【健康長寿に役立つ高齢薬膳】三つ葉

 外出時、頻繁にお腹の具合が悪くてトイレに行きたくなって困る。便秘と下痢を繰り返して、お腹がいつも不快………。 日常生活に支障を来すことが多い「過敏性腸症候群」。腸の検査をしても問題がないのに、腸の働きに異常が現れる疾患です。主な症状として、下痢または便秘、腸で便が停滞してコロコロした固い便が出る、いつも残便感がある、あるいは下痢と便秘を交互に繰り返すなどが挙げられます。

 原因として、自律神経の働きが乱れることが腸に影響を及ぼし症状が引き起こされると考えられています。ストレスや不安、緊張、疲労の蓄積によって交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、腸の動きが過剰に速くなったり、腸管に痙攣が起こり、下痢や便秘といった異常が生じるのです。

 腸が敏感な状態が続くと、痛みの感じ方が強まって常にお腹が不快なため、脳に刺激が伝わり過剰なストレスがかかることで、さらに症状が悪化するという悪循環に陥りがち。症状は長期にわたることが多いため、早めの対策が必要です。

 中医学において過敏性腸症候群は、「肝」と「脾」と呼ばれる臓器の不調が原因と考えます。肝は自律神経をつかさどる臓器で、緊張、不安、ストレスがかかると真っ先にその影響を受けてバランスを崩します。肝の働きが悪くなると、中医学で自律神経と重なるとされる「気の巡り」が悪くなり、イライラ、怒りっぽい、不眠などの症状が引き起こされます。

 中医学では「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の五臓は、互いに協力して体を機能させていると考えます。そのため、ひとつの臓器に不調が現れるとほかの臓器にも影響を及ぼします。肝の弱りによる影響を最も受けやすいのは、脾。飲食物の消化・吸収をつかさどる臓器です。過敏性腸症候群は、肝の不調が脾のこれらの機能を抑圧しているために起こるのです。

 この場合、脾の働きを整えるだけではなく、根本の問題となる肝をケアする食養生が重要になってきます。症状を改善するには、まず肝の働きをスムーズにする食材を取り入れましょう。

 おすすめは三つ葉。肝の働きをサポートして、滞った気の巡りを改善してリラックスさせてくれます。ストレスによる不眠、肩こり、喉のつかえにも良く、胃もたれや食欲不振にも役立ちます。

 春はとくに肝のバランスを崩しやすい季節ですから、積極的に取り入れることをおすすめします。汁ものや、丼ものに薬味として使うだけではなく、サラダにしたり、さっとゆでておひたしにすると、たっぷりいただくことができます。

 さらに、脾の働きを高める食材も併せて取り入れるとよいでしょう。おすすめはイモ類で、ジャガイモ、ナガイモ、サトイモなどは弱った脾を力づけて、腸の働きを整える作用があります。

 三つ葉の過敏性腸症候群改善効果を高めるには、同様の働きがあるセロリ、春菊、青じそなどの香り野菜、かんきつ類なども組み合わせるとよいでしょう。

■三つ葉高齢薬膳レシピ

香るポテトサラダ

 肝の働きをサポートして気の巡りをよくする三つ葉、セロリと、脾を強めるジャガイモを組み合わせたサラダ。市販のポテトサラダを使って手軽に作れます。三つ葉で香りよく、セロリの食感がアクセントになったちょっと「大人」のポテトサラダです。

【材料】2人分
●ポテトサラダ(市販) 250g
●三つ葉  1/2わ
●セロリ  5㎝
●A(レモン汁、しょうゆ=少々)
●クコの実 適量

【作り方】
 ボウルにポテトサラダ、ザク切りにした三つ葉、みじん切りにしたセロリ、Aを加えて混ぜ合わせる。器に盛り、クコの実を散らす。

(池田陽子/薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト)