画像はBリーグチャンピオンシップ、セミファイナルGAME3、敵地のダイヤモンドドルフィンズアリーナで孤軍奮闘する合間に厳しい表情を見せるドウェイン・エバンス

 

広島vs琉球…

 

戦後の日本が復興する過程において、特別な意味を有してきたふたつの地域のBリーグクラブが、2024年5月25日からJR新横浜駅からも近い横浜アリーナで年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS、2戦先勝方式)に臨む。

 

バスケは1891年(明治24年)にアメリカ・マサチューセッツ州の「国際YMCAトレーニングスクール」の博士、ジェームズ・ネイスミス氏が考案した。アメリカと日本、広島、沖縄…

 

広島は2013年10月、広島ドラゴンフライズが設立されるまで、バスケ熱の高くない地域だった。1994年の広島アジア大会に向け活動した広島銀行の女子バスケ、ブルーフレイムズも長くは続かなかった。

 

アメリカとの特別な関係が続く沖縄ではbjリーグ(当時、Bリーグの前身)参戦のための琉球ゴールデンキングスが2007年に誕生した。沖縄初のプロスポーツクラブ。人気は上々、だが最初かた強かった訳ではないし、経営も厳しかった。

 

2015年5月、朝山正悟が“広島移住”してきた。広島ドラゴンフライズはNBL(当時、Bリーグの前身)2季目で優勝を目指していた。だが、この時、朝山正悟が今回の広島−琉球決戦のキーマンになるとは、誰が予想しただろう?しかも彼の地元である横浜で…


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(2015年6月25日掲載)
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2022−23シーズン、B1西地区初の年間王者になった琉球ゴールデンキングスに広島ドラゴンフライズが挑む。だから広島勢はみんな「失うものは何もない」と言っている。

 

すでに引退セレモニーを終えた朝山正悟にとっては逆に多くのモノを積み重ね、最後のピースをはめるためのラスト2ないし3試合。敵地・名古屋で名古屋ダイヤモンドドルフィンズを3戦目で振り切った際にも、みんな「朝山さんのために次も!」とその団結力はいっそう高まった。

 

だが、初めてBリーグ4強まで勝ち残った広島ドラゴンフライズはもしかしたら名古屋より先には進めなかったかもしれない。実際、カイル・ミリングヘッドコーチも「CSの舞台に立てるとは思ってなかったし、ファイナルは夢のような話、それが現実になった」とGAME3後の会見ではマジ顔だった。

 

なぜ勝てたか?総合力とディフェンスからの展開で2023−24シーズンを駆け抜けてきた広島ドラゴンフライズだったが、当然ながら“個の力”で勝ち切るゲームも多々存在する。名古屋でのGAME3はまさにそうだった。

 

ドウェイン・エバンスはアメリカ出身、イタリア、ドイツなどで腕を磨き、2020年8月、琉球ゴールデンキングスと契約して、Bリーグに活躍の場を求めた。そして2022年6月、「広島のディフェンス・組織的なオフェンスにマッチする選手」(岡崎修司GM)として彼も広島に“移住”してきたのである。

 

名古屋でのGAME1で得点ゼロだったドウェイン・エバンスは右足の痛みをこらえてGAME2では25得点、鬼気迫る表情で駆け回ったが及ばなかった。もうひとり、コンスタントな数字でチームを引っ張るニック・メイヨもGAME1は8得点、GAME2は7得点。GAME3ではスターターからは外された。

 

ますます厳しい状況となる中、GAME3も前半38ー35接戦。第3クォーターは21−25で最終クォーター勝負…

 

ラスト10分間のドウェイン・エバンスは、ボールを持つとゆらゆらと揺れながら相手ゴールに何度も向かって行った。ただし、まったく焦る気配なし。だから名古屋ダイヤモンドドルフィンズのディフェンスはどう動けばいいか、常に受け身に回ることになった。

 

完全にドウェイン・エバンスがコート上を支配する時間が多くなり、気が付けば点差が開いていた。チーム最多28得点、8リバウンド、5アシストで卓越したゲームコントロール力を発揮したドウェイン・エバンスは結果的には自ら古巣との決勝の舞台に上り詰めた。その後の会見でのドウェイン・エバンスはやたら汗が出て「自分は集中してプレーしただけ」と多くを語る元気も、もう残っていなかった。

 

広島だけはなく、県外でも広島ドラゴンフライズのファイナル進出は話題となり、クラブとしての“みんなに知ってもらう”という目的は達成しつつある。セミファイナル前に船生誠也が言った「とんでもない景色がそこに待っている」が現実となった。

 

あとは広島ドラゴンフライズらしい戦いを貫き、当然、ドウェイン・エバンスや山崎稜、中村拓人らが執拗なマークに合う中でも粘り強くすべてを出し切るだけ。

 

広島ドラゴンフライズの司令塔、寺嶋良は術後間もないため、横浜アリーナには来ないという。だから、ベンチ入りする面々がBの頂きを目指す理由はたくさんある。広島ブースターのため、折り鶴などで平和な世界の実現を目指す広島のために…

 

沖縄の心を背負って連覇を目指す琉球ゴールデンキングスは強い。B1年間王者は1クラブのみ。新たな歴史を積み重ねる国内バスケの頂上蹴戦で、どんなドラマが待っているだろうか?(ひろスポ!広島スポーツ100年取材班&田辺一球)

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