「【飼育者】にひと言言わせてください」。個人で飼育ができなくなったペットの引き取りを行っている水族館による飼い主への苦言が、ネット上で話題を呼んでいます。安易な飼い主に注意喚起を行ったのは、子どもたちのために入場料を一切取らず、寄付金のみの運営で今年開園13年目を迎える京都花園教会水族館。今回、あえて厳しい言葉をつづった経緯について、館長の篠澤俊一郎さんに話を聞きました。

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昨年6月にはタバコのポイ捨て被害が原因で水槽の魚が全滅

「当館では生き物の引き取りを行っていますが、【飼育者】にひと言言わせてください。

<引き取りの決断・覚悟ができていないなら、自分で最後まで終生飼育して!>

また【飼育者の取り巻きの家族の方々】にもひと言言わせてください。

<自分は引き取らないくせにこちらに注文つけるのホントやめて!>」

 今月22日、京都花園教会水族館が行った投稿は、500件を超えるリポスト、1000件を超える“いいね”を集めるなど話題に。同館は一連の投稿で、元飼い主から飼育方法に対する要望が相次いでいることに触れ、「だったら、その為に寄付して下さい。その子の為にエサを毎月送ってきてください。飼育するのはタダじゃないんです!! 自分たちは引き取られたら、責任はもう当館だけですか?? 当館の責任ならこちらのやり方に全面的に従ってください。それができないなら、自分で最後まで終生飼育してください! 自分で信頼する人を自分で探して譲渡して下さい! 当館の引き取りは『飼育者への慈善』ではなく、『遺棄された生き物の救済事業』です」と切実な思いを訴えています。

 京都花園教会水族館は2012年、京都の日本ナザレン教団花園教会の中に開園。淡水魚を中心に、は虫類や両生類、甲殻類など190種500匹あまりを飼育・展示しており、入場料は無料で、年間200万円ほどにのぼる運営費は全て寄付によってまかなっています。昨年6月には来園者によるタバコのポイ捨てが原因で水槽の魚が全滅。一時は野外水槽を撤去するという苦渋の選択を強いられるも、クラウドファンディングにより防犯設備の整った野外水槽を設置するなど、苦難の運営を続けてきました。

 ペットの引き取りはこの10年ほどで100件以上、今年に入ってからもすでに10件ほどの相談が寄せられているといいます。今回の投稿に至った経緯について、館長の篠澤さんは「近年、自分より生き物の方が長生きしてしまうのではないかという不安から、高齢の方の引き取りが増えています。特に昨年アカミミガメが条件付き特定外来生物に指定され、野外へ放つことが厳罰になったこともあってか、カメの引き取り相談が増えています」と背景を説明します。

「高齢の方の引き取りは一筋縄ではいかない点があります。高齢者が飼育を始めた時代と今とでは、倫理観も法律的な観点でも時代が全く違う。高齢者の方にとっては、飼えなくなったら野外に放すということこそが生き物にとって一番いいという発想が根底にあるようです。なぜ、野外に出してはいけないのかという生態知識が乏しく、体験もないので、あまりピンとこられない方が多いように思います」

「ツルは千年、カメは万年」という言葉でも知られるように、寿命の長い動物として知られるカメ。ペットとして身近な種類であっても30〜40年以上生きる個体もいて、30年以上前に飼育教本には「飼えなくなったら川に捨てる」など、誤った知識が記載されているケースもあるそうです。

「一度は引き取りに同意し、当館で引き取った後、やっぱり返してほしいという身勝手な元飼い主や、自分では飼育できないけれど『ここなら命の大切さを伝えるのが使命なのだから断られないだろう』という安易な引き取り案件もあります。『ここが引き取らないなら川に捨てる!』という、こちらがノーとは言えない脅迫じみた言葉で引き取りを迫った高齢者もいました。

 当館は引き取り専門業者ではないですし、スペースにも限りにあるため、このような相談が続くと他の業務に支障が出てしまいます。またこれまで引き取ったものの、環境が合わず残念ながら死んでしまった個体もいます。安易な考えによる飼育放棄や引き取り依頼は言語道断ですが、社会的状況、自身の病気などでペットを手放さなければならないことがあるのも事実です。まずは本当に手放さなくてはならない状況なのか、飼育者ご自身、そしてご子息やご家族とも話し合ってください。飼っている生き物にとっての最善が見つかることを祈るばかりです」

 時代の変化や飼い主の高齢化など、さまざまな事情のあるペットの終生飼育。それでも生き物を迎え入れた以上、最後まで責任を持って命と向き合うことが求められています。

Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム