ボールボーイとして目の当たりにした17年夏の仙台育英戦

小泉 航平(大阪桐蔭出身)

 名将からの教えを受け、経験値も積んだ小泉は3年春に選手として念願の甲子園デビューを果たす。チームはセンバツ連覇を達成するが、チームとしても個人としても戦うごとに成長を実感していたそうだ。

「甲子園は何とも言えない凄いところで、1試合するだけで凄く成長できる場所だなと思いました。1試合、1試合重ねるごとに自信もついてきますし、その自信がプレーにも繋がってくると思います」

 試合での成功体験が自信を生み、自信が新たな成功体験を引き寄せる。こうした好循環でチームは勝利を重ね、成長を続けてきた。特に延長12回サヨナラ勝ちを収めた準決勝の三重戦が最も印象に残っていると話す。

 「準決勝で粘り勝てたのが、その後の大会や甲子園に凄く活きてきたと思います。『後半、後半』と西谷先生は試合中にも仰っていたので、自分たちの野球ができたのがその試合だと思います」

 夏の大阪大会準決勝では1点ビハインドの9回二死走者なしから逆転勝ちを収めたが、それも春に苦しい試合を勝ち切れたことが大きかったという。大舞台で難しい試合をものにしたことが、チームの大きな財産となっていた。

 また、前年のボールボーイの経験が活かされたのが、夏の甲子園3回戦の高岡商戦だった。1年前は3回戦の仙台育英戦で逆転サヨナラ負けを喫していたが、3回戦の第4試合でロースコアの接戦と共通点は多かった。

 同じ時間帯の試合ということもあり、小泉も意識はしていたそうだが、「近くで見て二度とああいう思いはしたくないという強い思いになっていたので、一歩引いて冷静に試合に入れていたと思います」と前年の経験も踏まえながら上手く乗り越えることができた。

 数々の修羅場を潜り抜けた大阪桐蔭は春夏連覇を達成。「今までにない感覚というか、言葉に表せないくらいの感じでした。春夏連覇を目標にやってきたので、最高の形で終われたので、良かったですね」と喜びを噛みしめた。

吉田輝星、奥川恭伸をリードしたU18での経験

小泉 航平

 夏の甲子園が終わった後にはU-18日本代表に選出され、U-18アジア選手権に出場。代表での活動は短期間だったが、貴重な経験を積むことができたと小泉は話す。

 「短期スパンで色んなピッチャーの特徴を覚えて、良いところを引き出さないといけないので、そういうところでは凄く勉強になりましたし、他の国の選手たちとも対戦出来て、色んな戦い方や野球が学べたかなと思います」

 代表でバッテリーを組んだ投手の中には後にプロへ進んだ選手もいる。その一人が金足農の吉田 輝星(現・日本ハム)だ。夏の甲子園決勝で対戦した時は本調子ではなかったが、「受けてみると、改めて凄い球だと思いました。繊細な投げ分けができることもその時に感じました」とバッテリーを組むことで、能力の高さを実感した。さらに明るく、人懐っこい性格だったこともあり、コミュニケーションは取りやすかったという。

 また、2年生で唯一代表入りしていたのが、星稜の奥川 恭伸(現・ヤクルト)だ。2年秋から世代トップのパフォーマンスを見せていた奥川だが、「初めてブルペンに入った時にスライダーや真っすぐのキレが一つ下とは思えないくらい良かったです。スライダーはなかなか初見ではとるのが難しいくらいのキレがあったので、凄く良いピッチャーだなと思いました」と当時から小泉が驚くほどのボールを投げていた。それ故にその後の奥川の活躍を見ても全く驚かなかったそうだ。

 大阪桐蔭で濃密な3年間を過ごした小泉は、「プロの世界で活躍するために社会人でもっと技術を磨きたい」とNTT西日本に進むことを決めた。自らの実力に自信を持って入社したが、1年目は社会人のレベルの高さを痛感する1年となった。

 「全てにおいて技術不足だと感じましたけど、1年目はそういった意味でもいい期間だったと思います。肩にも自信はあったんですけど、いつもだったらアウトになっていただろうなという球でも走塁の上手さでセーフになったりしていましたね」

 入社早々から壁にぶつかったが、田中 孝宗コーチのマンツーマン指導で少しずつ改善を重ねていった。中でも力を入れてきたのはキャッチング面だ。

 「スローイングも全てはキャッチングから繋がっていますし、良いところで捕れないと握り替えミスもします。ワンバウンドを止めるのもキャッチングの構えが固まってしまうと反応も遅れます。よく(大原周作)監督や田中コーチに教えてもらっているのは掌で捕ると握り替えがスムーズになるということです。網で捕ってしまうと、どうしても手の感覚のないところで捕ってしまうので、掌で捕ることが大切だと思います」

 2年間、地道に力を蓄えてきた小泉が今年の目標に掲げているのが正捕手定着だ。昨年までは同期入社で大卒の辻本 勇樹にスタメンマスクを譲ることが多かったが、今年はその座を奪いに行くつもりでいる。

 「今年は自分の中で勝負の年です。2年間、先を見ずに地道にやってきたことを、この1年で結果として求めていかないといけないので、正捕手目指してやっていきます。まずはここで試合に出て、結果も残したい。もちろんプロに行くためにというのは常に考えています」

 鍛錬の期間を経て、飛躍の時が近づこうとしている小泉。社会人の舞台で輝きを放つ日もそう遠くはなさそうだ。

(記事=馬場 遼)