◆大相撲 ▽九州場所9日目(20日・福岡国際センター)
北海道・岩内町出身で返り入幕の西前頭14枚目・一山本が、自己最速となる9日目での勝ち越しを決め、単独首位の座を堅持した。優勝2度の実力者で同12枚目の玉鷲を一気に突き出した。1914年の両国以来、109年ぶりとなる十両、幕内の連続優勝、そして1991年春場所の横綱・北勝海(現・八角理事長)以来となる“道産子力士V”を目指して突っ走る。1差の2敗で大関・霧島、関脇・琴ノ若、平幕の熱海富士と美ノ海の4人が追う。
一山本の勢いが止まらない。立ち合いから玉鷲を両手で突くと、一気に前へ。相手に何もさせず、2秒2で突き出した。過去3戦全敗と相性は悪かったが気にせず攻めきり「思い切り当たって手を伸ばそうと思っていた。いい感じの緊張感で相撲を取れている」と大粒の汗を拭った。
1敗で単独トップを守り、幕内勝ち越し1号になった。先場所は十両を制し、幕内の今場所でこのまま“2場所連続優勝”となれば、1914年の両国以来109年ぶりの快挙となる。初賜杯については「意識しないのは無理だけど…、目の前の相撲を取る」と無我夢中。北海道出身力士の優勝なら1991年春場所の横綱・北勝海以来だ。大鵬、北の湖、千代の富士ら大横綱を輩出した相撲王国復権を担う。
中大出身で北海道・福島町役場に勤めていたが、角界での夢が諦めきれずに脱サラして23歳で入門。10月1日に30歳になったこともあり、「社会人時代にはこの年齢までまわしをつけているとは思わなかった。1場所でも多く相撲を取りたい」と笑顔は忘れず。それも追いかけた夢の証しだ。
八角理事長は「すばらしい。押し相撲が乗っていくと簡単にいい相撲が取れる。今場所は勢いに乗っている感じがする。楽しみ」と道産子の後輩に期待を込めた。それでも一山本は「(目標を勝ち越しから)切り替えて2桁勝利」と控えめ。名古屋場所では七夕の短冊を白星にちなみ「八山本」と目標に書いた。漢数字で表現するのが恒例で、「十四山本」まで星を伸ばせるか。一年納めの九州でV争いをリードする。(山田 豊)
◆1914年の出来事 日本ではシーメンス事件で第1次山本権兵衛内閣が総辞職し、第2次大隈重信内閣が発足した。海外ではオーストリアでセルビア人に同国皇太子夫妻が殺害される「サラエボ事件」が発生。これをきっかけに第1次世界大戦が勃発した。スポーツでも米大リーグのベーブ・ルースがRソックスと契約し、デビューした。