俳優の妻夫木聡(43)が、映画「宝島」(来年公開、大友啓史監督)で主演を務めることが21日、分かった。沖縄を題材とした出演作は2006年、女優・長澤まさみ(36)とのダブル主演映画「涙そうそう」以来18年ぶり。自身初の日米共同製作映画の参加となる。

 19年の第160回直木賞に選ばれた真藤順丈氏による同名小説が原作。第2次世界大戦後、米国統治下にあった沖縄の約20年を舞台にしている。妻夫木は、米軍基地から奪った物資を闇市で売る「戦果アギヤー」と呼ばれる実在した窃盗団の一員で、後に警官になる主人公を演じる。ヒロイン役は女優・広瀬すず(25)が務める。

 19年10月ごろから脚本が執筆され、20年には撮影開始する予定もコロナ禍で延期。今年2月にクランクインにこぎ着け、現在も撮影中だ。日米の政治関係を描くことから、ハリウッドに拠点を置く「LUKA Productions International」も参加し、日米共同製作作品となった。

 満を持しての作品に妻夫木は「コロナで延期もあり、途中もう無理かもしれないと思う時もありましたが、まさに主人公たちと同じように一縷(いちる)の望みにしがみついて、監督、スタッフ、キャストと共にようやくここまで来ました。幸福感を毎日かみ締めております」。18年ぶりの沖縄を舞台にした作品ということもあり「運命を感じています」と感慨深げだ。

 原作は、沖縄の基地移転問題で名護市辺野古沿岸部の埋め立てが注目される中での直木賞受賞で話題となった。妻夫木は「みんなの言葉にならない声を芝居に変えて伝えていくことが、この作品に導かれた僕の使命だと思っています。人の心を突き動かすことは容易ではありませんが、今を生きる私たちがどうあるべきか、どう生きていくのか、一緒に考えていきたい」とコメントした。

 広瀬は「クランクインの前に監督が『この作品では太陽でいてほしい』と仰ってくださったのがストレートに自分に届き、ヤマコはみんなの希望になっていいんだと、全力で演じたいと思いました」と明かした。

大友監督は映像化熱望

 〇…大友監督はNHKに在籍中、沖縄を舞台とした連続テレビ小説「ちゅらさん」(01年)の制作に参加していた。監督自ら「原作を初めて読んだ時に浴びた熱量の渦、その火照りがいまだ冷めずにいる」と映像化を熱望。6月まで撮影は行われるが「蛮勇にも近いこの冒険に集まってくれた俳優・スタッフたちと力を合わせ、多くの人に希望と勇気を感じていただけるような作品を粘り強く作りあげたい」と意気込んだ。

 ◆宝島 審査委員から満場一致で直木賞に選出された小説で、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞も受賞。「戦果アギヤー」の英雄・オンちゃん(永山瑛太)が、嘉手納基地襲撃に失敗し行方不明に。残されたグスク(妻夫木)、オンちゃんの弟・レイ(窪田正孝)、ヤマコ(広瀬)の3人は、それぞれの道を歩みつつ、失踪の謎を追う。