◆日本生命セ・パ交流戦 ソフトバンク1―4阪神(16日・みずほペイペイ)

 孝行息子のグランドスラムに前川の父・栄二さんは声を弾ませた。「右京らしい一発で良かった。最高ですね。そんな父の日(になる)とは思っていなかったもんで」。実家近くの白塚海浜公園グラウンドでロングティーをこなした毎日が、前川家の原点だ。

 津田学園で甲子園にも出場した2学年上の兄・夏輝さん(22)が約80メートル先の高さ約4メートルのネットを越える姿を見て、負けず嫌いの虫がうずいた。「(兄に)野球だけは絶対に負けんからな」。日が暮れても「もう一回、もう一回」と練習をやめない。中学2年時に兄より1年早く推定100メートルの場外弾を放ち、周囲を驚かせた。

 いつも近くで支えてきた栄二さんは9日の西武戦(甲子園)を現地で観戦。前川の3安打に酔いしれたが、8回2死満塁でフェンス際の大飛球を好捕されたことが心残りだった。「最後、ライトに捕られて、ヒーローインタビューがなかったみたいで。今度はお立ち台に上がる姿を見てみたいです」。1週間後に満塁で見せたフルスイングはまさに親子の結晶。テレビの画面越しから、きっちりとプレゼントを受け取った。(阪神担当・直川 響)