主に加齢で黄色靱帯という靱帯が分厚くなるなどして脊柱管が狭くなり、脊柱管を通る神経が圧迫される「脊柱管狭窄症」は、高齢者の10人に1人は該当するともいわれる。老親のために、知っておくべきことは?

「下肢やお尻にしびれ、痛み、重だるさが生じるのが脊柱管狭窄症です。進行すると歩行が困難になります」

 こう言うのは、さいたま記念病院整形外科の油井充医師(認定脊椎脊髄病医・脊椎脊髄外科指導医)。脊柱管狭窄症が疑われる場合、レントゲンやCT、MRIといった画像検査を行うが、画像検査の結果と症状の強さは必ずしも一致しない。

「狭窄はさほどでもないのに症状が強い人や、画像では狭窄があるのに症状がない人もいます」(油井医師=以下同)

 治療は一般的に、飲み薬やリハビリ→ブロック注射→手術と進んでいく。手術までの治療法を保存療法というが、これら保存療法で完治する例はまれだ。

「たとえば薬で症状がまったくなくなっても、薬をやめて半年後、1年後、数年後にしびれや痛みが出てくることがあります。いずれは手術が必要になるケースも少なくありません。適切なタイミングで手術を検討した方がいいと考えています」

■タイミングを逃すと症状が消えずらくなる

 理由は4つある。まず、やがて「間欠性跛行」という症状が出てくる。しばらく歩くとしびれや痛みで歩けなくなり、休むとよくなるが、また歩き出すとしびれや痛みが出てくるもので、生活の質(QOL)が著しく下がる。

 次に、病歴が長引くほど、手術をしてもしびれが改善しにくくなる。

「特に、足裏のしびれは残りやすい。患者さんの中には『砂利を踏んでいるようだ』『皮を一枚挟んでいるよう』と話す方も。しかし、早い段階で手術を受ければ、しびれがなくなる可能性が高くなるのです」

「足裏のしびれ」が起こるのは、脊柱管狭窄症の中でも「馬尾型」というタイプ。このタイプは陰部の感覚が鈍くなり、肛門括約筋もまひしやすくなるため、膀胱直腸障害、つまり尿漏れや便を我慢できないなどの症状が出る恐れがある。まれではあるが、馬尾型に椎間板ヘルニアや背骨の骨折が加わると一気に膀胱直腸障害がひどくなるケースもあるので早い段階で手術を受けた方がいい。これが3つ目の理由だ。

 さらに、手術時は全身麻酔をかけるため、肺や心臓の機能が落ちていると受けられない。手術を決意したはいいが、その前の検査で手術が不可能になった……という人が、少数ではあるものの、いるのだ。

 では、手術を検討すべきタイミングは?

「脊柱管狭窄症の手術は『日常生活や趣味で何らかの支障を感じた時』が“受け時”です。しびれや痛みがそれほどひどくなくても、ゴルフや山登り、旅行を存分に楽しみたいから受ける、という人もいます」

 一方で、本人は手術を望んでいなくても、専門医として手術の検討を勧めるタイミングがある。「10〜15分くらいで間欠性跛行が出る」「歩けなくて買い物が困難」「立ったままの作業を10分も続けられない」「足裏のしびれが出てきた(前述の馬尾型の可能性があるため)」「膀胱直腸障害が出てきた」「進行性の脱力が出てきた」に該当する時だ。

「『脱力』は、かかとを上げて左右交互に体重をかけられるか、かかとだけで左右交互にステップを踏めるか、で簡単なチェックができます」

「手術で失敗して車椅子になるのでは」と心配する人もいる。しかしそのケースはめったにない。また、手術法にしても全内視鏡下脊椎手術(FESS)を含む内視鏡手術が今はあるので、負担が少なく手術を受けられることもある。

 なお、脊柱管狭窄症で手術を受ける年代で最も多いのは70代。

「私が担当した患者さんで最高齢は90代前半」とのこと。「もう年だから手術は……」は当てはまらない。