたと思います。それでもまだまだですが」と少しずつ変わってきた様子を語る。

 そしてNPB入りへ向けてアピールしたい落合は9月18日、関西独立リーグ選抜に選ばれ、千葉ロッテとの二軍戦に臨んだ。先発した落合だったが、荻野貴司に2ランを浴びるなど、3回を投げて6失点。NPBのレベルの高さを実感した。

 ただ落合はまだ19歳。今年、NPB入りができなくてもまだチャンスはある。長いスパンで育成していけば、気を熟した状態でNPBを狙える選手なのだ。それは橋本監督も認めている。

 「心身の成長をしていけば、まだまだチャンスはあると思います。彼の場合、良い意味でも悪い意味でも幼い。我々の教えに対しても素直に耳を傾けて、しっかりと練習をしています。彼には試合に入るまで、『これだけやったんだから結果を出せる』と自分で納得できるまでの練習をしてほしい。広く見ていけば、大きな可能性は持った投手です」

 投げる姿を見れば、多大な可能性を秘めているのはすぐに分かる。すぐにスイッチが入らなくても、少しずつ大人となって、大きく才能が開花する瞬間を見てみたい。その時、先にNPB入りした同世代の投手に負けないパフォーマンスを発揮してくれるはずだ。

(取材=河嶋 宗一)



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