【ひどい腰痛も8割治る】#16

「コロナ禍前はジムやゴルフにも行っていましたし、仕事でもよく車の運転をしていたのですが、半年前あたりから右足がしびれだして、しまいに痛くて歩けなくなってしまって……。調子が悪い時は、咳をするだけで痛みが腰に走ります」

 そう言って我々のクリニックを訪ねてこられたのは57歳の男性の方でした。

 すでに20年前から腰痛の症状はあり、そのつど整形外科を受診。痛み止めを処方してもらうだけのいわゆる保存的治療のみで、痛くなるとコルセットを装着してしのいでいたということでした。

 座骨神経痛麻痺などを診るラセーグテストをすると、前屈と後屈の際に少し腰に痛みが走る様子。あおむけになって右足を上げた姿勢では、「腰にピリッとくる」との訴えでした。それらの結果から、右下肢側にラセーグ徴候ありと判断しました。

 さらに画像を見ながら精密検査をすると、椎間板変性症が認められました。4カ所の椎間板に特殊なジェルを注入するセルゲル法を実施。ただし椎間板が摩滅している箇所にはこのセルゲル法は椎間板との反応が起きにくく、効果の期待値が低いことを説明し、患者さんはその日のうちに帰宅となりました。

 その後の経過は、長年腰痛に苦しまれていたことが嘘のように短期間で回復していきました。早くも1週間目には変化が表れ、歩くときに痛んだ腰も、重く感じる程度となり、3カ月後には以前のように運動も行えるほどに回復したのです。その頃には右足のしびれはほぼ消え、腰の痛みもほぼ痛みなし。しかし、ご自身は不安らしく、時折コルセットを着けているということですので、今後は着けないようにとアドバイスしました。

 1年後となった現在では、ゴルフをした後に1度腰が重たくなったことはあったが、おおむね良い状態を保っており、日常生活には支障なく過ごせていると、うれしいお知らせをいただいています。今度ヘルニアの手術を何回もしている友人がいるので紹介したいと、声が弾んでいました。

 最後に、コルセットについての注意点をお伝えしたいと思います。今回紹介した患者さんのように、腰痛軽減のために日常的に使用している方が時々います。

 しかし、医師から特別な指示を受けていなければ、個人的な判断で使用しない方がいいでしょう。腰回りの筋力の低下を招き、血行不良などを起こし腰痛を慢性化させる恐れがあるためです。

 基本的に、就寝中の装着、長期間の利用は避ける。あくまで急性の腰痛を和らげるためだけのもので、腰痛を解決する根本的な方法ではないと理解してください。

 使用する場合も、着けっぱなしではなく、できる限り外す時間を増やす。市販のコルセットを腰痛予防で常用するのも避けた方がいいです。

(ILC国際腰痛クリニック東京・箕輪忠明院長)