◆パ・リーグ 日本ハム5―4オリックス(21日・エスコンフィールド)

 日本ハム・水谷瞬外野手(23)が1軍に昇格し、20日に新庄監督からSNSで予告されていたとおり「5番・左翼」で即先発出場。同点適時打を含む2安打1打点といきなり結果を残した。

 期待に応える準備はできていた。1点を追う3回2死一、二塁。水谷は粘ってからの7球目、エスピノーザの投じた外角スライダーをバットに乗せて左前に運んだ。試合を振り出しに戻す同点タイムリー。ベンチで大喜びするボスの姿を見つめながら「最初から中軸で使っていただいたので期待に応えたいという気持ちで打席に入りました」と笑顔で胸を張った。

 試合前夜、インスタグラムで指揮官から「5番・左翼」での先発出場を予告された。プロ6年目で初昇格を果たした1か月前は、緊張と重圧から「地に足がつかなかった」。結果欲しさに冷静さを失い、出場4試合で打率1割5分4厘。本来の力を発揮できないまま、2軍降格を告げられた。

 「チャンスをいただいた中で打てなかった。チームに迷惑をかけて、お客さんからもため息、ガッカリさせてしまっているなって。でも自分は失うものは何もない。ダメだったらまた出直すだけ。思い切ってやるだけやと。今日は『やったろう』って気持ちだけだった」

 迷いの消えたフルスイングで、2回の第1打席から左翼線にプロ初長打となる二塁打をマーク。あの時の悔しさを晴らすように自身初のマルチ安打へとつなげてみせた。試合中、祈るように両手を握って打席を見ていた指揮官は「同点打(を出してくれ)というより、水谷くん本人の活躍を祈っていた。『上がってきて、すぐ活躍してくれ!』って。よく(バットに)乗せてくれた。(2軍)鎌ケ谷での打席と変わりなく、水谷くんらしい見逃し方、バットの出方をしていましたね」と確かな成長に目を細めた。

 試合後は初めてヒーローインタビューに呼ばれ「テレビでいつも見ていた景色なので『コレがお立ち台か』って。きょうの朝、お母さんからLINEで『ご飯食べて、リラックスして、緊張せずに行ってこい』と。本当にやるだけだという気持ちで、お母さんのために打ちました」と語った23歳。最愛の母へのメッセージを問われると「これからもっといい景色を見せてあげたい。そう思っているので、ここでは言わないでおきます」と思いを込めた。

 チームはエスコンフィールドで7連勝を飾り、前カードからの連敗をストップ。鮮やかに再スタートを切った水谷も「1軍でプレーさせていただくのは今年が初めて。ルーキーのような気持ちでフレッシュにやっていきます」とアピール継続を誓った。帰り際、目の前を通った監督からは「ありがとう。明日も行くよ」。193センチ、99キロのロマン砲は「頑張ります」と、うれしそうにアンサーした。