風光明媚(めいび)な青森・浅虫温泉にある蛍火(けいか)醸造は昨年6月にオープンした。代表の丸山桂多さんは、県内の花火会社・丸山銃砲火薬店の3代目。コロナ禍で花火大会がほとんどなくなったこともあり、以前から興味のあったクラフトビール作りに乗り出した。現在は花火との“二刀流”で多忙な毎日を送っている。店名と同じ「蛍火」以外の定番である「残光」「千輪」の2つは、ともに花火用語から命名された。

 醸造長の後藤清治さんは丸山さんに誘われ、全く知らなかったビールの道へ。「新しいことに興味があったのでイチから勉強しました」と、静岡県の醸造所で研修を行うなど試行錯誤を続けながら開業を迎えた。「クラフトビールは敷居が高いイメージがあるのですが、気軽に飲んでいただければ」と、飲みやすい味を追求している。

 かつて青森銀行の支店だった建物をリノベーションしたオシャレな店内はカウンター8席のほか、奥には金庫だった場所を改造した4人用の個室もある。近くの旅館「辰巳館」のラウンジにもサーバーが置いてあり、観光客が多い場所だけに「旅館のチェックイン前や風呂上がりに一杯、というような使い方をしてもらえればありがたいですね」という。土日は正午から営業しており、青森では少ない昼飲みが楽しめる。

 この日は「Folk Remedy」と「千輪」をいただいた。「Folk」はしっかりしたコクと苦みが特徴で、ゆっくり味わいたくなる。「千輪」は爽やかでフルーティーなのどごしが素晴らしかった。「とがったビールは作っていません。初めて飲んだ方にも優しい味を」という言葉通りの一杯だ。ビール、温泉、絶景の夕日が待つ街は、何度でも訪れたくなる魅力にあふれている。

(岩崎 敦)

 ◆蛍火醸造 住所は青森市大字浅虫蛍谷64―15。青い森鉄道・浅虫温泉駅から徒歩3分。営業時間は平日午後2時〜9時、土曜正午〜午後9時、日曜正午〜午後8時(月曜定休)。公式サイトからオンラインショップでも購入可能。仙台市などでも飲める店が増えているという。