バレーボール男子日本代表のアウトサイドヒッター・高橋藍(らん、22)が、イタリア1部セリエAのモンツァからVリーグ王者・サントリーに入団することが20日、決まった。同日にクラブが発表し、7月に契約を結ぶ。藍はイタリアで3季プレーし、4月にはリーグ・プレーオフ準優勝に貢献。今夏のパリ五輪後、日本の2024―25年シーズンは、10月から新たに国内最高峰のSVリーグが開幕することになっており、新エースは同じくサントリーに在籍する兄・塁(24)とともに日本バレー界を盛り上げていく。28日に入団会見をする予定。

 海外で名実ともに力をつけた新エースが、日本のバレー界に熱を吹き込む。藍が24―25年シーズンに大阪を拠点とするサントリーでプレーすることになった。関係者によると、国内外のクラブからオファーがあった中での決断だったという。将来的なプロ化を目指し、パリ五輪後の10月から日本で新たにSVリーグが開幕する。大きな転換点ともいえる中での電撃入団。この日、加入を発表したクラブも公式SNSで「ようこそ」と歓迎した。

 日体大在学中の21年、世界最高峰リーグと呼ばれるイタリア・セリエAに移り、3季プレー。高さのあるブロックへの対応など精神、技術面すべてで成長した。モンツァでプレーした23―24年季は日本人では19季ぶりのプレーオフ準優勝の原動力になり、自身への評価を高めた。日本代表としても昨秋のパリ五輪予選で16年ぶりに自力で切符を獲得。藍にとって初の国内リーグ参戦となる。

 その胸中には競技発展への思いがある。「バレーボールを夢のあるスポーツにしたい」と常々、語っていた。国内では野球やサッカーの人気を感じている中、「バレーも面白さでは負けていない。子供たちにも伝えたい」。昨年のネーションズリーグ(NL)名古屋大会では、日本のファンの前で戦い、熱気を肌で感じた。さらに、サントリーにはアタッカーで2歳上の兄・塁が在籍。京都・東山高で藍が1年、塁が3年時以来のチームメートになる。兄弟は以前から日本のバレー界を盛り上げたいという共通の思いを強く持ってきた。

 22日にはパリ五輪を見据えた日本代表が、NLブラジル大会初戦のアルゼンチン戦を迎える。31日に代表合流予定の藍は当面、石川祐希(28)と国内で別調整を続ける。22歳は「成長」の思いを胸に、プレーで魅力を伝え続ける。(宮下 京香)

 ◆高橋 藍(たかはし・らん)2001年9月2日、京都市生まれ。22歳。小学2年でバレーを始め、東山高3年時の19年度に全日本高校選手権で優勝。日本代表初選出は20年2月。同4月に日体大に進み、2年時に初出場した21年東京五輪で8強。同年11月にセリエAのパドバ入り。23―24年季はモンツァでプレーし、プレーオフ準優勝。今春に日体大を卒業。最高到達点は343センチ。188センチ、83キロ。家族は両親と兄・塁、妹。

 チーム名に地域名称 大同生命SVリーグは、昨季V1リーグのチームを中心に、男子がサントリーなど10チーム、女子はNECなど14チームで編成し、10月に開幕。「S」にはStrong(強く)などの意味が込められ、27年までのプロ化を目指す。前身のVリーグから規定を変更。コート上の外国籍選手枠がアジア枠を含めて2→3に増枠。チーム名にはサントリーサンバーズ大阪というように地域名称が入る。

 30年までに世界最高峰リーグになるとも掲げる。Vリーグの大河正明副会長(65)は国内競技で先を走るサッカー・Jリーグ常務理事やバスケットボール・Bリーグのチェアマンを歴任。「夢があるよう、1億円プレーヤーを出したい。トップ選手が世界から集まってくるようなリーグにしたい」と明かしていた。

 ◆サントリーサンバーズ 1973年4月に設立し、本拠地は大阪・箕面市。サンバーズは「燦然(さんぜん)と輝く太陽に向かって羽ばたく、不死鳥のように」の意味。Vリーグでは04年に5連覇、23―24年シーズン制覇など10度の優勝。昨年12月の世界クラブ選手権で日本勢初の銅。SVリーグにはサントリーサンバーズ大阪として参戦する。