【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

 3月下旬ごろから、原料に紅麹を使ったサプリメントが原因として疑われている健康被害について多く報道されています。

 自身の健康のために摂取しているサプリメントで起きた事例で、中には死亡に至ったケースもあることから、世間の注目もとても大きくなっています。もしかしたら、この記事を読んでいる方の中にも、そのサプリメントを飲んでいた方がいらっしゃるかもしれません。

 以前「健康食品」を取り上げた際にもお話ししましたが、厚生労働省のホームページには、「いわゆる『健康食品(=サプリメント)』と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指しているもの」と書かれています。つまり、サプリメントのほとんどは食品に該当します。そのため、健康食品やサプリメントのパッケージには「服用してください」ではなく「お召し上がりください」と記載されているのです。

 現時点でまだ原因は究明されていませんが、サプリメントの製造過程で青カビが混入し、そこから毒性のある成分が含まれてしまった、という説が有力なようです。原材料である紅麹そのものに問題があったわけではなく、製造過程の衛生管理に問題があったということです。これは、健康食品やサプリメントだけの問題ではなく、あらゆる食品や飲料にも起こりうることです。

 では、なぜ今回の件がこれほど注目されているかというと、やはり「自分の健康のために摂取」していたもののせいで「自分の健康が害されていた」という事実のインパクトの大きさによるのではないでしょうか。また、健康食品やサプリメントが食品に該当し、医療機関を受診しなくても手軽に購入できること、そしてそれによる無意識的な安心感を多くの方が持っていたことも背景にあると考えています。

 健康食品やサプリメントは、ある成分が強化されているものがほとんどで、区分的には食品ですが、性質的には医薬品に通じる部分もあります。これも以前お伝えしましたが、クスリの副作用とうまく付き合っていくコツ、それは「少しでも異変を感じたら、すぐに相談する」ことです。今回のような健康被害を少なくするためには、この考え方を健康食品やサプリメントにも当てはめることがとても重要です。

 もうひとつ、クスリと違って健康食品やサプリメントは自身の判断でいつでも中止して問題ありません。少しでも体調の悪化を自覚した際は、まずは健康食品やサプリメントを中止したうえで、医療機関に相談するようにしましょう。

(東敬一朗/石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師)