画像は権田修一のカードをふたりで握りしめてPK戦の行方を見守るサポーター(BAR GAJAで撮影)

 

W杯サッカーカタール2022第16日 決勝トーナメント1回戦(12月5日、アル・ジャヌーブスタジアム)

日本対クロアチア(日本時間6日午前0時キックオフ)

 

 

森保一監督の言う「野心」は、4年前、あの赤い悪魔の14秒に日本が沈んだロストフ・ナ・ドヌーのフィールド(野)で確実に増幅された。その思いを西野朗監督から渡されたバトンに込めた。

 

そして心に決めた。日本代表の裾野を広げ、多くの選手にその可能性を感じてもらい、その頂点に立つメンバーでベスト16の壁をぶち壊し、日本サッカー協会が掲げた「2050年ワールドカップで優勝」という目標に向け、ベストな状態で次の担当者に代表を引き継ぐのだと…

 

本番に向け代表26人が発表された時、いろいろな声が上がったが通算122人の中から選んだ26人は、実際、ドイツ、スペインを撃破して死のE組を首位通過した。

 

その勢いで臨んだクロアチア戦では前半、セットプレーからFW前田大然がゴールを決めて大会4戦目にして日本は初めて先制した。

 

4年間の強化期間を経てピッチに立つ選手の「野心」も本物になりつつあった。世界基準の相手と互角に渡り合う。スペイン戦、7分のアディショナルタイムで森保一監督は「ドーハの悲劇」を一瞬、心に留めたが、目の前の選手たちがボールを奪いに行くのを見て「あ、時代は変わったんだなと」、それが日本サッカーの新たな夜明けのはずだった。

 

日本中が口にするようになった「ブラボー」そして「新しい景色」が少しチラつき始めた前半を折り返すと、フリーにした相手のアーリークロスからすぐに追いつかれた。

 

マークが甘くなるその課題を、おそらく2024年から協会会長の席に座るであろう岡田武史氏は懸念し紙面でも指摘していた。森保ジャパンの最大の長所が「神は細部に宿る」をコツコツと積み上げてきたことだと言い続けてきた日本代表”ご意見番”の不安は、不幸にも的中したことになる。

 

「追いつかれないこと」がベスト8への必要十分条件。

 

細部に宿るその神は「野心」があふれ返る、ドーハ近郊のアル・ジャヌーブスタジアムのピッチで選手たちの心にそうささやき続けていたのではないか?

 

延長でも決着がつかず、前回大会ファイナリストとの勝負はとうとうPK戦にもつれ込んだ。

 

また日本中が両手を合わせてピッチの選手たちに念を送ったが、やはり細部に宿る神の教えに背いたばっかりに、自らキッカーを名乗り出た10番、南野拓実は完璧に止められて、二番手三苫薫の一撃も相手時GKの右手で弾かれた。

 

 

敗者となった瞬間、南野拓実は膝を突いて崩れ落ち、前田大然も涙に暮れた。森保一監督はひとり、ひとりに声をかけ、肩を叩いて回った。

 

吉田麻也らとベルギー戦悪夢のエンディングをあの日迎えた酒井宏樹は号泣していた歩み寄ってきた森保一監督が抱きしめる様子も中継で紹介された。

 

指揮官はマイクの前でもその職責を最後まで全うしたようだ。

 

−ベスト8へまさにあと一歩でした

 

そうですねぇ、あのー、まずは選手たちは、ほんとによく頑張ってくれたと思いますし、選手スタッフほんとに頑張ってくれました。我々をこの素晴らしい舞台につなげてくれた選手たち、そしてサッカーファミリー、国民のみなさんに感謝したいと思います。

 

そしてベスト16の壁は今回も乗り越えられなかった、破れなかったですけど、選手たちは新時代を見せてくれたと思います。えー、これから先、日本のサッカーが…、最高の景色を願い続ければ必ずこの壁は乗り越えられるということを強く思います。

 

そのためにも、この素晴らしい選手たちを国民のみなさんがまた後押しして下さって、日本一丸となって世界に挑めれば必ずこの壁は乗り越えられると思います。これまでの応援、みなさん本当にありがとうございました。これからも一緒に戦ってください。そして後押ししてください。よろしくお願いいたします。

 

−期待はますます大きくなると思います。これからに向けてお願いします。

 

選手たちは世界と戦うのを同じ目線で考えられます。日本サッカーの未来、新時代を見せてくれたと思います。ベスト16ということではなかったですけど、新し景色はドイツに勝ち、スペインに勝ち、ワールドカップのチャンピオンに勝てたということ、そこを自信に持って、さらに追いつきではなくて追い越せを考えていけば必ず未来は変わると思います。応援よろしくお願いします。

 

……

 

午前3時前、日本中に散らばる無数の応援スポットや手元のスマホ、パソコンでも森保一監督のインタビューが流された。広島市西区横川町の「BAR GAJA」もそう。森保一監督とマツダサッカー部で一緒にプレーしたオーナーの利重忍さんは、インタビューが終わるとメディアの取材にこう答えた。

 

「やれることは全部やって、どの選手ももうへとへとになりながら戦った結果がこれなのでしょうがないですね。PK戦になったらもうじゃんけんに近いところもありますから。ただ、やっぱり悔しいですね、負けると…」

 

そして「ただ世界と戦えるってことは証明できましたんで、楽しませてもらったよ、おつかれさん、それだけです」と、道は違っても日本サッカーを愛し、戦いのフィールドに立ち続ける仲間を気遣った。

 

ドーハの悲劇に“上書き”するためのポイチの挑戦はこれで終わりを迎えたが、JR横川駅からも近いこの店でまた昔の仲間に囲まれるであろう森保一監督は、また早い時期にリスタートする。代表監督続投か?自らをさらに高めるための海外での監督挑戦か?あるいは協会会長交代に伴う2年契約+海外の2本立てか?いずれの道を歩むにせよ“広島育ち”のその「野心」に終わりはないのである。(ひろスポ!W杯取材班&平岡誠治・田辺一球)

W杯カタール大会取材協力:たきのぼり不動産(広島市中区八丁堀12-15)
記事取材協力 BAR GAJA 電話082−291−4752