16日に幕を閉じた第73回全日本大学野球選手権。2015年以来、9年ぶりの日本一を狙った早大は、決勝で青学大に1ー2と惜敗し、あと一歩届かなかった。

 早大の主砲・吉納翼右翼手(4年=東邦)は、敢闘賞に選ばれた。準決勝の東日本国際大戦で一時逆転の3ランを含む4打点を挙げるなど、勝負強さは大舞台でも光った。ただ、複雑な思いもあった。「賞をいただけたのは本当にうれしいですけど、これが秋には最優秀選手に替わるように」と準優勝の悔しさをにじませた。

 高校2年時、センバツで優勝して以来の全国の舞台だった。高校3年時はコロナ禍で全国大会が懸かった試合も甲子園もなく、不完全燃焼で終わっていた。大学入学後3年間、リーグ優勝にも手が届かなかった。頂点へ懸ける執念は、試合中にも表れていた。

 無死一塁で回ってきた9回の最後の打席ではバスターで二飛に倒れた。その打席には、別の選手が立っていた可能性があった。3回に右足のスパイクの部分に死球を受け、悶絶した。「痛みが走っていた」。一旦ベンチに下がったが、交代するわけにはいかなかった。「最後の打席のような場面で回ってくるのは想定していた。もし自分がけがして降りていたらと思うとそれが一番後悔する」と出場を継続。「自分で打って(日本一を)獲りたいという気持ちがとにかく強かった。痛かったのは痛かったけど、踏ん張ってやりました」。最後まで戦ったことに後悔はない。

 ラストシーズンの秋に向け「個人としてもっと文句なしの打撃と、チームとして最強軍団を目指してやっていけたら」と強い決意を見せた。一回りも二回りもレベルアップした吉納が今度はMVPになり、チームを日本一に押し上げる。(臼井 恭香)